私を、甘えさせてください
相澤さんは、私たちがそういう関係で、一緒に暮らしていることを知らない。


「相澤さん、その書類もらっていくよ。今日中に先方に届くようにしたいから」

「はい、よろしくお願いします」

「ところで・・相澤さん、さっき狙ったら必ず落とすとか言ってなかった?」

「それは・・その・・」


口ごもる相澤さんに、彼が言った。


「まぁ、兄貴が永田課長を・・ってことだよね?」

「本部長、気づいてたんですか・・」

「で、永田課長は行くの?」


急に答えを振られて戸惑う。
まだ、どうするか決め切れていないし、相澤さんの前で答えるなんて・・。


「行くの・・って、そんな・・」

「せっかくだから行ったら?」

「ええっ、ダメですよ本部長!」

「ん、ダメか?」

「ダメです。絶対にダメッ!」

「どうして?」


猛烈に反対する相澤さんに、彼が理由を尋ねる。

ちらっと私の方を見た相澤さんが、申し訳なさそうに小さな声で答えた。


「どうして・・って、本部長が一番分かってますよね? 私、知ってるんです。本部長を陥れるような人に・・」

「相澤さん、そこまでだ!」


厳しい口調で彼が遮る。

普段は全く見せない言動に、相澤さんも私も言葉を失った。

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