私を、甘えさせてください
相澤さんが言うには、
拓真を良く思っていなかった直属の新しいシニアパートナーが、理由をこじ付けて拓真をクビにしたということ。

元はといえば拓真が原因なのではなく、空川 和真がやってきたことを、拓真がやったことに仕立て上げたというのだ。

強引なヘッドハンティングや、優さんとの不倫・・。


ところが、その後、空川 和真は拓真をクビにした直属のシニアパートナーのやり口を暴いて解任させ、自分が空席になったシニアパートナーに収まったというのだ。

つまり、目障りなふたりを上手いこと片付けて、その地位を手にした・・。


解任したシニアパートナーが拓真をクビにしたのも、実は裏で空川 和真がそうさせつつ、さらに解任劇でシニアパートナーを追い落としたと言われている。


だから相澤さんは、『陥れる』と言ったのか。


「そんなやり方で地位を手にするような人が課長となんて・・私は嫌です」

「相澤さん・・私を心配してくれてたんだね」

「さて・・どうするかな。相澤さんが今言ったことは、表向きは全て事実だ。表向きは・・ね」

「どういうこと?」

「美月、やっぱり兄貴と食事に行ってくれるか?」

「いいけど、何か考えがあるんでしょう? それを聞かせて」


彼と私のやり取りを聞いていた相澤さんが、不思議そうな顔で私たちを見ていた。


「あ、あの、おふたりは・・もしかして・・」


「ああ、お互いに特別な存在・・だよな?」


そう言って私を見た彼に、私もうなずく。

相澤さんの悲鳴にも似た驚きの声が会議室に響いて、なんだか恥ずかしくなった。

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