私を、甘えさせてください
「良かったら、乗っていきませんか? 今なら・・そうだな、30分もあれば着くと思う」

「はい・・よろしくお願いします」

「永田さんが答えを渋ったおかげで、お互い結婚してないことがバレちゃったな」

「・・・・すみません」

「いや、全然。聞く手間も話す手間も省けたから」


どうぞ、と空川さんは助手席のドアを開けてくれたけれど。

RV車で少し車高が高く、細身のタイトスカートにハイヒールだった私は、どう乗り込めばいいか躊躇した。


「あ、そうか。支えるから、腕につかまって。それとも、抱き上げる?」

「・・・・腕、お借りします」


『抱き上げる』に反応して、顔が真っ赤になっているのが鏡を見なくても分かった。


助手席のドアを閉め、運転席に乗り込んだ空川さんは、ジャケットを脱いで後部座席に放りエンジンをかけた。


「じゃあ、行こうか」


地下駐車場を出て、空川さんと私は横浜オフィスへ向かった。

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