私を、甘えさせてください
目を伏せている彼を見ていて、思った。

別れを言い出されるのは、きっと私。


心の奥に押し込めていた思いが、浮き上がってくる。

『拓真を、近いうちにJHコンサルに戻します』

それを聞いて、すぐに考えた。


彼は、好きな仕事で国内外を行き来する日々を取り戻す。

だとしたら、私の存在は彼のペースを乱すだけ・・・・。


「私、コンビニ・・行ってこよう・・かな。明日の・・朝ご飯のパンを・・買いに・・」


胸が苦しくて、声が震える。
外に出て、少し落ち着かなければ。

立ち上がってドアの方に歩き出そうとした私を、彼が後ろから抱きすくめる。


「泣いてる・・のか? 俺が『心の中では別れようと思ってるんじゃないか』って言ったから?」


私は首を横に振った。

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