一面の落とし穴

夢と現実の混在②

僕は仕事を始めてしばらくすると何かが僕の頭を外から中、中からまた外へともの凄い速さで通過して行った。

目にも止まらぬ速さだった。

今までに感じたことのない感覚だった。

気を取り戻すために会社のベランダに出て煙草を吸った。

一体今のは何だったんだろう。

デスクに戻り仕事を続けた。

営業先へ向かおうと立ち上がった瞬間、黒い影のような物体が僕を囲み一斉に銃を乱射した。

僕の体の中でもの凄い音が鳴り続けた。

頭の先から足の先まで隈なく撃たれた。

体は穴だらけになり僕はその場で建物を壊す際に爆弾を仕掛けられた建物のように崩れ落ちた。

このような映画のラストシーンを観たことがあるような気がした。

周りの社員が僕の元へ駆け寄り声をかけたが、僕の脳は完全に機能が停止していた。

目が覚めると体中の穴はどこにもなかった。

今日は疲れているのだろう、早退した方がいいと部長が言った。

僕は何が起きたのか全く理解ができなかったが、早退させてもらうことにした。

部屋に帰り着くとシャワーを浴び冷蔵庫から缶ビールを取り出した。

一体何が起きたのだろう。


翌朝通常通りに出社したが、まもなくまた銃撃に襲われた。

何かがおかしい。

誰にも見えていないのだろうか。

今思えば見えている人には見えていたのかもしれない。

ただそれをどうやって伝えればいいのかが分からなかったのだろう。

それから時折そんな日が起きては早退をした。

日に日に体中の穴も治りが悪くなった。

仕事だけでなく日常生活にも影響を及ぼした。

職場から駅、スーパーやコンビニまであらゆるところに黒い影は出没した。

何かをしようとすると一斉に冷たい銃口が僕の体中に押しつけられる。

全く身動きもとれない。

何かを考えようとすれば無数の銃口が頭部に押しつけられる。

逃げ場がない。

動けば落とし穴に落ちるし、その場にいると地面にひび割れが起き落ちていく。
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