くたびれOL、魔王様の抱き枕を拝命いたしました!?
早目に家を出たおかげで、職場には始業時刻の30分前に着いた。
お盆休み明けだし、デスク周りの掃除でもして気合いを入れて仕事をしよなければ。
バックをロッカーへ仕舞い、理子は誰も居ない事を確認してから更衣室で制服に着替えた。
「山田さん!」
朝の掃除を終えた頃、始業時刻ギリギリに走って来た山本さんが理子の姿を見付けて手を振る。
走ってきた山本さんは汗だくで、息を切らして髪は寝癖がついている事からどうやら寝坊した様だ。
「山本さん、おはようございます。お盆休みはどうでしたか?」
額から滴る汗を拭う仕草のまま、山本さんは理子を凝視して固まる。
「山本さん?」
声をかければ、彼はびくりっと体を揺らした。
「あ……社会人フットサルの仲間とキャンプに行ったり、実家に帰ってのんびりしたかな。山田さんはどっか行ったの? 何回か連絡したんだけど、メッセージが届かなかったし電話も繋がらなかったから、どうしたのかなって心配になったんだよ」
「連絡してくれたんですか?すいません、スマフォを忘れて実家に帰っちゃって。電源は切れてました」
そうだった。山本さんからスマートフォンに着信とメッセージが着ていたんだった。
スマートフォンはアラームとカメラ機能を使いたくて異世界に持って行っていた。
電話は繋がらずメッセージがきていても分からず、所在不明だと友人や姉に心配されてしまったんだ。
汗を拭いながら理子へ近付く山本さんは、暑さからか顔を赤くしている。
すぐ側まで歩み寄った山本さんに至近距離から見下ろされて、何だか落ち着かない気持ちになった。
「あのさ、山田さん、今日の夕飯一緒に」
「山本さーん! お電話でーす」
続く台詞は、衝立の隙間から顔を出した女子社員の声に掻き消される。
「はぁ、じゃあ、続きはまた後で」
ガックリ項垂れた山本さんは、電話対応のために重たい足取りでデスクへと戻って行った。
「素晴らしい!」
ギシギシ揺れるデスクチェアにどっかり座った恰幅の良い中年男性は、理子が手渡した書類に目を通してニンマリ笑った。
「山田さんに頼むと間違いがないから、いつも助かるよ。ありがとうね」
いつもぼんやりしている50代の男性社員、佐野さんはパソコンが苦手だと毎回理子に打ち込みを依頼してくる。
仕事に追われている時は苛つくこともあるけれど、笑うと目がなくなる恵比寿顔、薄くなった頭髪に恰幅の良い体型の彼は憎めない柔和な性格で、低姿勢で頼まれると嫌とは言えないのだ。
「いえいえ」
「あ、そうだ。ちょっと待って」
そう言いながら佐野さんは、足元の荷物置き場からキャンパス地のトートバックを持ち上げて、ごそごそと何かを探し始めた。
「知り合いからもらったんだけど、こういうの食べる?」
トートバッグから出てきたのは、有名チョコレート専門店のチョコレート詰め合わせの箱。
滅多に口に出来ない高級チョコレートの詰め合わせを頂き、理子の瞳は輝いた。
「ありがとうございます!」
上手いように使われてる気がしないでもないけれど、たまに佐野さんから高級なお菓子を頂けるから頼まれるのを断れない。
「お疲れ様。いつも大変だね。これあげるよ」
「いいんですか? ありがとうございます」
擦れ違い様に、理子が両手で抱え持っていたファイルの上に男性社員が個包装のチョコレートを乗せる。
「私もあげるわ~。頑張ってね」
側にいた先輩女子社員も笑いながら、理子の持つファイルの上にイチゴミルク飴をちょこんと置く。
まるで「頑張ったご褒美」と、皆から餌付けされている気分だ。
(あれ? 何か変じゃないの?)
こんなにも自分は、職場の皆から気にされて構われていただろうか。
お盆休み明けだし、デスク周りの掃除でもして気合いを入れて仕事をしよなければ。
バックをロッカーへ仕舞い、理子は誰も居ない事を確認してから更衣室で制服に着替えた。
「山田さん!」
朝の掃除を終えた頃、始業時刻ギリギリに走って来た山本さんが理子の姿を見付けて手を振る。
走ってきた山本さんは汗だくで、息を切らして髪は寝癖がついている事からどうやら寝坊した様だ。
「山本さん、おはようございます。お盆休みはどうでしたか?」
額から滴る汗を拭う仕草のまま、山本さんは理子を凝視して固まる。
「山本さん?」
声をかければ、彼はびくりっと体を揺らした。
「あ……社会人フットサルの仲間とキャンプに行ったり、実家に帰ってのんびりしたかな。山田さんはどっか行ったの? 何回か連絡したんだけど、メッセージが届かなかったし電話も繋がらなかったから、どうしたのかなって心配になったんだよ」
「連絡してくれたんですか?すいません、スマフォを忘れて実家に帰っちゃって。電源は切れてました」
そうだった。山本さんからスマートフォンに着信とメッセージが着ていたんだった。
スマートフォンはアラームとカメラ機能を使いたくて異世界に持って行っていた。
電話は繋がらずメッセージがきていても分からず、所在不明だと友人や姉に心配されてしまったんだ。
汗を拭いながら理子へ近付く山本さんは、暑さからか顔を赤くしている。
すぐ側まで歩み寄った山本さんに至近距離から見下ろされて、何だか落ち着かない気持ちになった。
「あのさ、山田さん、今日の夕飯一緒に」
「山本さーん! お電話でーす」
続く台詞は、衝立の隙間から顔を出した女子社員の声に掻き消される。
「はぁ、じゃあ、続きはまた後で」
ガックリ項垂れた山本さんは、電話対応のために重たい足取りでデスクへと戻って行った。
「素晴らしい!」
ギシギシ揺れるデスクチェアにどっかり座った恰幅の良い中年男性は、理子が手渡した書類に目を通してニンマリ笑った。
「山田さんに頼むと間違いがないから、いつも助かるよ。ありがとうね」
いつもぼんやりしている50代の男性社員、佐野さんはパソコンが苦手だと毎回理子に打ち込みを依頼してくる。
仕事に追われている時は苛つくこともあるけれど、笑うと目がなくなる恵比寿顔、薄くなった頭髪に恰幅の良い体型の彼は憎めない柔和な性格で、低姿勢で頼まれると嫌とは言えないのだ。
「いえいえ」
「あ、そうだ。ちょっと待って」
そう言いながら佐野さんは、足元の荷物置き場からキャンパス地のトートバックを持ち上げて、ごそごそと何かを探し始めた。
「知り合いからもらったんだけど、こういうの食べる?」
トートバッグから出てきたのは、有名チョコレート専門店のチョコレート詰め合わせの箱。
滅多に口に出来ない高級チョコレートの詰め合わせを頂き、理子の瞳は輝いた。
「ありがとうございます!」
上手いように使われてる気がしないでもないけれど、たまに佐野さんから高級なお菓子を頂けるから頼まれるのを断れない。
「お疲れ様。いつも大変だね。これあげるよ」
「いいんですか? ありがとうございます」
擦れ違い様に、理子が両手で抱え持っていたファイルの上に男性社員が個包装のチョコレートを乗せる。
「私もあげるわ~。頑張ってね」
側にいた先輩女子社員も笑いながら、理子の持つファイルの上にイチゴミルク飴をちょこんと置く。
まるで「頑張ったご褒美」と、皆から餌付けされている気分だ。
(あれ? 何か変じゃないの?)
こんなにも自分は、職場の皆から気にされて構われていただろうか。