くたびれOL、魔王様の抱き枕を拝命いたしました!?
昼休憩中の社員食堂の隅で、理子は香織と共に同僚達から頂いたお菓子を広げる。
佐野さんから貰ったチョコレート専門店の詰め合わせ、男性社員から貰ったチョコレート、女性社員から貰った飴。
高級チョコレートに歓喜の声を上げた香織は、持参した紙袋から包装紙に包まれた箱を取り出した。
「はいこれ、お土産の温泉まんじゅう」
「いいなー、婚前旅行」
「いーでしょー」
お盆休みに、香織は婚約者のまーくんと有名観光地を巡ったらしい。
包装紙に有名温泉の印字がされた温泉まんじゅうを受け取り、理子は包み紙に印字されたご当地キャラの指で撫でる。
異世界滞在をしたのに、私は色々あってお土産を忘れていた。
今週末に異世界へ喚ばれたら、可愛いアイテムでもお返しに買ってこなければ。
「今回は奮発して、高級ホテルに泊まってきたの。理子はどこかに行ったの?」
香織に問われて言葉に詰まってしまった。
いくらなんでも、異世界に行ったとは彼女が酔っぱらっていても言えない。
「実家に帰って、地元の友達と買い物に出掛けたくらい?」
「例の彼とは会わなかったの?」
以前から香織にはシルヴァリスの事を相談していた。お盆休みに彼と会い、関係が進展したのを黙っている理由も無いかと少し考えてから、理子は口を開いた。
「けっ結婚を前提? で、お、お付き合いをすることになったよ。彼氏じゃなくてもう婚約者、かな」
「えー!?」
食堂で大声を出す香織に、シー! と理子は口元に人差し指を当てて落ち着くように伝えるの。
「結婚を前提って、名前も知らなかった魔王様と?」
声を抑えて問う香織に、理子はこくんと頷く。
恋人関係をすっ飛ばして婚約者と言うのは躊躇したが、シルヴァリスは理子が頷けば直ぐに妃にすると、婚姻届けを書くと言っていた。まだ待っていて欲しいと心の準備をさせて欲しいと頼み、待って貰っている。
理子は、ブラウスの上から胸元を押さえた。
今はうっすらとした桜色の胸元の印が、真紅に色付いた時、嫌だと拒んでも魔王シルヴァリスの正妃とされる。
拒否しても妃の印は赦してくれず、シルヴァリスの執着を考えると彼は強制的に正妃に据えるはず。
印が真紅に色付くのが何時になるのかは分からない。毎晩抱かれて彼の魔力を与えてられる状況では、遠い未来ではないだろう。
早いうちに、周囲や上司へ婚約者の存在を知らして、退職する準備を考えた方がいいのかも知れない。
「でも、まだ内緒にしてね」
早いうちに動かなければと言っても、まだ両親にも伝えてないのだ。婚約者が出来たこと、退職について上司と会社へ伝えるのは、今後の事をシルヴァリスと話し合った後だ。
「何でー? どしたの?」
「今日の私、朝からやたらと男の人に声をかけられる気がするの。冗談だろうけど、告白みたいな事まで言われたし。からかわれてるって分かるから、告白されても嬉しいより疲れるちゃう。婚約者が出来たって、退職するって知られたらもっと周りにからかわれるかなって思って」
以前、田島係長や後輩の高木さんからイジメを受けていた時のように、周りから妙に気を使われて気疲れする日々にまたなるのかと思うとつい溜め息を吐いてしまう。
「理子、それは冗談とか、からかいじゃないかもよ……」
ニヤニヤしていた香織の表情が、急に真面目なものへと変わる。
「急に理子が綺麗になった、色っぽくなったって言うか、近くにいると惹き付けられるって感じかな? さっき、上目遣いで見られた時は私でもドキッとしたもの。これってその彼の影響かな。何だろう、理子に見詰められると落ち着かなくなる感じがするんだよね。私ってノーマルなのに、触りたくなるの」
「はぁ?」
予想もしない事を言われて、理子はすっとんきょうな声を上げる。
暑さで頭が沸いてしまったのか。香織まで何を言い出すんだ。
お盆休み明けだし、今日はなるべく定時で仕事を終わらせて早く帰ろう、と思った。
佐野さんから貰ったチョコレート専門店の詰め合わせ、男性社員から貰ったチョコレート、女性社員から貰った飴。
高級チョコレートに歓喜の声を上げた香織は、持参した紙袋から包装紙に包まれた箱を取り出した。
「はいこれ、お土産の温泉まんじゅう」
「いいなー、婚前旅行」
「いーでしょー」
お盆休みに、香織は婚約者のまーくんと有名観光地を巡ったらしい。
包装紙に有名温泉の印字がされた温泉まんじゅうを受け取り、理子は包み紙に印字されたご当地キャラの指で撫でる。
異世界滞在をしたのに、私は色々あってお土産を忘れていた。
今週末に異世界へ喚ばれたら、可愛いアイテムでもお返しに買ってこなければ。
「今回は奮発して、高級ホテルに泊まってきたの。理子はどこかに行ったの?」
香織に問われて言葉に詰まってしまった。
いくらなんでも、異世界に行ったとは彼女が酔っぱらっていても言えない。
「実家に帰って、地元の友達と買い物に出掛けたくらい?」
「例の彼とは会わなかったの?」
以前から香織にはシルヴァリスの事を相談していた。お盆休みに彼と会い、関係が進展したのを黙っている理由も無いかと少し考えてから、理子は口を開いた。
「けっ結婚を前提? で、お、お付き合いをすることになったよ。彼氏じゃなくてもう婚約者、かな」
「えー!?」
食堂で大声を出す香織に、シー! と理子は口元に人差し指を当てて落ち着くように伝えるの。
「結婚を前提って、名前も知らなかった魔王様と?」
声を抑えて問う香織に、理子はこくんと頷く。
恋人関係をすっ飛ばして婚約者と言うのは躊躇したが、シルヴァリスは理子が頷けば直ぐに妃にすると、婚姻届けを書くと言っていた。まだ待っていて欲しいと心の準備をさせて欲しいと頼み、待って貰っている。
理子は、ブラウスの上から胸元を押さえた。
今はうっすらとした桜色の胸元の印が、真紅に色付いた時、嫌だと拒んでも魔王シルヴァリスの正妃とされる。
拒否しても妃の印は赦してくれず、シルヴァリスの執着を考えると彼は強制的に正妃に据えるはず。
印が真紅に色付くのが何時になるのかは分からない。毎晩抱かれて彼の魔力を与えてられる状況では、遠い未来ではないだろう。
早いうちに、周囲や上司へ婚約者の存在を知らして、退職する準備を考えた方がいいのかも知れない。
「でも、まだ内緒にしてね」
早いうちに動かなければと言っても、まだ両親にも伝えてないのだ。婚約者が出来たこと、退職について上司と会社へ伝えるのは、今後の事をシルヴァリスと話し合った後だ。
「何でー? どしたの?」
「今日の私、朝からやたらと男の人に声をかけられる気がするの。冗談だろうけど、告白みたいな事まで言われたし。からかわれてるって分かるから、告白されても嬉しいより疲れるちゃう。婚約者が出来たって、退職するって知られたらもっと周りにからかわれるかなって思って」
以前、田島係長や後輩の高木さんからイジメを受けていた時のように、周りから妙に気を使われて気疲れする日々にまたなるのかと思うとつい溜め息を吐いてしまう。
「理子、それは冗談とか、からかいじゃないかもよ……」
ニヤニヤしていた香織の表情が、急に真面目なものへと変わる。
「急に理子が綺麗になった、色っぽくなったって言うか、近くにいると惹き付けられるって感じかな? さっき、上目遣いで見られた時は私でもドキッとしたもの。これってその彼の影響かな。何だろう、理子に見詰められると落ち着かなくなる感じがするんだよね。私ってノーマルなのに、触りたくなるの」
「はぁ?」
予想もしない事を言われて、理子はすっとんきょうな声を上げる。
暑さで頭が沸いてしまったのか。香織まで何を言い出すんだ。
お盆休み明けだし、今日はなるべく定時で仕事を終わらせて早く帰ろう、と思った。