くたびれOL、魔王様の抱き枕を拝命いたしました!?
満員状態の電車に乗り込み、何時も通り理子は吊革に掴まってぼんやりと車窓から薄暗い外を眺めていた。
(今日の夕飯はどうしようかな、たまには作ろうかな)
簡単に作れる夕飯のメニューを考えていると、ふと、背中に貼り付くように立つ誰かの気配を感じた。
相手の体が当たるのが気になり、隙間を空けようと少し前へ体を動かすが、背後の人物も同じように前へと動く。
離れたいのに密着してくる背後の人物に、理子は身を固くする。
耳に届く息遣いと、後ろで一纏めにしていた髪を弄られる感触がして、理子の背中が泡立った。
「髪、綺麗ですね」
耳元で囁かれたのは、まだ若い男性の声。
「え、あの?」
(痴漢!?)
戸惑いと恐怖の感情が、じわりじわりと沸き上がってくる。
「これだけの魔力を受け入れても、歪まないとは」
男性が感嘆と恍惚が入り混じった声と、ねちゃりっぴちゃりっという水っぽい音が理子の耳に届いて、生理的な気持ち悪さに吊革を持つ手が震えた。
(髪を舐められている!?)
嫌悪感と恐怖から上げそうにある悲鳴を、何とか抑え込む。
「さすが、魔王様の選んだお妃様だ」
ザワリッ!
腰を撫でるように触れられて、嫌悪感と恐怖が限界を越えた。
身体中の毛穴が総毛立つ感覚が理子を襲う。
バチバチバチ!
青白い光と共に、強烈な静電気が弾ける音が電車内に響き、理子の後ろに立っていた男性の体が傾いでいく。
ドサリッ
「キャー!?」
「うわっ何だ!?」
「人が倒れたぞー」
急に倒れたように見えた男性に、何事かと騒ぐ乗客達の間をすり抜けて理子はドアの前へと立った。
電車がホームに滑り込み、開閉音楽と共にドアが開く。
迷わず理子は騒ぐ周りの人を押し退けて、電車のドアからホームへ飛び降りた。
「今のは……何?」
見知らぬ男性に痴漢され、髪を触れられて舐められた。
後ろで一纏めにしていた髪の毛の先が濡れているし、さっきのは気のせいじゃない。
ふらつく足取りでホーム中央のベンチへ座る。
ねっとりと絡み付く嫌な声と、ぺチャリッと髪を舐められる音が耳に残っていた。
大丈夫、あれはただの頭のおかしい人だったと思い込もうとしても、触られた気持ち悪さと恐怖が体の中で膨れあがっていく。
バチバチッと弾けた静電気のようなものがなければ、もっと体を触られていた。
嫌なのに、怖くて拒絶の声が出せなかった。小刻みに震えだす体を落ち着かせようと、理子は両腕で肩を抱き締める。
「シルヴァリス様」
痴漢に触られるのは、大好きな魔王に触られるのとは全然違う。
じわりっ、理子の瞳に涙の膜が張られていく。
「リコ」
理子の呼び掛けに応えるように、シルヴァリスの声が聞こえる。
まさかと思いつつ、顔を上げれば目の前に眉間に皺を寄せたシルヴァリスがホームに立っていた。
どうして此処に、黒いシャツとズボンだから此方でも違和感は無いな、とか思いつつ理子は両目に涙を浮かべて座ったまま彼へと両腕を伸ばす。
中腰となって椅子から倒れるように、シルヴァリスの胸へ抱き付いた。
抱き付いた途端、シルヴァリスの腕の中に囲われる。
騒がしい周囲の音と光がすべて、彼の体で遮断された。
花の香りと彼の体温に、恐怖でいっぱいだった理子の心がほどけていく。
もう大丈夫、という安堵がじんわりと胸の中に広がっていった。
(今日の夕飯はどうしようかな、たまには作ろうかな)
簡単に作れる夕飯のメニューを考えていると、ふと、背中に貼り付くように立つ誰かの気配を感じた。
相手の体が当たるのが気になり、隙間を空けようと少し前へ体を動かすが、背後の人物も同じように前へと動く。
離れたいのに密着してくる背後の人物に、理子は身を固くする。
耳に届く息遣いと、後ろで一纏めにしていた髪を弄られる感触がして、理子の背中が泡立った。
「髪、綺麗ですね」
耳元で囁かれたのは、まだ若い男性の声。
「え、あの?」
(痴漢!?)
戸惑いと恐怖の感情が、じわりじわりと沸き上がってくる。
「これだけの魔力を受け入れても、歪まないとは」
男性が感嘆と恍惚が入り混じった声と、ねちゃりっぴちゃりっという水っぽい音が理子の耳に届いて、生理的な気持ち悪さに吊革を持つ手が震えた。
(髪を舐められている!?)
嫌悪感と恐怖から上げそうにある悲鳴を、何とか抑え込む。
「さすが、魔王様の選んだお妃様だ」
ザワリッ!
腰を撫でるように触れられて、嫌悪感と恐怖が限界を越えた。
身体中の毛穴が総毛立つ感覚が理子を襲う。
バチバチバチ!
青白い光と共に、強烈な静電気が弾ける音が電車内に響き、理子の後ろに立っていた男性の体が傾いでいく。
ドサリッ
「キャー!?」
「うわっ何だ!?」
「人が倒れたぞー」
急に倒れたように見えた男性に、何事かと騒ぐ乗客達の間をすり抜けて理子はドアの前へと立った。
電車がホームに滑り込み、開閉音楽と共にドアが開く。
迷わず理子は騒ぐ周りの人を押し退けて、電車のドアからホームへ飛び降りた。
「今のは……何?」
見知らぬ男性に痴漢され、髪を触れられて舐められた。
後ろで一纏めにしていた髪の毛の先が濡れているし、さっきのは気のせいじゃない。
ふらつく足取りでホーム中央のベンチへ座る。
ねっとりと絡み付く嫌な声と、ぺチャリッと髪を舐められる音が耳に残っていた。
大丈夫、あれはただの頭のおかしい人だったと思い込もうとしても、触られた気持ち悪さと恐怖が体の中で膨れあがっていく。
バチバチッと弾けた静電気のようなものがなければ、もっと体を触られていた。
嫌なのに、怖くて拒絶の声が出せなかった。小刻みに震えだす体を落ち着かせようと、理子は両腕で肩を抱き締める。
「シルヴァリス様」
痴漢に触られるのは、大好きな魔王に触られるのとは全然違う。
じわりっ、理子の瞳に涙の膜が張られていく。
「リコ」
理子の呼び掛けに応えるように、シルヴァリスの声が聞こえる。
まさかと思いつつ、顔を上げれば目の前に眉間に皺を寄せたシルヴァリスがホームに立っていた。
どうして此処に、黒いシャツとズボンだから此方でも違和感は無いな、とか思いつつ理子は両目に涙を浮かべて座ったまま彼へと両腕を伸ばす。
中腰となって椅子から倒れるように、シルヴァリスの胸へ抱き付いた。
抱き付いた途端、シルヴァリスの腕の中に囲われる。
騒がしい周囲の音と光がすべて、彼の体で遮断された。
花の香りと彼の体温に、恐怖でいっぱいだった理子の心がほどけていく。
もう大丈夫、という安堵がじんわりと胸の中に広がっていった。