くたびれOL、魔王様の抱き枕を拝命いたしました!?
「人にしたら、なかなかの魔力だな」
爆煙の中から聞こえた声に、勇者の笑みは凍り付く。
「嘘だろっ」
自分が扱える最大級の火炎魔法に、聖剣の聖魔法の直撃を受けて無傷でいる魔王。
さらに、魔王は壇上から一歩も動いていない事に気付いて、勇者の額から汗が流れ落ちた。
「っ!」
焦る勇者を余裕の表情で見下ろしていた魔王だったが、異界で起こった異変を察知して虚空を睨み付けた。
「……ちっ、彼奴め……」
寵愛する娘と同じ赤い玉をはめた、魔王が右耳に付けているカフスが異変を知らせる。
隙を与えていたとはいえ、想定外の早さでガーディアンと守護魔法が破られるとは。
「まだだっ!」
気が逸れていた魔王の腕を聖剣の切っ先が掠める。
久しく忘れていた傷を負った痛みと、傷口から流れ出る血液の感覚に、魔王は己が慢心しきっていたと嘲る。
魔王を傷付けるとは、人の身で、なかなかやる。
もっと時間をかけて鍛えれば、高位魔族にも遜色しない程の勇者となろう。
だが、
「勇者よ、残念だが貴様と遊んでる暇が無くなった。これで終いにさせてもらう」
手加減せずに、魔王は勇者の周囲へと滅するための魔力を放つ。
「何! くっ、ぐああっ!」
バリバリバリッ!!
防御する間もなく、足元から出現した漆黒の稲妻が勇者に襲いかかる。
抵抗したくとも、状態異常の効果も併せ持つ稲妻に体を貫かれてはなすすべもなかった。
「終いだ」
無感動な魔王の声が響き、混濁していく意識の中、勇者は己の死を覚悟した。
「御待ちください!!」
突如、祭壇の間に第三者の声が響く。
勇者の命を奪おうとしていた稲妻の戒めが、瞬時に解かれた。
ドサリッ
稲妻から解放された勇者は、糸の切れた人形の様に前のめりに倒れる。
身体中を襲う焼けるような痛みにより、身動き出来ずに喘ぎながら呻く。
「アネイル国宰相殿から魔王様宛に伝令魔法が届きました」
魔王と勇者の間に割って入る形になった従者は、壇上の主へ向かって膝を折る。
「“粛清は全て終わりました”と」
「ほぅ、テオドール王子と宰相はもう終わらせたのか」
“アネイル国”“粛清”という言葉に、勇者は激痛を堪えながら僅かに動く顔を上げる。
「勇者よ聞くがよい。貴様に我の討伐を命じていた、マクシリアン王子は弟のテオドール王子によって粛清された。王も捕らえられ、今後、テオドール王子がアネイル国王に即位するだろう」
「なん、だと……?」
異世界に召喚されてから、今まで世話をしてもらっていたマクシリアン王子の衝撃的な話に、勇者は焼けて激痛を訴える喉から掠れた声を絞り出す。
「我は後始末に向かうが、この世界での存在理由が無くなった貴様は、これからどうしたいのだ?」
勇者として召喚した王子は葬られ、召喚理由となった魔王を倒せぬのなら、この世界での自分の存在理由は……無い。
「俺は……還り、たい。元の、世界へ」
ポタリッ
勇者に祭り上げられてきた少年の瞳から涙が溢れ、石造りの冷たい床を濡らす。
「よかろう。ならば共に来い。貴様を救国の勇者とやらにしてやる」
魔王の台詞が終わらないうちに、勇者の身体中があたたかな光に包まれる。
瞬く間に痛みと息苦しさが楽になっていき、勇者は魔王によって回復魔法をかけられたことを覚った。
爆煙の中から聞こえた声に、勇者の笑みは凍り付く。
「嘘だろっ」
自分が扱える最大級の火炎魔法に、聖剣の聖魔法の直撃を受けて無傷でいる魔王。
さらに、魔王は壇上から一歩も動いていない事に気付いて、勇者の額から汗が流れ落ちた。
「っ!」
焦る勇者を余裕の表情で見下ろしていた魔王だったが、異界で起こった異変を察知して虚空を睨み付けた。
「……ちっ、彼奴め……」
寵愛する娘と同じ赤い玉をはめた、魔王が右耳に付けているカフスが異変を知らせる。
隙を与えていたとはいえ、想定外の早さでガーディアンと守護魔法が破られるとは。
「まだだっ!」
気が逸れていた魔王の腕を聖剣の切っ先が掠める。
久しく忘れていた傷を負った痛みと、傷口から流れ出る血液の感覚に、魔王は己が慢心しきっていたと嘲る。
魔王を傷付けるとは、人の身で、なかなかやる。
もっと時間をかけて鍛えれば、高位魔族にも遜色しない程の勇者となろう。
だが、
「勇者よ、残念だが貴様と遊んでる暇が無くなった。これで終いにさせてもらう」
手加減せずに、魔王は勇者の周囲へと滅するための魔力を放つ。
「何! くっ、ぐああっ!」
バリバリバリッ!!
防御する間もなく、足元から出現した漆黒の稲妻が勇者に襲いかかる。
抵抗したくとも、状態異常の効果も併せ持つ稲妻に体を貫かれてはなすすべもなかった。
「終いだ」
無感動な魔王の声が響き、混濁していく意識の中、勇者は己の死を覚悟した。
「御待ちください!!」
突如、祭壇の間に第三者の声が響く。
勇者の命を奪おうとしていた稲妻の戒めが、瞬時に解かれた。
ドサリッ
稲妻から解放された勇者は、糸の切れた人形の様に前のめりに倒れる。
身体中を襲う焼けるような痛みにより、身動き出来ずに喘ぎながら呻く。
「アネイル国宰相殿から魔王様宛に伝令魔法が届きました」
魔王と勇者の間に割って入る形になった従者は、壇上の主へ向かって膝を折る。
「“粛清は全て終わりました”と」
「ほぅ、テオドール王子と宰相はもう終わらせたのか」
“アネイル国”“粛清”という言葉に、勇者は激痛を堪えながら僅かに動く顔を上げる。
「勇者よ聞くがよい。貴様に我の討伐を命じていた、マクシリアン王子は弟のテオドール王子によって粛清された。王も捕らえられ、今後、テオドール王子がアネイル国王に即位するだろう」
「なん、だと……?」
異世界に召喚されてから、今まで世話をしてもらっていたマクシリアン王子の衝撃的な話に、勇者は焼けて激痛を訴える喉から掠れた声を絞り出す。
「我は後始末に向かうが、この世界での存在理由が無くなった貴様は、これからどうしたいのだ?」
勇者として召喚した王子は葬られ、召喚理由となった魔王を倒せぬのなら、この世界での自分の存在理由は……無い。
「俺は……還り、たい。元の、世界へ」
ポタリッ
勇者に祭り上げられてきた少年の瞳から涙が溢れ、石造りの冷たい床を濡らす。
「よかろう。ならば共に来い。貴様を救国の勇者とやらにしてやる」
魔王の台詞が終わらないうちに、勇者の身体中があたたかな光に包まれる。
瞬く間に痛みと息苦しさが楽になっていき、勇者は魔王によって回復魔法をかけられたことを覚った。