くたびれOL、魔王様の抱き枕を拝命いたしました!?
あの日、異世界へ召喚された日は、高校生活最後の夏休みが終わり憂鬱な気分で翔真は学校へ向かっていた。
半ば寝ながら電車に乗っていた翔真は、くぁっと欠伸をしながら顔を上げて止まった。
(うわぁー、美人)
顔を上げた翔真の目は、前に立つOLに釘付けになってしまった。
ただ綺麗なお姉さんじゃない。惹き付けられる様な美人だった。
ふと、吊革に掴まっているOLと目が合う。
綺麗なお姉さんと目が合って、逸らすのは不自然かと思って慌てた翔真はOLに席を譲った。
朝から良いことしたなーと、気分が上向きになって、電車からホームへと一歩踏み入れた瞬間……世界は暗転した。
気が付けば、俺は真っ暗な長い穴を落下していた。
最初は、眠くてよろけた拍子にマンホールに落ちたのかと思ったが、違う。
底が見えずに、何時までも暗闇を落下し続けるのだ。
これはヤバイと焦って、何か掴まる物は無いかと手足をばたつかせる。
暫くもがいていると翔真の視界に、真っ暗闇以外の別のものが入り込む。
それは真っ暗な空間に立つ、燕尾服を着た長い黒髪の男。
“お前は、私の役に立ってもらおう”
ムカつくくらい綺麗な顔をした男は、高慢そうな表情を嬉しそうに歪めて、青い瞳を猫のように細める。
“誰だよ! 何なんだよ!”
叫んだつもりだった翔真は、次の瞬間には石の床の上へと背中から着地していた。
背中から着地したせいで、肩と尻を襲った強烈な痛みで呻く。
「おおっ勇者よ!」
見知らぬ石造りの広い部屋で、魔法使いが着るローブのような服を纏った男達に囲まれた翔真は、涙目で痛む尻を押さえた。
「ゆうしゃ?」
傷みで悶絶している翔真を笑うでもなく、歓喜乱舞といったローブを羽織った男達に、何かのドッキリじゃないかと辺りを見渡して撮影のカメラを探す。
こうして、約半年に及ぶ翔真の異世界生活が幕を上げたのだった。
魔王の攻撃により、身体の内と外に負った火傷による激痛が嘘のように消えてゆく。
高位回復魔法も扱えるとは、魔王はとんでもない化け物だと改めて翔真は実感した。
城の魔術師や回復魔法に特化したヒーラーでさえ、ここまで素早く治せないだろう。
今ならはっきりと分かる。
最初から、この寒気がするくらい綺麗で冷酷な魔王に勝てるわけ無かったのだ。
「うぅ、治ったのか」
傷みの有無と傷の治癒具合を確認しながら、両手を床に突いて翔真はゆっくりと起き上がった。
床へ転がったままの聖剣を腰の鞘へと収める。
「さて、行くぞ」
未だ壇上から動かない魔王は、黒衣のマントを翻して翔真へ背を向ける。
「ど、何処へ?」
つい先程まで、自分を倒そうとしていた相手に背を向けるとは余裕だな、と思いつつ魔王へ問う。
首を動かして翔真を見下ろす魔王は、クッと笑った。
「お前を勇者として召喚した者。我を出し抜くために、アネイル国を、マクシリアン王子を裏で操っていた者の所だ。我を謀ろうなどと、赦せぬ」
魔王から発せられる、殺気とも怒気ともとれる鋭利な刃物の様な圧力に気圧され、翔真は数歩後ろへ下がってしまった。
半ば寝ながら電車に乗っていた翔真は、くぁっと欠伸をしながら顔を上げて止まった。
(うわぁー、美人)
顔を上げた翔真の目は、前に立つOLに釘付けになってしまった。
ただ綺麗なお姉さんじゃない。惹き付けられる様な美人だった。
ふと、吊革に掴まっているOLと目が合う。
綺麗なお姉さんと目が合って、逸らすのは不自然かと思って慌てた翔真はOLに席を譲った。
朝から良いことしたなーと、気分が上向きになって、電車からホームへと一歩踏み入れた瞬間……世界は暗転した。
気が付けば、俺は真っ暗な長い穴を落下していた。
最初は、眠くてよろけた拍子にマンホールに落ちたのかと思ったが、違う。
底が見えずに、何時までも暗闇を落下し続けるのだ。
これはヤバイと焦って、何か掴まる物は無いかと手足をばたつかせる。
暫くもがいていると翔真の視界に、真っ暗闇以外の別のものが入り込む。
それは真っ暗な空間に立つ、燕尾服を着た長い黒髪の男。
“お前は、私の役に立ってもらおう”
ムカつくくらい綺麗な顔をした男は、高慢そうな表情を嬉しそうに歪めて、青い瞳を猫のように細める。
“誰だよ! 何なんだよ!”
叫んだつもりだった翔真は、次の瞬間には石の床の上へと背中から着地していた。
背中から着地したせいで、肩と尻を襲った強烈な痛みで呻く。
「おおっ勇者よ!」
見知らぬ石造りの広い部屋で、魔法使いが着るローブのような服を纏った男達に囲まれた翔真は、涙目で痛む尻を押さえた。
「ゆうしゃ?」
傷みで悶絶している翔真を笑うでもなく、歓喜乱舞といったローブを羽織った男達に、何かのドッキリじゃないかと辺りを見渡して撮影のカメラを探す。
こうして、約半年に及ぶ翔真の異世界生活が幕を上げたのだった。
魔王の攻撃により、身体の内と外に負った火傷による激痛が嘘のように消えてゆく。
高位回復魔法も扱えるとは、魔王はとんでもない化け物だと改めて翔真は実感した。
城の魔術師や回復魔法に特化したヒーラーでさえ、ここまで素早く治せないだろう。
今ならはっきりと分かる。
最初から、この寒気がするくらい綺麗で冷酷な魔王に勝てるわけ無かったのだ。
「うぅ、治ったのか」
傷みの有無と傷の治癒具合を確認しながら、両手を床に突いて翔真はゆっくりと起き上がった。
床へ転がったままの聖剣を腰の鞘へと収める。
「さて、行くぞ」
未だ壇上から動かない魔王は、黒衣のマントを翻して翔真へ背を向ける。
「ど、何処へ?」
つい先程まで、自分を倒そうとしていた相手に背を向けるとは余裕だな、と思いつつ魔王へ問う。
首を動かして翔真を見下ろす魔王は、クッと笑った。
「お前を勇者として召喚した者。我を出し抜くために、アネイル国を、マクシリアン王子を裏で操っていた者の所だ。我を謀ろうなどと、赦せぬ」
魔王から発せられる、殺気とも怒気ともとれる鋭利な刃物の様な圧力に気圧され、翔真は数歩後ろへ下がってしまった。