くたびれOL、魔王様の抱き枕を拝命いたしました!?
テラス側の壁が吹き飛んだため室内の照明は全て消え、暗雲立ち込める空を裂くような稲光が薄暗い室内を照らす。
壁の残骸や硝子の破片やらで滅茶苦茶になった室内へ降り立った魔王シルヴァリスは、無表情でカルサエルを一瞥すると理子の方へと視線を向けた。
(シルヴァリス様、無事だった。助けに来てくれた)
長椅子の背凭れを抱えて上半身を起こした理子は、シルヴァリスの無事な姿に安堵して、すぅっと肩から力が抜けていく。
力が抜けたせいで、瞳から涙がポロポロと頬を伝って零れ落ちた。
「うっ、ひっく、シル、ヴァリス様」
しゃくりあげる理子を見て、シルヴァリスの背後にいた人物が息を飲んだ。
「理子さんっ!?」
聞き覚えのある声に、理子は泣きながらシルヴァリスの背後に居た人物の存在に気付き、黒髪焦げ茶色の瞳をした彼へと目を向けた。
「しょうま、くん?」
何故、彼が此処にいるのだろうか。
驚いた反面、やはりとも思った。やはり、彼は此方の世界と関わりがあったのだ。
「理子さん? 何で此処に?っ!」
未だ、しゃくりあげている理子の元へ近付こうとした翔真の足が止まる。
ザッ!
慌てて後ろへ飛び退いた、翔真の足があった場所に深々と氷の矢が突き刺さったのだ。
「役立たずの勇者め」
氷の矢を放ったカルサエルは、苦々しい表情で追撃の矢を放つ。
うわっ、と呻いた翔真は、咄嗟に指先から火球を放って氷の矢を打ち落とした。
「貴様が……魔王を倒すという任を全うしなかったため、私の計画が台無しになったのだ!」
言い放つと同時にカルサエルの魔力が、凍てつく氷の刃と化し真上から雨となって降り注いだ。
パキィン
降り注ぐ氷の刃は、シリヴァリスと翔真に触れる前に見えない壁に阻まれて砕け散る。
「クククッ笑わせてくれる。先代魔王が卒去した後の内乱で、我に屈し臣下として膝を折ったにも関わらず、反旗を翻すとは正に愚の骨頂。反旗を翻しただけでも赦しがたいが、さらに我が妃を拐かすとは。貴様は自らの、一族の滅びすら望んでいるらしいな」
魔王様としての凶悪な迫力を纏って、シリヴァリスは愉しそうにクツクツ嗤う。
魔王の隣に立つ翔真は「妃?」と、ぽかんと口を開けて理子とシリヴァリスを見る。
「貴様が企てた事は、我等魔族が他種族と交わしている不可侵条約を破る行為だ。咎人には罰を与えねばならぬ」
口の端を吊り上げながら、魔王はカルサエルとの距離を縮める。
雷の音をBGMにして、魔王はパキリパキリッと瓦礫を踏みながら歩く。
「既に貴様に与する者たちの捕縛へ、キルビスと将軍達が動いている。そして、ダルマン侯爵家の爵位剥奪は元老院も了承済みだ。貴様の配下共は全て捕らえ、この屋敷の周囲の空間は干渉出来ぬように閉じた。屋敷からは逃げ出すことも出来ず、貴様に加勢する者もおらぬ。カルサエル、我に成り代わり魔王の座にも着けず、人族の国を手中に納められず、残念だったな」
あと二、三歩でカルサエルと当たるといった距離で魔王は歩みを止める。
壁の残骸や硝子の破片やらで滅茶苦茶になった室内へ降り立った魔王シルヴァリスは、無表情でカルサエルを一瞥すると理子の方へと視線を向けた。
(シルヴァリス様、無事だった。助けに来てくれた)
長椅子の背凭れを抱えて上半身を起こした理子は、シルヴァリスの無事な姿に安堵して、すぅっと肩から力が抜けていく。
力が抜けたせいで、瞳から涙がポロポロと頬を伝って零れ落ちた。
「うっ、ひっく、シル、ヴァリス様」
しゃくりあげる理子を見て、シルヴァリスの背後にいた人物が息を飲んだ。
「理子さんっ!?」
聞き覚えのある声に、理子は泣きながらシルヴァリスの背後に居た人物の存在に気付き、黒髪焦げ茶色の瞳をした彼へと目を向けた。
「しょうま、くん?」
何故、彼が此処にいるのだろうか。
驚いた反面、やはりとも思った。やはり、彼は此方の世界と関わりがあったのだ。
「理子さん? 何で此処に?っ!」
未だ、しゃくりあげている理子の元へ近付こうとした翔真の足が止まる。
ザッ!
慌てて後ろへ飛び退いた、翔真の足があった場所に深々と氷の矢が突き刺さったのだ。
「役立たずの勇者め」
氷の矢を放ったカルサエルは、苦々しい表情で追撃の矢を放つ。
うわっ、と呻いた翔真は、咄嗟に指先から火球を放って氷の矢を打ち落とした。
「貴様が……魔王を倒すという任を全うしなかったため、私の計画が台無しになったのだ!」
言い放つと同時にカルサエルの魔力が、凍てつく氷の刃と化し真上から雨となって降り注いだ。
パキィン
降り注ぐ氷の刃は、シリヴァリスと翔真に触れる前に見えない壁に阻まれて砕け散る。
「クククッ笑わせてくれる。先代魔王が卒去した後の内乱で、我に屈し臣下として膝を折ったにも関わらず、反旗を翻すとは正に愚の骨頂。反旗を翻しただけでも赦しがたいが、さらに我が妃を拐かすとは。貴様は自らの、一族の滅びすら望んでいるらしいな」
魔王様としての凶悪な迫力を纏って、シリヴァリスは愉しそうにクツクツ嗤う。
魔王の隣に立つ翔真は「妃?」と、ぽかんと口を開けて理子とシリヴァリスを見る。
「貴様が企てた事は、我等魔族が他種族と交わしている不可侵条約を破る行為だ。咎人には罰を与えねばならぬ」
口の端を吊り上げながら、魔王はカルサエルとの距離を縮める。
雷の音をBGMにして、魔王はパキリパキリッと瓦礫を踏みながら歩く。
「既に貴様に与する者たちの捕縛へ、キルビスと将軍達が動いている。そして、ダルマン侯爵家の爵位剥奪は元老院も了承済みだ。貴様の配下共は全て捕らえ、この屋敷の周囲の空間は干渉出来ぬように閉じた。屋敷からは逃げ出すことも出来ず、貴様に加勢する者もおらぬ。カルサエル、我に成り代わり魔王の座にも着けず、人族の国を手中に納められず、残念だったな」
あと二、三歩でカルサエルと当たるといった距離で魔王は歩みを止める。