くたびれOL、魔王様の抱き枕を拝命いたしました!?
金色の鎖にぐるぐる巻きにされた翔真は、何とか鎖から逃れようともがいてカーペットに倒れ込んだ。
「くっ、このっぐえっ!?」
倒れた翔真の側まで歩み寄ったベアトリクスは、怪訝そうに眉を寄せてもがく少年を見下ろす。
「まさかとは思いますが、この者が勇者殿?……素敵な殿方を想像していたのですが、仕方ありませんね。伯父様から世話をするように言われていますから、この者はわたくしが預かりますわ」
明らかに落胆して溜め息を吐いたベアトリクスは、翔真を捕縛している鎖に魔力を注ぐ。
「俺は理子さんと話が、ぐっ!」
鎖から伝わった魔力によって、翔真の体がビクリッと大きく揺れた。
動かなくなったのを確認して、パチンッと、ベアトリクスは指を鳴らす。
「失礼します」
合図を受けて、ベアトリクスの世話と警護を担っている、筋肉質で力強い体型の侍女が室内へとやって来る。
屈強な侍女は理子へ一礼すると、ぐったりと力を失った翔真を荷物のように楽々と肩へ担いだ。
「こちらは気にせず、リコ様はゆっくりお休みください」
にこやかに告げるベアトリクスは、何かを含んだ微笑みを浮かべると淑女の礼をして理子に背中を向ける。
翔真の今後の扱いについてやダルマン侯爵の事など、聞きたいことは色々あるのに理子は呆気にとられてしまい、その間にベアトリクスと翔真を担いだ侍女は部屋を後にしてしまった。
「湯浴みの準備が整いました」
部屋に残された理子は、エルザとルーアンの手によって破れた服を脱がされ湯浴みに全身マッサージを施され、涙と汗でどろどろだったのをぴかぴか艶々になった。
初めて魔王以外の者に髪を乾かしてもらい、丁寧に櫛で鋤かれる。
艶々になった髪から香るのは、湯船に浮かべられた薔薇と同じ、高貴な甘さとエレガントさが混じった香り。
丁寧に手入れしてもらえて嬉しい反面、髪を整えるのが魔王じゃないのは少しだけ寂しくもあった。
(シルヴァリス様は大丈夫かな……魔王様だもの、きっと直ぐに帰ってくる、はず)
バルコニーに面した窓を見れば、真っ暗な空に稲光が走り抜けた。
***
「リコ様、魔王様がいらっしゃいました」
夕食後、ルーアンが淹れてくれた紅茶を飲み干したタイミングでエルザが魔王の訪れを理子に告げる。
勢い良く立ち上がった理子は魔王の私室へ続く扉へと駆け寄った。
「シルヴァリス様」
部屋へやって来たシルヴァリスは、すでに湯浴みを済ましてきたらしく黒い寝間着を着ており、ほのかにジャスミンの香りがする。
彼の白い肌には傷一つ見当たらず、燐光を放つ銀髪に乱れも無く、何時もと何も変わら無い麗しい魔王の姿に理子は安堵の息を吐いた。
「リコ」
椅子から立ち上がった理子へ向けられた優しい微笑みに、つい見惚れてしまう。
頬を染める理子の肩へ腕を回し、シルヴァリスは自分の方へと抱き寄せるとそのまま横抱きにして長椅子へ腰を下ろし、膝の上へと横向きで座らせる。
膝の上へ座らされると、目線が同じになるため視線を逸らす訳にはいかずに、恥ずかしさから理子は視線を逸らした。
「くっ、このっぐえっ!?」
倒れた翔真の側まで歩み寄ったベアトリクスは、怪訝そうに眉を寄せてもがく少年を見下ろす。
「まさかとは思いますが、この者が勇者殿?……素敵な殿方を想像していたのですが、仕方ありませんね。伯父様から世話をするように言われていますから、この者はわたくしが預かりますわ」
明らかに落胆して溜め息を吐いたベアトリクスは、翔真を捕縛している鎖に魔力を注ぐ。
「俺は理子さんと話が、ぐっ!」
鎖から伝わった魔力によって、翔真の体がビクリッと大きく揺れた。
動かなくなったのを確認して、パチンッと、ベアトリクスは指を鳴らす。
「失礼します」
合図を受けて、ベアトリクスの世話と警護を担っている、筋肉質で力強い体型の侍女が室内へとやって来る。
屈強な侍女は理子へ一礼すると、ぐったりと力を失った翔真を荷物のように楽々と肩へ担いだ。
「こちらは気にせず、リコ様はゆっくりお休みください」
にこやかに告げるベアトリクスは、何かを含んだ微笑みを浮かべると淑女の礼をして理子に背中を向ける。
翔真の今後の扱いについてやダルマン侯爵の事など、聞きたいことは色々あるのに理子は呆気にとられてしまい、その間にベアトリクスと翔真を担いだ侍女は部屋を後にしてしまった。
「湯浴みの準備が整いました」
部屋に残された理子は、エルザとルーアンの手によって破れた服を脱がされ湯浴みに全身マッサージを施され、涙と汗でどろどろだったのをぴかぴか艶々になった。
初めて魔王以外の者に髪を乾かしてもらい、丁寧に櫛で鋤かれる。
艶々になった髪から香るのは、湯船に浮かべられた薔薇と同じ、高貴な甘さとエレガントさが混じった香り。
丁寧に手入れしてもらえて嬉しい反面、髪を整えるのが魔王じゃないのは少しだけ寂しくもあった。
(シルヴァリス様は大丈夫かな……魔王様だもの、きっと直ぐに帰ってくる、はず)
バルコニーに面した窓を見れば、真っ暗な空に稲光が走り抜けた。
***
「リコ様、魔王様がいらっしゃいました」
夕食後、ルーアンが淹れてくれた紅茶を飲み干したタイミングでエルザが魔王の訪れを理子に告げる。
勢い良く立ち上がった理子は魔王の私室へ続く扉へと駆け寄った。
「シルヴァリス様」
部屋へやって来たシルヴァリスは、すでに湯浴みを済ましてきたらしく黒い寝間着を着ており、ほのかにジャスミンの香りがする。
彼の白い肌には傷一つ見当たらず、燐光を放つ銀髪に乱れも無く、何時もと何も変わら無い麗しい魔王の姿に理子は安堵の息を吐いた。
「リコ」
椅子から立ち上がった理子へ向けられた優しい微笑みに、つい見惚れてしまう。
頬を染める理子の肩へ腕を回し、シルヴァリスは自分の方へと抱き寄せるとそのまま横抱きにして長椅子へ腰を下ろし、膝の上へと横向きで座らせる。
膝の上へ座らされると、目線が同じになるため視線を逸らす訳にはいかずに、恥ずかしさから理子は視線を逸らした。