くたびれOL、魔王様の抱き枕を拝命いたしました!?
実家を後にしたと理子とシルヴァリスは、実家と駅の中間地点にある大きな公園へ立ち寄った。
行きは重かった理子の足取りは、結婚報告という肩の荷が下りたために軽い。
夕方になり気温が下がってきたせいか、公園には理子とシルヴァリス以外の人影は見当たらず、貸切状態が何だか嬉しくてつい鼻歌を歌っていた。
風が吹いて銀杏の黄色い葉がヒラヒラ舞い、足元の落ち葉の上を歩く度にサクサク音がする。
(ふふふっお母さんの驚いた顔ったら、スッキリしたなー)
実家に行く前は、気持ちがすれ違ってばかりの母親と分かり合いたいとか、自分を認めて欲しいと心のどこかでは思っていた。
しかし、親子でも相性もあって寄り添えないのは仕方ないのかもしれないと、今回で気持ちの整理ができた。
いつか丁度良い距離を見付けて、理子と母親の間にあるわだかまりが薄まればいい。
(亜子お姉ちゃんの顔色も色々変わって面白かったし)
玄関前で初めてシルヴァリスと対面した時は頬を赤くしていた亜子は、帰り間際までしつこく言い寄って彼に冷たく耳元で何かを言われてから青ざめ震えていた。
恋愛では百戦錬磨の姉だから、本気で挑んだのに冷淡な扱いをされる経験は初めてでショックだったのだろう。
これで少しは異性関係を清算して、婚約者さん一筋になってくれるといいのだけれど。
(お父さんは、ちょっと感動しちゃったな)
あまり母親に対して意見しないせいか、家族内での父親の力は弱い。それでも、幼い頃より姉妹を平等に扱ってくれ、ここぞというときは理子の味方となってくれていた。
父親がシルヴァリスの事を認めてくれたから、この世界で思い残したものはほぼ無い。あるとしたら、香織の結婚式参列くらいか。
「ありがとう、シルヴァリス様」
少し重たいけれど愛してくれて、一緒に異世界まで来てくれて、母親に対して静かに反論してくれて。
小声での呟きだったのに、聞こえたのか前を歩いていたシルヴァリスが振り返る。
「どうした? 俺は、お前が母親から軽んじられているのが気に入らなかっただけだが?」
何でもないように言う彼の言葉が嬉しくて、理子はにこーっと満面の笑みを返す。
スウッとシルヴァリスの長い指先が伸びてきて、理子の髪に絡まった落ち葉を取る。
落ち葉を取った指先は、そのまま頬を撫でるように優しく滑り落ちた。
「銀杏の葉が付いていたのね。ありがとう。この公園の銀杏並木は毎年綺麗で……って、どうしたの?」
「リコ、手を」
手のひらを向けられて、理子はシルヴァリスに言われるまま右手を差し出す。
理子の右手を取ったシルヴァリスは、流れるような動作で膝を折り、地面に片膝をついた。
「ちょっ、ちょっと?」
突然の事に、理解が追い付かない理子の右手の甲へ、シルヴァリスの冷たい唇がそっと触れる。
触れた唇は冷たかったのに、彼の唇が触れた手の甲からじわじわと全身へ熱が広がっていく。
「リコ……この世界を、家族を捨てて、俺と結婚してくれますか?」
「へっ? えっ?」
見上げてくる明るい茶色の瞳は、冗談とは思えないくらい真っ直ぐで。
普段の魔王様の態度と違い過ぎる言動の彼に、理子の思考は一時停止する。
銀杏並木の前で、麗しい美青年に跪かれてのプロポーズだなんて、まるで映画のワンシーンみたいな光景。
もしや白昼夢じゃないのかと思い、何度も目蓋を瞬かせた。
行きは重かった理子の足取りは、結婚報告という肩の荷が下りたために軽い。
夕方になり気温が下がってきたせいか、公園には理子とシルヴァリス以外の人影は見当たらず、貸切状態が何だか嬉しくてつい鼻歌を歌っていた。
風が吹いて銀杏の黄色い葉がヒラヒラ舞い、足元の落ち葉の上を歩く度にサクサク音がする。
(ふふふっお母さんの驚いた顔ったら、スッキリしたなー)
実家に行く前は、気持ちがすれ違ってばかりの母親と分かり合いたいとか、自分を認めて欲しいと心のどこかでは思っていた。
しかし、親子でも相性もあって寄り添えないのは仕方ないのかもしれないと、今回で気持ちの整理ができた。
いつか丁度良い距離を見付けて、理子と母親の間にあるわだかまりが薄まればいい。
(亜子お姉ちゃんの顔色も色々変わって面白かったし)
玄関前で初めてシルヴァリスと対面した時は頬を赤くしていた亜子は、帰り間際までしつこく言い寄って彼に冷たく耳元で何かを言われてから青ざめ震えていた。
恋愛では百戦錬磨の姉だから、本気で挑んだのに冷淡な扱いをされる経験は初めてでショックだったのだろう。
これで少しは異性関係を清算して、婚約者さん一筋になってくれるといいのだけれど。
(お父さんは、ちょっと感動しちゃったな)
あまり母親に対して意見しないせいか、家族内での父親の力は弱い。それでも、幼い頃より姉妹を平等に扱ってくれ、ここぞというときは理子の味方となってくれていた。
父親がシルヴァリスの事を認めてくれたから、この世界で思い残したものはほぼ無い。あるとしたら、香織の結婚式参列くらいか。
「ありがとう、シルヴァリス様」
少し重たいけれど愛してくれて、一緒に異世界まで来てくれて、母親に対して静かに反論してくれて。
小声での呟きだったのに、聞こえたのか前を歩いていたシルヴァリスが振り返る。
「どうした? 俺は、お前が母親から軽んじられているのが気に入らなかっただけだが?」
何でもないように言う彼の言葉が嬉しくて、理子はにこーっと満面の笑みを返す。
スウッとシルヴァリスの長い指先が伸びてきて、理子の髪に絡まった落ち葉を取る。
落ち葉を取った指先は、そのまま頬を撫でるように優しく滑り落ちた。
「銀杏の葉が付いていたのね。ありがとう。この公園の銀杏並木は毎年綺麗で……って、どうしたの?」
「リコ、手を」
手のひらを向けられて、理子はシルヴァリスに言われるまま右手を差し出す。
理子の右手を取ったシルヴァリスは、流れるような動作で膝を折り、地面に片膝をついた。
「ちょっ、ちょっと?」
突然の事に、理解が追い付かない理子の右手の甲へ、シルヴァリスの冷たい唇がそっと触れる。
触れた唇は冷たかったのに、彼の唇が触れた手の甲からじわじわと全身へ熱が広がっていく。
「リコ……この世界を、家族を捨てて、俺と結婚してくれますか?」
「へっ? えっ?」
見上げてくる明るい茶色の瞳は、冗談とは思えないくらい真っ直ぐで。
普段の魔王様の態度と違い過ぎる言動の彼に、理子の思考は一時停止する。
銀杏並木の前で、麗しい美青年に跪かれてのプロポーズだなんて、まるで映画のワンシーンみたいな光景。
もしや白昼夢じゃないのかと思い、何度も目蓋を瞬かせた。