くたびれOL、魔王様の抱き枕を拝命いたしました!?
「リコ、返事は?」
混乱しかけた時に返事を促されて、やっとこれは現実なんだと理解した。
「はっ、はひぃ」
理解した途端、一気に全身の血液が沸騰する。全身真っ赤になった理子の喉からは、上擦った変な声が出た。
真っ赤になって慌てる理子の様子に、クックッと肩を震わせながらシルヴァリスは立ち上がる。
フワッ
日が落ちて薄暗くなった周囲がほんのりと明るくなり、理子は何事かと辺りを見渡した。
橙色、黄色、薄緑色の蛍の光みたいな淡い光が二人の周りをふわふわと飛び交う。蛍の光に似た、綿毛のような優しい光。
「なに?」
綿毛が発光しているような淡い幻想的な光に、シルヴァリスも目を細めた。
「この世界の精霊達が祝福しているようだな」
広げた手のひらの中にふんわり落ちてきた橙色の光の玉は、重さも無くほのかにあたたい。
「祝福? これが精霊?」
ファンタジーのイメージとは違う、実体の無い光が精霊とは不思議でじっと見詰めていると、手のひらの綿毛はふるふる小刻みに震えてほどけるように消えた。
「精霊は気付かないだけで何処にでもいる。この世界の精霊は姿を潜めている事が多いようだがな。俺の魔力に惹かれて姿を表したのか」
「そっか精霊さん、ありがとう」
ありがとうの言葉に応えるように、光の綿毛達は私の肩や頭の上を跳び跳ねる動きを暫く続け、次々と空気中へほどけながら消えていった。
***
ハラハラ舞い散る銀杏の葉を眺めて、公園の銀杏並木に設置されているベンチに二人寄り添って座る。
お互いの手は、指を絡ませて繋いだままで。
「あの、急にどうしたの?」
以前のシルヴァリスは「妃にする」と決定事項のように言ってきたのに、急にプロポーズをするとは彼の中でどういう心境の変化があったのか。吃驚したけど、凄く嬉しくて倒れるかと思った。
「ショーマにプロポーズの言葉は何かと聞かれてな。プロポーズとやらはしていなかったと思い出したのだ。嫌だと言ったら、無理矢理浚って監禁しようかと思って監禁用の部屋も、お前を繋ぐ鎖と首輪も用意したのだが……まぁ、いつか使うか」
きっかけは翔真に尋ねられたからとはいえ、プロポーズをしてくれたのは純粋に嬉しい。と、にやけている理子の耳に、途中から恐ろしい発言が聞こえて「ひっ」と喉の奥から悲鳴が出た。
忘れかけていたが、彼は魔王様だった。
鎖で繋いで監禁するのに、きっと彼は躊躇はしない。むしろ、嬉々して監禁しそうだ。
「鎖と首輪なんか使わないからっ!」
全身から血の気が引くのを感じて、全力で監禁される未来を否定をした。
全力で否定したのが面白かったのか、シルヴァリスは片手で顔半分を覆ってクククッと笑う。
「クッ、冗談だ。これから、俺の妻として末永くよろしくな」
「はい。私の旦那様」
未だ笑いが止まらないでいるシルヴァリスに、むくれた気持ちで繋いだ手に力を少しこめれば、ぎゅっと優しく握り返してくれる。
「さて、城へ戻るか」
「はいっ」
手を繋いだままベンチから立ち上がれば、シルヴァリスは理子の腰を抱き寄せて腕の中へと閉じ込めた。
自分の寝室と、異世界の魔王の寝室を繋ぐ穴を作ってしまうほど快適な睡眠を求めた山田理子は、魔王様の腕の中という彼以外には邪魔出来ない最高の寝場所を見つけました。
めでたしめでたし?
✱本編はこれで終話となります。ここまで読んでくださりありがとうございました。
混乱しかけた時に返事を促されて、やっとこれは現実なんだと理解した。
「はっ、はひぃ」
理解した途端、一気に全身の血液が沸騰する。全身真っ赤になった理子の喉からは、上擦った変な声が出た。
真っ赤になって慌てる理子の様子に、クックッと肩を震わせながらシルヴァリスは立ち上がる。
フワッ
日が落ちて薄暗くなった周囲がほんのりと明るくなり、理子は何事かと辺りを見渡した。
橙色、黄色、薄緑色の蛍の光みたいな淡い光が二人の周りをふわふわと飛び交う。蛍の光に似た、綿毛のような優しい光。
「なに?」
綿毛が発光しているような淡い幻想的な光に、シルヴァリスも目を細めた。
「この世界の精霊達が祝福しているようだな」
広げた手のひらの中にふんわり落ちてきた橙色の光の玉は、重さも無くほのかにあたたい。
「祝福? これが精霊?」
ファンタジーのイメージとは違う、実体の無い光が精霊とは不思議でじっと見詰めていると、手のひらの綿毛はふるふる小刻みに震えてほどけるように消えた。
「精霊は気付かないだけで何処にでもいる。この世界の精霊は姿を潜めている事が多いようだがな。俺の魔力に惹かれて姿を表したのか」
「そっか精霊さん、ありがとう」
ありがとうの言葉に応えるように、光の綿毛達は私の肩や頭の上を跳び跳ねる動きを暫く続け、次々と空気中へほどけながら消えていった。
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ハラハラ舞い散る銀杏の葉を眺めて、公園の銀杏並木に設置されているベンチに二人寄り添って座る。
お互いの手は、指を絡ませて繋いだままで。
「あの、急にどうしたの?」
以前のシルヴァリスは「妃にする」と決定事項のように言ってきたのに、急にプロポーズをするとは彼の中でどういう心境の変化があったのか。吃驚したけど、凄く嬉しくて倒れるかと思った。
「ショーマにプロポーズの言葉は何かと聞かれてな。プロポーズとやらはしていなかったと思い出したのだ。嫌だと言ったら、無理矢理浚って監禁しようかと思って監禁用の部屋も、お前を繋ぐ鎖と首輪も用意したのだが……まぁ、いつか使うか」
きっかけは翔真に尋ねられたからとはいえ、プロポーズをしてくれたのは純粋に嬉しい。と、にやけている理子の耳に、途中から恐ろしい発言が聞こえて「ひっ」と喉の奥から悲鳴が出た。
忘れかけていたが、彼は魔王様だった。
鎖で繋いで監禁するのに、きっと彼は躊躇はしない。むしろ、嬉々して監禁しそうだ。
「鎖と首輪なんか使わないからっ!」
全身から血の気が引くのを感じて、全力で監禁される未来を否定をした。
全力で否定したのが面白かったのか、シルヴァリスは片手で顔半分を覆ってクククッと笑う。
「クッ、冗談だ。これから、俺の妻として末永くよろしくな」
「はい。私の旦那様」
未だ笑いが止まらないでいるシルヴァリスに、むくれた気持ちで繋いだ手に力を少しこめれば、ぎゅっと優しく握り返してくれる。
「さて、城へ戻るか」
「はいっ」
手を繋いだままベンチから立ち上がれば、シルヴァリスは理子の腰を抱き寄せて腕の中へと閉じ込めた。
自分の寝室と、異世界の魔王の寝室を繋ぐ穴を作ってしまうほど快適な睡眠を求めた山田理子は、魔王様の腕の中という彼以外には邪魔出来ない最高の寝場所を見つけました。
めでたしめでたし?
✱本編はこれで終話となります。ここまで読んでくださりありがとうございました。