くたびれOL、魔王様の抱き枕を拝命いたしました!?
魔王様とチョコレート
国内外の賓客を招いての新年の公務が全て終わり、理子は自室ソファーに座って香織と電話をしていた。
ようやく、結婚準備のため引っ越ししたという香織とまーくんの新居へお邪魔する時間が取れる。
やたらと束縛したがる旦那様、魔王シルヴァリスはあまりいい顔はしなかったが、必死で頼み込んで日帰りならと渋々許可をしてくれた。
日帰りだけでも嬉しい。
香織と会えるのも嬉しいし、何よりシルヴァリスと離れられるのが嬉しい。
彼を嫌いな訳じゃないし、大好きな旦那様なのだが常に密着したがるし、腰とかお尻とか色んな所を触りまくる。他の者が居る前でもお構い無しでキスをしてきてと、とにかくシルヴァリスはスキンシップが激しい。
大好きな相手からどろどろに甘やかされ、溺愛されて喜ぶべきなのに、魔王の愛が重過ぎて理子の心と体がもたないのだ。
「で、理子はどうするの?」
携帯電話の向こうの香織から問われて、何処かへとびかけていた意識が戻る。
「何が?」
「何がって、バレンタインだよ。新婚ラブラブの旦那様にチョコはあげないの?」
「あ、そうだったね」
元居た世界と異世界とは暦がズレているため、もうすぐバレンタインだなんてすっかり忘れていた。
「もうすぐバレンタインだったね。旦那様にあげた方がいい、のかな?香織はどうするの?」
「ちょっ、新婚でしょ! あげた方がいいに決まっているでしょ!! 私はまーくんに手作りチョコとネクタイをあげる予定だよ」
信じられない! と叫ばれて、理子は思わずスマートフォンを耳から離した。
「手作りか……」
望めば何でも手に入る魔王様に渡すのなら、手作りの品は珍しくていいのかもしれない。
「ねぇ、連休日本に帰って来るならさ、一緒にチョコを作らない? 接待ゴルフでまーくん居ないし」
城内で作るのはシルヴァリスにバレてしまう。そう考えて、香織の申し出に理子は二つ返事で頷いた。
***
息抜きに付き合えと、シルヴァリスから誘われた理子は、前王妃の薔薇園へやって来た。
腰を抱いて密着してくるシルヴァリスは、息抜きと言いつつ宰相のキルビスに仕事を押し付けて来たに違いない。
昨日は、たった半日側に居なかっただけなのにキルビスに八つ当たりをしたらしいし、話しかけたら消されるんじゃないかってくらい苛苛しまくっていたらしく、「城から離れないでください」と、魔王の側近達から泣き付かれた理子は、内心溜め息を吐く。
(これって渡すチャンスじゃない)
予定では、香織の家から戻ってすぐに、作ったバレンタインチョコを渡すつもりだった。
しかし、魔国の自室へと転移した瞬間、待ち構えていたシルヴァリスに捕獲されてしまい、その後はいつも以上にねちっこくぐちゃぐちゃに抱き潰されてしまったのだ。
今朝は、側近達に泣き付かれて魔王の執務室へ行けずに、今までチョコレートを渡すタイミングを逃していた。
「リコ」
ガーデンベンチに座ったシルヴァリスは、慣れた仕草で理子の手を引いて自身の膝の上へ横抱きで座らせる。
初めて薔薇園を訪れた時は、シルヴァリスを膝枕するのでさえ恥ずかしかったのに、今では彼にくっつかれているのを当たり前のように受け入れていて、すっかりスキンシップに慣れてしまったと思う。
新婚生活について香織から問われて、普段の溺愛されっぷりを話したのだが、ちょっとどころか、かなり引かれていた気がする。
一見すると、冷徹な印象を与える美貌の魔王だからデレたイメージが湧かないからか。
ようやく、結婚準備のため引っ越ししたという香織とまーくんの新居へお邪魔する時間が取れる。
やたらと束縛したがる旦那様、魔王シルヴァリスはあまりいい顔はしなかったが、必死で頼み込んで日帰りならと渋々許可をしてくれた。
日帰りだけでも嬉しい。
香織と会えるのも嬉しいし、何よりシルヴァリスと離れられるのが嬉しい。
彼を嫌いな訳じゃないし、大好きな旦那様なのだが常に密着したがるし、腰とかお尻とか色んな所を触りまくる。他の者が居る前でもお構い無しでキスをしてきてと、とにかくシルヴァリスはスキンシップが激しい。
大好きな相手からどろどろに甘やかされ、溺愛されて喜ぶべきなのに、魔王の愛が重過ぎて理子の心と体がもたないのだ。
「で、理子はどうするの?」
携帯電話の向こうの香織から問われて、何処かへとびかけていた意識が戻る。
「何が?」
「何がって、バレンタインだよ。新婚ラブラブの旦那様にチョコはあげないの?」
「あ、そうだったね」
元居た世界と異世界とは暦がズレているため、もうすぐバレンタインだなんてすっかり忘れていた。
「もうすぐバレンタインだったね。旦那様にあげた方がいい、のかな?香織はどうするの?」
「ちょっ、新婚でしょ! あげた方がいいに決まっているでしょ!! 私はまーくんに手作りチョコとネクタイをあげる予定だよ」
信じられない! と叫ばれて、理子は思わずスマートフォンを耳から離した。
「手作りか……」
望めば何でも手に入る魔王様に渡すのなら、手作りの品は珍しくていいのかもしれない。
「ねぇ、連休日本に帰って来るならさ、一緒にチョコを作らない? 接待ゴルフでまーくん居ないし」
城内で作るのはシルヴァリスにバレてしまう。そう考えて、香織の申し出に理子は二つ返事で頷いた。
***
息抜きに付き合えと、シルヴァリスから誘われた理子は、前王妃の薔薇園へやって来た。
腰を抱いて密着してくるシルヴァリスは、息抜きと言いつつ宰相のキルビスに仕事を押し付けて来たに違いない。
昨日は、たった半日側に居なかっただけなのにキルビスに八つ当たりをしたらしいし、話しかけたら消されるんじゃないかってくらい苛苛しまくっていたらしく、「城から離れないでください」と、魔王の側近達から泣き付かれた理子は、内心溜め息を吐く。
(これって渡すチャンスじゃない)
予定では、香織の家から戻ってすぐに、作ったバレンタインチョコを渡すつもりだった。
しかし、魔国の自室へと転移した瞬間、待ち構えていたシルヴァリスに捕獲されてしまい、その後はいつも以上にねちっこくぐちゃぐちゃに抱き潰されてしまったのだ。
今朝は、側近達に泣き付かれて魔王の執務室へ行けずに、今までチョコレートを渡すタイミングを逃していた。
「リコ」
ガーデンベンチに座ったシルヴァリスは、慣れた仕草で理子の手を引いて自身の膝の上へ横抱きで座らせる。
初めて薔薇園を訪れた時は、シルヴァリスを膝枕するのでさえ恥ずかしかったのに、今では彼にくっつかれているのを当たり前のように受け入れていて、すっかりスキンシップに慣れてしまったと思う。
新婚生活について香織から問われて、普段の溺愛されっぷりを話したのだが、ちょっとどころか、かなり引かれていた気がする。
一見すると、冷徹な印象を与える美貌の魔王だからデレたイメージが湧かないからか。