くたびれOL、魔王様の抱き枕を拝命いたしました!?
理子が眠るベッドへ腰掛けた魔王は、左手を軽く握りゆっくり開く。
手のひらの中から、金銀赤青翠……色とりどりの、小指の先より小さな玉が出現する。
玉は魔王の手のひらの上を浮遊し、くるくる回転を始めた。
回転する玉を見詰めながら暫し思案した魔王は、玉の一つに触れる。
「リコ、我からの贈り物だ」
選んだ玉以外の玉は空気にほどけるように消え、魔王の手の中には一つの玉が残った。
「邪魔されず眠ることが、我の結界を破るほどの願いだったとはな。お前はやはり、面白い」
クツクツ笑いながら魔王は、理子の黒髪を一房掬うとそっと口付けを落とした。
***
肌触りの良いふかふかの毛布にくるまれて、理子は久しぶりに感じた心地よさに幸せな気持ちに浸っていた。
幸せな微睡みの中、誰かが傍にいて髪を優しく撫でてくれている。
半分以上夢の中に居た理子は、ありがとうの気持ちを込めて傍にいる誰かに向かって手を伸ばす。
誰かの大きい手のひらがそっと握り返してくれたのが嬉しくて、理子はへにゃりと微笑んだ。
「ん……」
仄かに花の香りが鼻腔を擽り、理子の意識が覚醒していく。
ゆっくり目蓋を開くと、視界に入ってきたのは、淡いピンク地に小花柄のマットレスカバーだった。
「えっ⁉」
自室のシングルベッドの上で、理子は半開きの目蓋を勢いよく開いた。
「あー寝ちゃったか……」
疲労と睡眠不足で、昨夜は帰宅後直ぐに着替える余裕も無く自室で眠っていたのだろうか。
やはり、魔方陣に吸い込まれて魔王の世界へ行く、という非科学的な出来事は夢だったのだ。
それとも、魔王の世界へ行ったが、寝ている間に自室へ戻ってこられたのかと、理子は首を傾げつつベッドから起き上がり風呂場へ向かう。
昨夜は、帰宅して化粧は落としていてもシャワーすら浴びていない。
今日が休日ならこのままベッドに潜ってゴロゴロしていたいところだったが、今日も仕事があるのだ。
頭からぬるめのシャワーを浴びれば段々と思考が覚めてくる。
やはり、昨夜の出来事は現実味に溢れていて、夢とは考えにくい。
銀髪赤目の綺麗な男性、魔王に触れられた顎と目蓋に感じた、彼の低い体温を覚えているもの。
顎に、目元に触れられた状況を思い出して、理子の顔に熱が集中する。
ベッドの上で、あんな綺麗な男性に触れられるとは。小動物扱いで彼に他意は無かったとしても、恥ずかし上に勘違いしてしまうじゃないか。
バスタオルで体を拭きながら、理子は魔王に触れられた箇所を撫でた。
「変なの……魔王様がトカゲじゃなくて綺麗なお兄さんだったなんて」
あの外見は反則だと思う。綺麗すぎてトキメキすら吹き飛んで、畏怖に似た感情を抱いた。
今夜も魔王は自分に話し掛けてくるのだろうか。
トカゲだとばかり想像していたから、今まで気安く会話が出来たのにこれからはどうしたらいいのか分からない。姿が見えない分、緊張する。
姿が見えてもあれだけ綺麗なら緊張してしまう。
下着を身に付けて、濡れた髪をドライヤーで乾かそうと髪をかき上げた時、理子は鏡に映った自分の顔に違和感を覚えた。
「あれ? これ何だろ?」
右耳の上部、軟骨の下に深紅の石がくっついていたのだ。
「ピアス? 耳ツボダイエットの石?」
生まれてからこれまでピアス穴を開けた記憶は無いし、耳坪ダイエットも興味はあるがやったことは無い。
確実に昨夜、意識がある間は無かったものだ。
指で触れば硬い石の感触で、指で取ろうとしてもピッタリくっついている。
指先に力を込めてみても痛みは無く、まるで生まれてからずっとくっついていたような、そんな感覚すらあった。
「これって、魔王様がやったのかな?」
これが魔王に施されたモノだったら、人体に危険はないのか。
首を傾げつつ、今夜にでも問えばいいか、と理子はドライヤーのスイッチを入れた。
手のひらの中から、金銀赤青翠……色とりどりの、小指の先より小さな玉が出現する。
玉は魔王の手のひらの上を浮遊し、くるくる回転を始めた。
回転する玉を見詰めながら暫し思案した魔王は、玉の一つに触れる。
「リコ、我からの贈り物だ」
選んだ玉以外の玉は空気にほどけるように消え、魔王の手の中には一つの玉が残った。
「邪魔されず眠ることが、我の結界を破るほどの願いだったとはな。お前はやはり、面白い」
クツクツ笑いながら魔王は、理子の黒髪を一房掬うとそっと口付けを落とした。
***
肌触りの良いふかふかの毛布にくるまれて、理子は久しぶりに感じた心地よさに幸せな気持ちに浸っていた。
幸せな微睡みの中、誰かが傍にいて髪を優しく撫でてくれている。
半分以上夢の中に居た理子は、ありがとうの気持ちを込めて傍にいる誰かに向かって手を伸ばす。
誰かの大きい手のひらがそっと握り返してくれたのが嬉しくて、理子はへにゃりと微笑んだ。
「ん……」
仄かに花の香りが鼻腔を擽り、理子の意識が覚醒していく。
ゆっくり目蓋を開くと、視界に入ってきたのは、淡いピンク地に小花柄のマットレスカバーだった。
「えっ⁉」
自室のシングルベッドの上で、理子は半開きの目蓋を勢いよく開いた。
「あー寝ちゃったか……」
疲労と睡眠不足で、昨夜は帰宅後直ぐに着替える余裕も無く自室で眠っていたのだろうか。
やはり、魔方陣に吸い込まれて魔王の世界へ行く、という非科学的な出来事は夢だったのだ。
それとも、魔王の世界へ行ったが、寝ている間に自室へ戻ってこられたのかと、理子は首を傾げつつベッドから起き上がり風呂場へ向かう。
昨夜は、帰宅して化粧は落としていてもシャワーすら浴びていない。
今日が休日ならこのままベッドに潜ってゴロゴロしていたいところだったが、今日も仕事があるのだ。
頭からぬるめのシャワーを浴びれば段々と思考が覚めてくる。
やはり、昨夜の出来事は現実味に溢れていて、夢とは考えにくい。
銀髪赤目の綺麗な男性、魔王に触れられた顎と目蓋に感じた、彼の低い体温を覚えているもの。
顎に、目元に触れられた状況を思い出して、理子の顔に熱が集中する。
ベッドの上で、あんな綺麗な男性に触れられるとは。小動物扱いで彼に他意は無かったとしても、恥ずかし上に勘違いしてしまうじゃないか。
バスタオルで体を拭きながら、理子は魔王に触れられた箇所を撫でた。
「変なの……魔王様がトカゲじゃなくて綺麗なお兄さんだったなんて」
あの外見は反則だと思う。綺麗すぎてトキメキすら吹き飛んで、畏怖に似た感情を抱いた。
今夜も魔王は自分に話し掛けてくるのだろうか。
トカゲだとばかり想像していたから、今まで気安く会話が出来たのにこれからはどうしたらいいのか分からない。姿が見えない分、緊張する。
姿が見えてもあれだけ綺麗なら緊張してしまう。
下着を身に付けて、濡れた髪をドライヤーで乾かそうと髪をかき上げた時、理子は鏡に映った自分の顔に違和感を覚えた。
「あれ? これ何だろ?」
右耳の上部、軟骨の下に深紅の石がくっついていたのだ。
「ピアス? 耳ツボダイエットの石?」
生まれてからこれまでピアス穴を開けた記憶は無いし、耳坪ダイエットも興味はあるがやったことは無い。
確実に昨夜、意識がある間は無かったものだ。
指で触れば硬い石の感触で、指で取ろうとしてもピッタリくっついている。
指先に力を込めてみても痛みは無く、まるで生まれてからずっとくっついていたような、そんな感覚すらあった。
「これって、魔王様がやったのかな?」
これが魔王に施されたモノだったら、人体に危険はないのか。
首を傾げつつ、今夜にでも問えばいいか、と理子はドライヤーのスイッチを入れた。