くたびれOL、魔王様の抱き枕を拝命いたしました!?
給湯室に立ちこめたドリップ珈琲の香り。
手が空いた時に、珈琲やお茶を飲める幸せに理子は頬を緩めた。
以前は、給湯室を利用する度に田島係長から嫌みを言われていたため、利用するのを我慢していたのだ。
あの時は感覚が麻痺していたとはいえ、自分は上司から不当な扱いを受けていたと今なら分かる。
「山田さん」
給湯室の入り口から声をかけられて、理子は珈琲入りのタンブラーを持って振り返った。
「伊東先輩、すいません。どきますね」
給湯室を利用したい女性社員の邪魔になっていたかと、理子は慌てて頭を下げた。
「いいって。山田さんに聞きたい事があってね」
二年先輩の女性社員、伊東先輩は周りを気にしながら給湯室の中へ入って来る。
普段は堂々としておりハッキリものを言う彼女の態度に、何か気に触ることをやってしまったのかと、理子は身構えてしまった。
「あのさ、山田さんって彼氏いる?」
「ええっ?」
完全に不意打ちだった伊東先輩からの問いに、理子は変な声を出してしまった。
「最近の山田さん、前とは違う感じになった気がするから。前はさ、固い感じだったけど最近は話し掛けやすくなったからね。皆、彼氏が出来たんじゃない? って言っているよ」
ぱちくり目を瞬かせてしまった理子は、先輩が何を言っているのか理解するのにたっぷり十数秒は要した。
固まる理子をよそに伊東先輩は更に続ける。
「最近、綺麗になったんじゃない? 髪の毛艶々だし。彼氏が出来たなら羨ましいわ」
ずいっと顔を近づける伊東先輩の迫力に、理子は思わず後ずさった。
マスカラをバッチリ塗って、アイシャドウでグラデーションをつけた伊東先輩の目は、目力が凄いのだ。
「ええっと、ずっと睡眠不足が続いていたし、お手入れを放置していたから肌がボロボロだったんですよ。最近は、ゆっくり寝ているから調子がいいだけで、残念ながら彼氏はいませんよ。色々あったから……」
残業続きの日々で以前の理子は、常に顔色は悪く肌はボロボロで髪にも艶はなかった。
寝不足で常にフラフラしていて、あの時に比べたらしっかり寝ているしストレスもほとんど無い。ストレスが軽減された今の方が、断然肌の状態は良く髪が艶々なのは当然だ。
自分でも今は生き生きしていて、パワーに溢れているのが分かる。
パワーに溢れていて艶々なのに、悲しいかな仲良くなった異性は魔王様だけ。
しかも異世界の魔王は人外で、理子の事を珍獣か抱き枕にしか見てないときた。
珍獣、もとい愛玩動物か抱き枕の関係だなんて恋人では無いし、とても人には言えない関係。
(あれ?)
高級なベッドでぐっすり眠れる、魔王は珍獣で暇潰しと抱き枕があるから寂しさを紛らわせる。ということは、魔王との関係はお互い都合が良い関係ということか。
「確かにあれは大変だったよね。嫌な事を思い出させてごめんね。じゃあ、今日の夜は暇?」
黙ってしまった理子に、伊東先輩は例の不倫問題の事で言葉に詰まっていると思ったらしい。
(今夜か。魔王様が私を召喚する前、日付が変わる前までなら特に用事は無いな)
「夜ですか? 特に用事は無いですけど」
理子の答えに伊東先輩は表情を和らげた。
「暇なら一緒にご飯食べに行かない?」
「ご飯?」
伊東先輩からの“お誘い”に理子は内心首を傾げる。
職場以外で関わることは無いような、連絡先すら知らない先輩後輩の間柄で、一緒に食事に行くほど彼女とは親しく無かったからだ。
手が空いた時に、珈琲やお茶を飲める幸せに理子は頬を緩めた。
以前は、給湯室を利用する度に田島係長から嫌みを言われていたため、利用するのを我慢していたのだ。
あの時は感覚が麻痺していたとはいえ、自分は上司から不当な扱いを受けていたと今なら分かる。
「山田さん」
給湯室の入り口から声をかけられて、理子は珈琲入りのタンブラーを持って振り返った。
「伊東先輩、すいません。どきますね」
給湯室を利用したい女性社員の邪魔になっていたかと、理子は慌てて頭を下げた。
「いいって。山田さんに聞きたい事があってね」
二年先輩の女性社員、伊東先輩は周りを気にしながら給湯室の中へ入って来る。
普段は堂々としておりハッキリものを言う彼女の態度に、何か気に触ることをやってしまったのかと、理子は身構えてしまった。
「あのさ、山田さんって彼氏いる?」
「ええっ?」
完全に不意打ちだった伊東先輩からの問いに、理子は変な声を出してしまった。
「最近の山田さん、前とは違う感じになった気がするから。前はさ、固い感じだったけど最近は話し掛けやすくなったからね。皆、彼氏が出来たんじゃない? って言っているよ」
ぱちくり目を瞬かせてしまった理子は、先輩が何を言っているのか理解するのにたっぷり十数秒は要した。
固まる理子をよそに伊東先輩は更に続ける。
「最近、綺麗になったんじゃない? 髪の毛艶々だし。彼氏が出来たなら羨ましいわ」
ずいっと顔を近づける伊東先輩の迫力に、理子は思わず後ずさった。
マスカラをバッチリ塗って、アイシャドウでグラデーションをつけた伊東先輩の目は、目力が凄いのだ。
「ええっと、ずっと睡眠不足が続いていたし、お手入れを放置していたから肌がボロボロだったんですよ。最近は、ゆっくり寝ているから調子がいいだけで、残念ながら彼氏はいませんよ。色々あったから……」
残業続きの日々で以前の理子は、常に顔色は悪く肌はボロボロで髪にも艶はなかった。
寝不足で常にフラフラしていて、あの時に比べたらしっかり寝ているしストレスもほとんど無い。ストレスが軽減された今の方が、断然肌の状態は良く髪が艶々なのは当然だ。
自分でも今は生き生きしていて、パワーに溢れているのが分かる。
パワーに溢れていて艶々なのに、悲しいかな仲良くなった異性は魔王様だけ。
しかも異世界の魔王は人外で、理子の事を珍獣か抱き枕にしか見てないときた。
珍獣、もとい愛玩動物か抱き枕の関係だなんて恋人では無いし、とても人には言えない関係。
(あれ?)
高級なベッドでぐっすり眠れる、魔王は珍獣で暇潰しと抱き枕があるから寂しさを紛らわせる。ということは、魔王との関係はお互い都合が良い関係ということか。
「確かにあれは大変だったよね。嫌な事を思い出させてごめんね。じゃあ、今日の夜は暇?」
黙ってしまった理子に、伊東先輩は例の不倫問題の事で言葉に詰まっていると思ったらしい。
(今夜か。魔王様が私を召喚する前、日付が変わる前までなら特に用事は無いな)
「夜ですか? 特に用事は無いですけど」
理子の答えに伊東先輩は表情を和らげた。
「暇なら一緒にご飯食べに行かない?」
「ご飯?」
伊東先輩からの“お誘い”に理子は内心首を傾げる。
職場以外で関わることは無いような、連絡先すら知らない先輩後輩の間柄で、一緒に食事に行くほど彼女とは親しく無かったからだ。