くたびれOL、魔王様の抱き枕を拝命いたしました!?
カランッ
若者向けのお洒落なカジュアル創作料理レストランの店内へ、山本さんに先導されて入る。
週末金曜日の夜ということもあり、フレンチカントリー風の店内は若者グループやカップルでほぼ満席となっていた。
煉瓦と白い漆喰の壁にはカントリー風の演出する小物や食器が飾られて、次は友人の香織と食べに来たいなと思う。
案内された先、間接照明が照らす壁際のテーブル席には既に男女が向かい合わせで座っていた。
「すみません、お待たせしました」
二人に向かって頭を下げる理子に、一つ後輩の田中君と、“夕食会”を計画した伊東先輩が「お疲れ様」と会釈を返した。
「みんな早目に着いただけだし、謝らなくてもいいわよ」
にこやかに笑う伊東先輩は、職場でのブラウスにスカート姿では無く、白のカットソーに黒色スカート、黄色カーディガンを肩に掛けて、目力を抑えた可愛らしいメイクのためにぱっと見は別人みたいに見えた。
普段はきつめな印象がある女性がふんわりした印象に変わるのは、ギャップ萌えというのか可愛らしく感じる。
(凄い気合いの入りようね……本当に田中君を落としたいんだ)
状態に合わせて化粧を変えて、自分を魅力的に見せるだなんてとても真似出来ない。
「山田さんはこっちね」
勧められるまま理子は伊東先輩の隣の席に、山本さんは向かいの席へ座った。
「はい、どうぞ」
大皿に盛られたサラダを伊東先輩は人数分小皿へ取り分ける。
「ありがとうございます」
先輩にやらせるとは気の利かない後輩みたいで、理子の気持ちはモヤモヤするが、手出しは出来ない。
食事会の間は伊東先輩が良い女アピールするために、事前打ち合わせで「取り分けは伊東先輩がやる」という事になっているのだ。
しかも、サラダの上に乗せられている生ハムが田中君だけ山盛りなのはあからさま過ぎて笑えない。
「……で、その店の夜限定パフェが旨かったんですよ」
「夜パフェかぁ私も行ってみたいなー」
主な会話は伊東先輩と田中君がして、理子と山本さんは邪魔にならない程度に相槌を打つ。
「じゃあ、この後一緒に行きましょうか?」
「えぇ~いいの?」
田中君からのお誘いに、待っていましたとばかりに伊東先輩の瞳が輝く。
夜パフェという、素敵なフレーズに理子も興味はあるのだが自分から「行きたい」と言う勇気は無かった。
「山田さんと山本さんはどうですか? 二次会に、夜パフェを食べに行きませんか?」
何も知らない田中君に話を振られて、どう断ればいいのかと理子は返答に困る。
一緒に行けば伊東先輩との関係が苦しくなる、だが、キッパリ断って角が立つのも苦しい。
「私は……」
「俺はパス。悪いけど甘いものは苦手なんだよ」
理子の言葉に被さる形で山本さんから断りの台詞が発せられる。
「それは残念ね。田中君、二人で行きましょうよぉ」
明るい伊東先輩の声には残念な響きが全く含まれておらず、山本さんは苦笑いを浮かべた。
店内の雰囲気は良く、パスタもピザもワインも美味しいのには、早くお開きになりたいと感じるのは田中君以外の者、理子と山本さんは伊藤先輩が書いたシナリオ通りの茶番を演じているからだろう。
「それじゃあ私と田中君はパフェを食べてくね」
「また来週からよろしくお願いしま~す」
「はい、お疲れ様です」
「お疲れ様です」
“食事会”を終え、理子達は店を出て二手に別れて行動することになった。
夜パフェを食べに行く、伊東先輩と田中君が並んで歩く姿は仲の良いカップルそのもの。
二人の後ろ姿が道行く人の間へ消えてから、理子と山本さんは顔を見合わせた。
若者向けのお洒落なカジュアル創作料理レストランの店内へ、山本さんに先導されて入る。
週末金曜日の夜ということもあり、フレンチカントリー風の店内は若者グループやカップルでほぼ満席となっていた。
煉瓦と白い漆喰の壁にはカントリー風の演出する小物や食器が飾られて、次は友人の香織と食べに来たいなと思う。
案内された先、間接照明が照らす壁際のテーブル席には既に男女が向かい合わせで座っていた。
「すみません、お待たせしました」
二人に向かって頭を下げる理子に、一つ後輩の田中君と、“夕食会”を計画した伊東先輩が「お疲れ様」と会釈を返した。
「みんな早目に着いただけだし、謝らなくてもいいわよ」
にこやかに笑う伊東先輩は、職場でのブラウスにスカート姿では無く、白のカットソーに黒色スカート、黄色カーディガンを肩に掛けて、目力を抑えた可愛らしいメイクのためにぱっと見は別人みたいに見えた。
普段はきつめな印象がある女性がふんわりした印象に変わるのは、ギャップ萌えというのか可愛らしく感じる。
(凄い気合いの入りようね……本当に田中君を落としたいんだ)
状態に合わせて化粧を変えて、自分を魅力的に見せるだなんてとても真似出来ない。
「山田さんはこっちね」
勧められるまま理子は伊東先輩の隣の席に、山本さんは向かいの席へ座った。
「はい、どうぞ」
大皿に盛られたサラダを伊東先輩は人数分小皿へ取り分ける。
「ありがとうございます」
先輩にやらせるとは気の利かない後輩みたいで、理子の気持ちはモヤモヤするが、手出しは出来ない。
食事会の間は伊東先輩が良い女アピールするために、事前打ち合わせで「取り分けは伊東先輩がやる」という事になっているのだ。
しかも、サラダの上に乗せられている生ハムが田中君だけ山盛りなのはあからさま過ぎて笑えない。
「……で、その店の夜限定パフェが旨かったんですよ」
「夜パフェかぁ私も行ってみたいなー」
主な会話は伊東先輩と田中君がして、理子と山本さんは邪魔にならない程度に相槌を打つ。
「じゃあ、この後一緒に行きましょうか?」
「えぇ~いいの?」
田中君からのお誘いに、待っていましたとばかりに伊東先輩の瞳が輝く。
夜パフェという、素敵なフレーズに理子も興味はあるのだが自分から「行きたい」と言う勇気は無かった。
「山田さんと山本さんはどうですか? 二次会に、夜パフェを食べに行きませんか?」
何も知らない田中君に話を振られて、どう断ればいいのかと理子は返答に困る。
一緒に行けば伊東先輩との関係が苦しくなる、だが、キッパリ断って角が立つのも苦しい。
「私は……」
「俺はパス。悪いけど甘いものは苦手なんだよ」
理子の言葉に被さる形で山本さんから断りの台詞が発せられる。
「それは残念ね。田中君、二人で行きましょうよぉ」
明るい伊東先輩の声には残念な響きが全く含まれておらず、山本さんは苦笑いを浮かべた。
店内の雰囲気は良く、パスタもピザもワインも美味しいのには、早くお開きになりたいと感じるのは田中君以外の者、理子と山本さんは伊藤先輩が書いたシナリオ通りの茶番を演じているからだろう。
「それじゃあ私と田中君はパフェを食べてくね」
「また来週からよろしくお願いしま~す」
「はい、お疲れ様です」
「お疲れ様です」
“食事会”を終え、理子達は店を出て二手に別れて行動することになった。
夜パフェを食べに行く、伊東先輩と田中君が並んで歩く姿は仲の良いカップルそのもの。
二人の後ろ姿が道行く人の間へ消えてから、理子と山本さんは顔を見合わせた。