くたびれOL、魔王様の抱き枕を拝命いたしました!?
隣室への扉を開けると、其処は広々とした浴室だった。
浴室といっても、理子の一人暮らしの部屋の浴室とは違い、広い部屋にバスタブと寝台が置かれている部屋。
バスタブは女子の憧れ、猫足のバスタブで理子のテンションは少しだけ上がった。
抱えていた腕を離したメイドの一人が、いつの間にか出した藤の籠から赤、ピンクの花弁を一掴み出して浴槽へ放る。
「わぁ……」
花弁は湯船に触れた途端、湯に溶けて浴室内は薔薇の香りが立ち込める。花弁は入浴剤なのかと、理子は感嘆の声を漏らした。
「えっ、ちょっと⁉」
感嘆の声は直ぐに困惑へと変わった。
メイドが、有無を言わせずに理子の服を脱がしにかかったのだ。
「じっ、自分で脱げます」
ブラウスの釦を外す細い指を押さえても、彼女は理子を無視して淡々と“脱がす”作業を続ける。
ブラウスを脱がされ、もう一人のメイドが理子の体を持ち上げてスカートを脱がし、幼子の様に下着も全て剥ぎ取られてしまった。
一糸纏わぬ姿となり、結っていた髪まで解かれた理子は、メイドに抱えられてバスタブへザブンッと入れられた。
あまりの勢いに、薔薇の香りがするピンク色のぬるま湯に沈められるんじゃないかと、理子は無表情で見下ろす彼女達から逃れるためバスタブの端へ縮こまる。
「きゃあ! 自分で洗えますって」
縮こまる理子の背中をパッツン前髪のメイドがごしごし洗う。
海綿スポンジの様なスポンジを使って、絶妙な力加減で痛くもない。
むしろ、気持ちいい。緊張が解れて、力が抜けた体は前髪を上げて額を出したメイドによって洗われていく。
体と髪が洗い終わった後は、二人がかりの全身マッサージを施され、短時間で理子の全身は驚く程ピカピカに磨き上げられたのだった。
「うう……色々見られた」
マッサージは気持ち良かったし、血行も良くなってお肌はツルツルになり有り難いし嬉しい。
でも、全身くまなく二人に洗われてしまい、下着はピラピラの紐パンツってどうなんだろう。
下着を着けるのでさえ手伝われるのは、この世界の上流階級では当たり前なのか。
庶民の理子には信じられない感覚で、体は癒されたが心は疲労困憊になった。
極め付きは、裾にフリルが付いた白のネグリジェである。
「あの、ヒラヒラの透け透けは、恥ずかしいので……違うのは無いんですか?」
着せられたネグリジェは肌触りから高級品だと分かるが、ネックラインが広くて肩が少し出るのは困るし、腕と太股から下が透けるデザインも困る。
前向きに捉えるならばセクシーなミニ丈じゃない分マシなのか。
「「魔王様がご用意されたお召し物でございます」」
無表情のメイド達の声が重なって答える。
項垂れる理子の手をパッツン前髪のメイドが取り、魔王の寝室へと促す。
「魔王様がお待ちでございます」
「さあ、此方へ」
寝室へ続く扉を開く前、無表情だと思っていたメイドさん達は理子の目を見て微かに微笑んだ。
「リコ」
メイド達を下がらせ、魔王は座っていた椅子から立ち上がった。
透け透けのネグリジェが恥ずかしくて、俯いていた理子の湿ったままの髪に触れる。
ふわりっ
あたたかい風が理子を包み込み、湿った髪を乾かしていく。
入浴剤に合わせたのか、乾いてサラサラになった髪からは薔薇の香りが仄かに香る。
「多少は、マシになったな」
視線だけで殺されそうな鋭さは微塵も感じさせない、何時もと変わらない魔王の表情に理子は胸を撫で下ろした。
汗臭かったとはいえ有無を言わせずに丸洗いとは、せめて還してくれれば自宅で入浴してきたのに。
「あのね魔王様、いきなり丸洗いはびっくりするから止めてね。いたっ」
髪に触れていた魔王の指が、髪を一房取ると軽く引っ張る。
「くくくっ、我の所有物に他の男の残り香がまとわりついているなど、赦せる訳なかろう」
口元は笑みを形どっているのに、赤い目は全く笑っておらず、理子は引っ張られている髪を魔王の指ごと押さえた。
「所有物……」
所有物って、いつから自分は魔王のモノになったのだろうか。
もしや、抱き枕扱いだから所有物なのか。それは人のカテゴリーの扱いではないのか。
浴室といっても、理子の一人暮らしの部屋の浴室とは違い、広い部屋にバスタブと寝台が置かれている部屋。
バスタブは女子の憧れ、猫足のバスタブで理子のテンションは少しだけ上がった。
抱えていた腕を離したメイドの一人が、いつの間にか出した藤の籠から赤、ピンクの花弁を一掴み出して浴槽へ放る。
「わぁ……」
花弁は湯船に触れた途端、湯に溶けて浴室内は薔薇の香りが立ち込める。花弁は入浴剤なのかと、理子は感嘆の声を漏らした。
「えっ、ちょっと⁉」
感嘆の声は直ぐに困惑へと変わった。
メイドが、有無を言わせずに理子の服を脱がしにかかったのだ。
「じっ、自分で脱げます」
ブラウスの釦を外す細い指を押さえても、彼女は理子を無視して淡々と“脱がす”作業を続ける。
ブラウスを脱がされ、もう一人のメイドが理子の体を持ち上げてスカートを脱がし、幼子の様に下着も全て剥ぎ取られてしまった。
一糸纏わぬ姿となり、結っていた髪まで解かれた理子は、メイドに抱えられてバスタブへザブンッと入れられた。
あまりの勢いに、薔薇の香りがするピンク色のぬるま湯に沈められるんじゃないかと、理子は無表情で見下ろす彼女達から逃れるためバスタブの端へ縮こまる。
「きゃあ! 自分で洗えますって」
縮こまる理子の背中をパッツン前髪のメイドがごしごし洗う。
海綿スポンジの様なスポンジを使って、絶妙な力加減で痛くもない。
むしろ、気持ちいい。緊張が解れて、力が抜けた体は前髪を上げて額を出したメイドによって洗われていく。
体と髪が洗い終わった後は、二人がかりの全身マッサージを施され、短時間で理子の全身は驚く程ピカピカに磨き上げられたのだった。
「うう……色々見られた」
マッサージは気持ち良かったし、血行も良くなってお肌はツルツルになり有り難いし嬉しい。
でも、全身くまなく二人に洗われてしまい、下着はピラピラの紐パンツってどうなんだろう。
下着を着けるのでさえ手伝われるのは、この世界の上流階級では当たり前なのか。
庶民の理子には信じられない感覚で、体は癒されたが心は疲労困憊になった。
極め付きは、裾にフリルが付いた白のネグリジェである。
「あの、ヒラヒラの透け透けは、恥ずかしいので……違うのは無いんですか?」
着せられたネグリジェは肌触りから高級品だと分かるが、ネックラインが広くて肩が少し出るのは困るし、腕と太股から下が透けるデザインも困る。
前向きに捉えるならばセクシーなミニ丈じゃない分マシなのか。
「「魔王様がご用意されたお召し物でございます」」
無表情のメイド達の声が重なって答える。
項垂れる理子の手をパッツン前髪のメイドが取り、魔王の寝室へと促す。
「魔王様がお待ちでございます」
「さあ、此方へ」
寝室へ続く扉を開く前、無表情だと思っていたメイドさん達は理子の目を見て微かに微笑んだ。
「リコ」
メイド達を下がらせ、魔王は座っていた椅子から立ち上がった。
透け透けのネグリジェが恥ずかしくて、俯いていた理子の湿ったままの髪に触れる。
ふわりっ
あたたかい風が理子を包み込み、湿った髪を乾かしていく。
入浴剤に合わせたのか、乾いてサラサラになった髪からは薔薇の香りが仄かに香る。
「多少は、マシになったな」
視線だけで殺されそうな鋭さは微塵も感じさせない、何時もと変わらない魔王の表情に理子は胸を撫で下ろした。
汗臭かったとはいえ有無を言わせずに丸洗いとは、せめて還してくれれば自宅で入浴してきたのに。
「あのね魔王様、いきなり丸洗いはびっくりするから止めてね。いたっ」
髪に触れていた魔王の指が、髪を一房取ると軽く引っ張る。
「くくくっ、我の所有物に他の男の残り香がまとわりついているなど、赦せる訳なかろう」
口元は笑みを形どっているのに、赤い目は全く笑っておらず、理子は引っ張られている髪を魔王の指ごと押さえた。
「所有物……」
所有物って、いつから自分は魔王のモノになったのだろうか。
もしや、抱き枕扱いだから所有物なのか。それは人のカテゴリーの扱いではないのか。