くたびれOL、魔王様の抱き枕を拝命いたしました!?
ざわり、ざわり、心臓がざわめく。
ずっと抱き枕の扱いをされていたし、この信じられないくらい綺麗な魔王が理子を一人の女として見てないのは分かっていた。
まして彼は人外だ。
人とは感覚が違うのも分かっていた、それなのに。
「所有物って私の事ですか?」
固い声で睨み付けても、魔王は形の良い眉ひとつ動かさない。
「お前は我のモノだ」
聞きようによっては恋愛感情の独占発言に聞こえる彼の台詞。
しかし、理子は彼の抱く感情は恋愛親愛とは違うと分かる。
魔王の言う「モノ」とは、所有物としての「物」の事で、一個人としての「者」とは違う意味を持つくらい、鈍い理子でも理解出来た。
悲しいとか寂しいとか、お互い気を許した気安い関係だと思っていたのに、実は自分だけが自惚れて勘違いしていただけだったと分かり……
ただただ、ショックだった。
説明の付く感情と理由が分からない複雑な感情の波よりも強く、沸々と心の億底から沸き上がってくるのは、怒り。
「私はモノじゃない」
言い放ち理子は髪に触れている魔王の指を払い除ける。
「何だと?」
指を払い除けられて苛立ったのか、魔王の眉間に皺が寄った。
「私は人でモノじゃない。魔王様が私の交友関係に口出す権利は無いし、今日は職場の人達とご飯を食べに行っただけなのに何なんですか!」
魔王の言う男の残り香とは、手を繋いで歩いた山本さんの事だろうか。
山田さんとはある意味仲間だし、今後仲良くできたらいいなと思っている優しくて頼りになる先輩だ。
色欲だなんて、いくらなんでも彼に失礼で腹が立つ。
「……我は異界に住まうリコの生活を縛る気は、今は無い。だが、色欲を持つ男がリコに触れるのは気に食わん。次、残り香を移されて我の傍へ来たらお前と言えども赦せぬ」
苛立ちを抑えているのか魔王の顔から表情が消える。
無表情の魔王は凄く恐く体が震え出す。
でも、魔王との今後の関係を考えると圧力に負けていられない。
「お、男の人に触れられちゃ駄目だなんて、無理でしょ。もし、私に恋人が出来たら魔王様に消されちゃうの?」
「恋人、だと?」
ピシッと何かが割れる音がする。
部屋の空気が張り詰めたものに変わり、体感温度が一気に下がっていく。
「う、私だって、今、気になる人くらいいるし、いつかは恋人ができて結婚して子どもを生みたいもの。育児と仕事を両立して暮らすのが夢だもの」
無表情のままでいる魔王の赤い目が、墨を垂らしたように暗い色に染まっていく。
赤黒く変化した瞳にじっと見下ろされる、理子の体に針で刺されたような鋭い痛いが走った。
「つっ、魔王様」
冷笑を浮かべる魔王から放たれる、冷気を感じ取った理子は堪らず一歩後退った。
「お前に手を出す男がいたら……男は即殺してやる。お前は逃げられぬよう、鎖で繋いで檻にでも入れてやろうか」
愉しそうに口元を歪める魔王様は恐ろしく、愉しそうにしている顔は魅入ってしまいそうなくらいとんでもなく綺麗で、理子の脳内は限界値を突破した。
「魔王様の鬼畜! 変態! 縛らないって言ったのに、監禁するとか束縛じゃない! 魔王様なんか嫌い‼」
バリンッ!
理子の叫びと共に、青白い光を灯していた燭台が弾け飛ぶ。
室内の空気が渦を巻きだすが、タガが外れてしまった感情の波は止まらない。
「男の人の残り香が嫌なら私を喚ばなきゃよかったのにっ! 抱き枕なんかしなきゃいいのに! なんでっなんでっ!」
どくんっ!
叫びに呼応するように、心臓が大きく脈打った。
ずっと抱き枕の扱いをされていたし、この信じられないくらい綺麗な魔王が理子を一人の女として見てないのは分かっていた。
まして彼は人外だ。
人とは感覚が違うのも分かっていた、それなのに。
「所有物って私の事ですか?」
固い声で睨み付けても、魔王は形の良い眉ひとつ動かさない。
「お前は我のモノだ」
聞きようによっては恋愛感情の独占発言に聞こえる彼の台詞。
しかし、理子は彼の抱く感情は恋愛親愛とは違うと分かる。
魔王の言う「モノ」とは、所有物としての「物」の事で、一個人としての「者」とは違う意味を持つくらい、鈍い理子でも理解出来た。
悲しいとか寂しいとか、お互い気を許した気安い関係だと思っていたのに、実は自分だけが自惚れて勘違いしていただけだったと分かり……
ただただ、ショックだった。
説明の付く感情と理由が分からない複雑な感情の波よりも強く、沸々と心の億底から沸き上がってくるのは、怒り。
「私はモノじゃない」
言い放ち理子は髪に触れている魔王の指を払い除ける。
「何だと?」
指を払い除けられて苛立ったのか、魔王の眉間に皺が寄った。
「私は人でモノじゃない。魔王様が私の交友関係に口出す権利は無いし、今日は職場の人達とご飯を食べに行っただけなのに何なんですか!」
魔王の言う男の残り香とは、手を繋いで歩いた山本さんの事だろうか。
山田さんとはある意味仲間だし、今後仲良くできたらいいなと思っている優しくて頼りになる先輩だ。
色欲だなんて、いくらなんでも彼に失礼で腹が立つ。
「……我は異界に住まうリコの生活を縛る気は、今は無い。だが、色欲を持つ男がリコに触れるのは気に食わん。次、残り香を移されて我の傍へ来たらお前と言えども赦せぬ」
苛立ちを抑えているのか魔王の顔から表情が消える。
無表情の魔王は凄く恐く体が震え出す。
でも、魔王との今後の関係を考えると圧力に負けていられない。
「お、男の人に触れられちゃ駄目だなんて、無理でしょ。もし、私に恋人が出来たら魔王様に消されちゃうの?」
「恋人、だと?」
ピシッと何かが割れる音がする。
部屋の空気が張り詰めたものに変わり、体感温度が一気に下がっていく。
「う、私だって、今、気になる人くらいいるし、いつかは恋人ができて結婚して子どもを生みたいもの。育児と仕事を両立して暮らすのが夢だもの」
無表情のままでいる魔王の赤い目が、墨を垂らしたように暗い色に染まっていく。
赤黒く変化した瞳にじっと見下ろされる、理子の体に針で刺されたような鋭い痛いが走った。
「つっ、魔王様」
冷笑を浮かべる魔王から放たれる、冷気を感じ取った理子は堪らず一歩後退った。
「お前に手を出す男がいたら……男は即殺してやる。お前は逃げられぬよう、鎖で繋いで檻にでも入れてやろうか」
愉しそうに口元を歪める魔王様は恐ろしく、愉しそうにしている顔は魅入ってしまいそうなくらいとんでもなく綺麗で、理子の脳内は限界値を突破した。
「魔王様の鬼畜! 変態! 縛らないって言ったのに、監禁するとか束縛じゃない! 魔王様なんか嫌い‼」
バリンッ!
理子の叫びと共に、青白い光を灯していた燭台が弾け飛ぶ。
室内の空気が渦を巻きだすが、タガが外れてしまった感情の波は止まらない。
「男の人の残り香が嫌なら私を喚ばなきゃよかったのにっ! 抱き枕なんかしなきゃいいのに! なんでっなんでっ!」
どくんっ!
叫びに呼応するように、心臓が大きく脈打った。