くたびれOL、魔王様の抱き枕を拝命いたしました!?
待ちに待った土曜日。
初夏の雲一つ無い、澄んだ青空が広がった絶好の旅行日和。
香織が当選した温泉旅行のツアーは、有名旅行会社が企画した避暑地を巡るバスツアーだった。
都会の雑踏と暑さを忘れさせてくれる自然豊かな名所でマイナスイオンを浴び、名産食材を使った美味しい昼食にワインの試飲をして、久々に都会から離れてのんびりと観光が出来た理子は大満足していた。
休憩と買い物を兼ねて立ち寄った道の駅で売店から外へ出た理子と香織は、ベンチに座ってソフトクリームを食べているカップルを見て足を止めた。
「まーくんと来たかった?」
同じバスツアーに参加しているカップルを見ていて、時折、香織が寂しそうにしているのは気付いていた。
急な仕事が入らなければ婚約者と一緒だったのに、と香織が寂しく思うのは当然だとは分かっている。
「ぶっちゃければまーくんと来たかったけど、理子と二人でバスツアーって初めてで楽しいよ」
正直に言う香織は、苦笑いを浮かべた。
(香織の気持ちも分かるかな。私も、ちょっと羨ましいもの)
好きな人と一緒に出掛けて、美味しいものを食べてみたいのは当然だ。
仲良しな恋人達を見ると羨ましいと素直に思う。
「夜に飲むための地酒でも買ってくか!」
黙ってしまった理子の腕を掴んだ香織は、出てきたばかりの売店へ引き返した。
夕方になり、バスツアーのメインである本日の宿へと到着した。
大正時代に建てられた、貿易商の別荘という洋館を改装したホテルは、和と洋が調和したとてもモダンな建物だった。
外観はヨーロッパのお屋敷そのものだが、内部はアンティークと現代技術の機器が程よく纏まっており、ツアー参加者からは感嘆の声が漏れる。
宿泊する部屋の鍵を解除し、扉を開けて香織は「わぁー」と声を上げた。
「可愛いー! お嬢様のお部屋みたいね!」
白を基調とした家具、淡いピンクに小花柄のカーテンという、いかにも若い女の子の部屋といった内装に、普段はクールな香織のテンションは上がっていく。
「ベッドも天蓋付きで広いし可愛いね」
二人並んで余裕で寝られるキングサイズのベッドは天蓋付きで、ベッドカバーはピンク地のフリル付き。
旅行鞄を放ってはしゃぐ香織は、部屋の扉を開けて中を覗いていく。
「理子! バスタブは憧れの猫足だよ! 今夜は泡風呂にしようよ」
きゃあきゃあ喜ぶ香織をよそに、理子はフゥと息を吐いた。
内装も部屋の広さも雰囲気も違うのに、内装が似ている気がするのだ。
「ちょっと似ているな……あっちの方が広いけど」
ほぼ毎日眠っている魔王の寝室と、この乙女チックな部屋が似ている気がするだなんて、妙な話だ。
洋館の部屋は基本的に造りが似ているのか、と理子は首を傾げた。
ホテルでの夕食は、食堂で和洋織り混ぜたフルコース料理を食べた。
フルコースと言っても、堅苦しいものではなくお箸やビールも用意されており、ツアー参加者達は和気あいあいと食べていた。
夕飯を済ませて本日の行程は終了となり、後は自由行動だ。
宿泊客は各々の部屋へと戻り、道の駅で購入した地酒とワイン、つまみを丸テーブルに広げて部屋飲みを開始した。
「推理アニメとかサスペンスドラマだとさ、こういう洋館での夕飯の後に誰かが殺されるんだよね」
ガタッ
香織が言った直後、吹いた風によって窓ガラスが揺れる。
「こわっ! やめてよ」
歴史ある洋館、静かな夜半、確かに事件が起こるには絶好のシチュエーションに、理子の背筋は寒くなった。
初夏の雲一つ無い、澄んだ青空が広がった絶好の旅行日和。
香織が当選した温泉旅行のツアーは、有名旅行会社が企画した避暑地を巡るバスツアーだった。
都会の雑踏と暑さを忘れさせてくれる自然豊かな名所でマイナスイオンを浴び、名産食材を使った美味しい昼食にワインの試飲をして、久々に都会から離れてのんびりと観光が出来た理子は大満足していた。
休憩と買い物を兼ねて立ち寄った道の駅で売店から外へ出た理子と香織は、ベンチに座ってソフトクリームを食べているカップルを見て足を止めた。
「まーくんと来たかった?」
同じバスツアーに参加しているカップルを見ていて、時折、香織が寂しそうにしているのは気付いていた。
急な仕事が入らなければ婚約者と一緒だったのに、と香織が寂しく思うのは当然だとは分かっている。
「ぶっちゃければまーくんと来たかったけど、理子と二人でバスツアーって初めてで楽しいよ」
正直に言う香織は、苦笑いを浮かべた。
(香織の気持ちも分かるかな。私も、ちょっと羨ましいもの)
好きな人と一緒に出掛けて、美味しいものを食べてみたいのは当然だ。
仲良しな恋人達を見ると羨ましいと素直に思う。
「夜に飲むための地酒でも買ってくか!」
黙ってしまった理子の腕を掴んだ香織は、出てきたばかりの売店へ引き返した。
夕方になり、バスツアーのメインである本日の宿へと到着した。
大正時代に建てられた、貿易商の別荘という洋館を改装したホテルは、和と洋が調和したとてもモダンな建物だった。
外観はヨーロッパのお屋敷そのものだが、内部はアンティークと現代技術の機器が程よく纏まっており、ツアー参加者からは感嘆の声が漏れる。
宿泊する部屋の鍵を解除し、扉を開けて香織は「わぁー」と声を上げた。
「可愛いー! お嬢様のお部屋みたいね!」
白を基調とした家具、淡いピンクに小花柄のカーテンという、いかにも若い女の子の部屋といった内装に、普段はクールな香織のテンションは上がっていく。
「ベッドも天蓋付きで広いし可愛いね」
二人並んで余裕で寝られるキングサイズのベッドは天蓋付きで、ベッドカバーはピンク地のフリル付き。
旅行鞄を放ってはしゃぐ香織は、部屋の扉を開けて中を覗いていく。
「理子! バスタブは憧れの猫足だよ! 今夜は泡風呂にしようよ」
きゃあきゃあ喜ぶ香織をよそに、理子はフゥと息を吐いた。
内装も部屋の広さも雰囲気も違うのに、内装が似ている気がするのだ。
「ちょっと似ているな……あっちの方が広いけど」
ほぼ毎日眠っている魔王の寝室と、この乙女チックな部屋が似ている気がするだなんて、妙な話だ。
洋館の部屋は基本的に造りが似ているのか、と理子は首を傾げた。
ホテルでの夕食は、食堂で和洋織り混ぜたフルコース料理を食べた。
フルコースと言っても、堅苦しいものではなくお箸やビールも用意されており、ツアー参加者達は和気あいあいと食べていた。
夕飯を済ませて本日の行程は終了となり、後は自由行動だ。
宿泊客は各々の部屋へと戻り、道の駅で購入した地酒とワイン、つまみを丸テーブルに広げて部屋飲みを開始した。
「推理アニメとかサスペンスドラマだとさ、こういう洋館での夕飯の後に誰かが殺されるんだよね」
ガタッ
香織が言った直後、吹いた風によって窓ガラスが揺れる。
「こわっ! やめてよ」
歴史ある洋館、静かな夜半、確かに事件が起こるには絶好のシチュエーションに、理子の背筋は寒くなった。