くたびれOL、魔王様の抱き枕を拝命いたしました!?
抱えていたタンスを下ろし、壁の傷を確認する。
「穴が開いちゃった……これはマズイかな」
理子の視線の先には床上三十cmほどの高さの壁に、タンスの角と同じ形に空いた穴があった。
穴を確認するために、屈んだ理子が履いている短パンのポケットから赤い球体が転がり落ちる。
「あっ」
手を伸ばして拾う間もなかった。ポケットから落ちた赤い球体は、吸い込まれる様に壁の穴へと吸い込まれていったのだ。
穴に落ちた球体を取り出そうにも、十五cm程の穴に手は突っ込めない。穴の先は真っ暗で何も見えない。というか、壁の中は断熱材とか入って無いのかと首を傾げるくらい、空洞となっていた。
「ああーこれは取れないや。敷金礼金で直るかな? 修繕費かかったら嫌だな」
退去の時を考えると頭が痛々しい。肩を落とした理子は穴が見えないよう、タンスを設置しようと壁を見た。
「えっ?」
穴の中から淡い赤い光が発せられ、穴の周りの壁が金色の文字で覆われたのだ。
何だろうこれは、と困惑しつつ数回目を瞬かせる。
目を瞬かせた一瞬のうちに、赤い光も金色の文字も幻のように消えた。
「気のせい、だった?」
二日酔いのせいで変なものが見えたのかもしれない。
疲れているのかなと首を傾げつつ、理子は作業を再開させた。
模様替えを終え、上機嫌で化粧をして街へ買い物に出掛けることにした。
これで安眠出来ると思えば足取りも軽くなる。
お洒落な服屋のショーウィンドウには初夏の色合いの服が飾られていて、服を買わなくとも見ているだけで楽しい。
仕事用のブラウスと今年流行のワンピースを購入して、オマケにポーチまで貰えて理子は笑顔になった。
可愛いと見ていたワンピースを店員に勧められるまま試着して、煽てられて買ってしまったせいで懐は寂しくなったが、あと数日で給料日だ。
ご飯は非常食のカップラーメンかレトルト食品でいいかと、帰り道にあるスーパーに寄り、半額に割り引かれた弁当を買い家路についた頃にはすっかり辺りは真っ暗になっていた。
自宅マンションに着いて、ふと一階角部屋の窓を見れば真っ暗なまま。隣室の鈴木君はまだ帰って来ていないようだ。
(休日だしデートかな? リア充っていいな)
昼間、盛りまくり疲れ果てて夜は大人しく寝てくれればいい。
もしも盛っても、昼間、動かした家具の防音効果をチェック出来る、気分が前向きになっていた理子は足取りも軽く帰宅した。
頬に感じる生暖かい風が気持ち悪くて、理子は閉じていた目蓋を開いた。
いつの間に外へ移動したのか、クリーム色をした靄の中に一人で立っていたのだ。
『おやおや、次の持ち主はあんたになったのかい』
靄で覆われた空間に、ひび割れた低音の声が響く。
声の感じから女性の声。若いようにも老婆のようにも聞こえる声に、理子は不安を感じて身構えた。
「誰?」
『……今度こそ、使える娘だといいのだけど』
声の主は問いには応えず、舐めるような視線を理子に送る。
姿は現さないのに、ねっとりと絡み付く嫌な視線を送られて、理子は両腕で自分の体を抱き締めた。
「穴が開いちゃった……これはマズイかな」
理子の視線の先には床上三十cmほどの高さの壁に、タンスの角と同じ形に空いた穴があった。
穴を確認するために、屈んだ理子が履いている短パンのポケットから赤い球体が転がり落ちる。
「あっ」
手を伸ばして拾う間もなかった。ポケットから落ちた赤い球体は、吸い込まれる様に壁の穴へと吸い込まれていったのだ。
穴に落ちた球体を取り出そうにも、十五cm程の穴に手は突っ込めない。穴の先は真っ暗で何も見えない。というか、壁の中は断熱材とか入って無いのかと首を傾げるくらい、空洞となっていた。
「ああーこれは取れないや。敷金礼金で直るかな? 修繕費かかったら嫌だな」
退去の時を考えると頭が痛々しい。肩を落とした理子は穴が見えないよう、タンスを設置しようと壁を見た。
「えっ?」
穴の中から淡い赤い光が発せられ、穴の周りの壁が金色の文字で覆われたのだ。
何だろうこれは、と困惑しつつ数回目を瞬かせる。
目を瞬かせた一瞬のうちに、赤い光も金色の文字も幻のように消えた。
「気のせい、だった?」
二日酔いのせいで変なものが見えたのかもしれない。
疲れているのかなと首を傾げつつ、理子は作業を再開させた。
模様替えを終え、上機嫌で化粧をして街へ買い物に出掛けることにした。
これで安眠出来ると思えば足取りも軽くなる。
お洒落な服屋のショーウィンドウには初夏の色合いの服が飾られていて、服を買わなくとも見ているだけで楽しい。
仕事用のブラウスと今年流行のワンピースを購入して、オマケにポーチまで貰えて理子は笑顔になった。
可愛いと見ていたワンピースを店員に勧められるまま試着して、煽てられて買ってしまったせいで懐は寂しくなったが、あと数日で給料日だ。
ご飯は非常食のカップラーメンかレトルト食品でいいかと、帰り道にあるスーパーに寄り、半額に割り引かれた弁当を買い家路についた頃にはすっかり辺りは真っ暗になっていた。
自宅マンションに着いて、ふと一階角部屋の窓を見れば真っ暗なまま。隣室の鈴木君はまだ帰って来ていないようだ。
(休日だしデートかな? リア充っていいな)
昼間、盛りまくり疲れ果てて夜は大人しく寝てくれればいい。
もしも盛っても、昼間、動かした家具の防音効果をチェック出来る、気分が前向きになっていた理子は足取りも軽く帰宅した。
頬に感じる生暖かい風が気持ち悪くて、理子は閉じていた目蓋を開いた。
いつの間に外へ移動したのか、クリーム色をした靄の中に一人で立っていたのだ。
『おやおや、次の持ち主はあんたになったのかい』
靄で覆われた空間に、ひび割れた低音の声が響く。
声の感じから女性の声。若いようにも老婆のようにも聞こえる声に、理子は不安を感じて身構えた。
「誰?」
『……今度こそ、使える娘だといいのだけど』
声の主は問いには応えず、舐めるような視線を理子に送る。
姿は現さないのに、ねっとりと絡み付く嫌な視線を送られて、理子は両腕で自分の体を抱き締めた。