くたびれOL、魔王様の抱き枕を拝命いたしました!?
「っ!」
ぱちりっ、閉じていた瞼を開けば其処は自分の部屋で理子はベッドに横たわっていた。
背中と額は汗でぐっしょり濡れていおり、手の甲で額の汗を拭う。
奇妙な、そして怖い夢だった。
久々にヒールの高い靴を履いていっぱい歩いたせいか、足が痛くて横になっているうちにそのまま寝てしまったようだ。
このまま二度寝をしたいところだが化粧を落とさなければ、理子はのろのろとベッドから起きてシャワーを浴びるために浴室へ向かった。
寝汗を書いて火照った体に少し冷たいシャワーは心地良くて、一気に目が覚めた。
バスタオルで髪を拭きながら冷蔵庫から冷えた麦茶を出して、コップに注いで部屋へ戻る。
ベッドに置いたままのスマートフォンが通知の光を点滅させていて、その光を見た理子は部屋の異変に気付いた。
(え? 暗い?)
天井照明が室内を明るく照らしているのに、何故か暗く感じるのだ。
不思議に思いつつ、理子は枕元に置いていたスマートフォンを手に取る。
時間は二十三時四十五分。
周囲を見渡し、異変は無いことを確認して息を吐いた。
このまま眠る気分にはなれず、ベッドから出る。
深夜番組でも見ようかと、テレビのリモコンに手を伸ばして指先がリモコンに触れた瞬間、くぐもったうめき声のような声が聞こえ、理子は伸ばした手を引っ込めた。
(はぁ、また盛っているのね。防音対策は失敗だったか)
溜め息混じりに鈴木君の部屋と繋がっている壁を眺めていると、その声がうめき声ではなく女性の喘ぎ声のように聞こえて理子は立ち上がった。
声は壁から、どうやらそれはある一か所から聞こえてくるようだ。
「やっぱりここからか」
耳を澄まさなくても分かる。
女性の喘ぎ声は、穴を開けてしまったタンスの裏から聞こえていた。
激しいプレイでもしているのか、女性の喘ぎ声は絶え間なく聞こえてくる。
少しは自重しろよと苛立った気持ちで、穴の前に設置したタンスを殴ろうかと拳を握りしめた。
「いやぁああ!」
急に喘ぎ声が途切れ、その数秒後に悲鳴に近い叫び声が聞こえた。
叫び声の後は静かになった隣室に、理子はぎょっとしながら壁の穴を見詰めた。
「何なの……?」
もしや、鈴木君は彼女に暴力を振るう暴力男だったのか。
それとも、情事の最中に感情が高まると、相手を痛め付ける性癖の持ち主がいるとは聞いたことはある。
大事な彼女を痛め付ける性癖は理解できないが、お互いの同意さえあれば許されるのかもしれない。
他人のお付き合いに文句を言うつもりはない。とはいえ、バイオレンスな物音はこちらの心臓に悪いし気分も悪い。
この壁の穴は早々に塞いでしまおう。そうと決めたら早い方がいいに決まっている。
テーブルの上のタブレットを取り、防音シートと穴の修理見積りの検索をかけた。
翌日、理子は電車で二駅先のホームセンターへ開店と同時に店へ入り、防音シートを購入した。
ネットで同じように壁に穴を開けた人の体験談を調べると、管理会社に連絡して穴を修理してもらうのは早くても二週間はかかるとあった。
早くて二週間先なんて時間がかかりすぎる。毎夜毎夜、隣室からのDVプレイを聞かされるのは、疲れ切った心が耐えられない。
防音シートを三重に貼って、ベタベタになった壁を眺めた理子はやりきった達成感に満ち溢れて、高笑いしたくなるのを堪えつつにんまりと笑った。
ぱちりっ、閉じていた瞼を開けば其処は自分の部屋で理子はベッドに横たわっていた。
背中と額は汗でぐっしょり濡れていおり、手の甲で額の汗を拭う。
奇妙な、そして怖い夢だった。
久々にヒールの高い靴を履いていっぱい歩いたせいか、足が痛くて横になっているうちにそのまま寝てしまったようだ。
このまま二度寝をしたいところだが化粧を落とさなければ、理子はのろのろとベッドから起きてシャワーを浴びるために浴室へ向かった。
寝汗を書いて火照った体に少し冷たいシャワーは心地良くて、一気に目が覚めた。
バスタオルで髪を拭きながら冷蔵庫から冷えた麦茶を出して、コップに注いで部屋へ戻る。
ベッドに置いたままのスマートフォンが通知の光を点滅させていて、その光を見た理子は部屋の異変に気付いた。
(え? 暗い?)
天井照明が室内を明るく照らしているのに、何故か暗く感じるのだ。
不思議に思いつつ、理子は枕元に置いていたスマートフォンを手に取る。
時間は二十三時四十五分。
周囲を見渡し、異変は無いことを確認して息を吐いた。
このまま眠る気分にはなれず、ベッドから出る。
深夜番組でも見ようかと、テレビのリモコンに手を伸ばして指先がリモコンに触れた瞬間、くぐもったうめき声のような声が聞こえ、理子は伸ばした手を引っ込めた。
(はぁ、また盛っているのね。防音対策は失敗だったか)
溜め息混じりに鈴木君の部屋と繋がっている壁を眺めていると、その声がうめき声ではなく女性の喘ぎ声のように聞こえて理子は立ち上がった。
声は壁から、どうやらそれはある一か所から聞こえてくるようだ。
「やっぱりここからか」
耳を澄まさなくても分かる。
女性の喘ぎ声は、穴を開けてしまったタンスの裏から聞こえていた。
激しいプレイでもしているのか、女性の喘ぎ声は絶え間なく聞こえてくる。
少しは自重しろよと苛立った気持ちで、穴の前に設置したタンスを殴ろうかと拳を握りしめた。
「いやぁああ!」
急に喘ぎ声が途切れ、その数秒後に悲鳴に近い叫び声が聞こえた。
叫び声の後は静かになった隣室に、理子はぎょっとしながら壁の穴を見詰めた。
「何なの……?」
もしや、鈴木君は彼女に暴力を振るう暴力男だったのか。
それとも、情事の最中に感情が高まると、相手を痛め付ける性癖の持ち主がいるとは聞いたことはある。
大事な彼女を痛め付ける性癖は理解できないが、お互いの同意さえあれば許されるのかもしれない。
他人のお付き合いに文句を言うつもりはない。とはいえ、バイオレンスな物音はこちらの心臓に悪いし気分も悪い。
この壁の穴は早々に塞いでしまおう。そうと決めたら早い方がいいに決まっている。
テーブルの上のタブレットを取り、防音シートと穴の修理見積りの検索をかけた。
翌日、理子は電車で二駅先のホームセンターへ開店と同時に店へ入り、防音シートを購入した。
ネットで同じように壁に穴を開けた人の体験談を調べると、管理会社に連絡して穴を修理してもらうのは早くても二週間はかかるとあった。
早くて二週間先なんて時間がかかりすぎる。毎夜毎夜、隣室からのDVプレイを聞かされるのは、疲れ切った心が耐えられない。
防音シートを三重に貼って、ベタベタになった壁を眺めた理子はやりきった達成感に満ち溢れて、高笑いしたくなるのを堪えつつにんまりと笑った。