くたびれOL、魔王様の抱き枕を拝命いたしました!?
色とりどりの花が咲き誇る中庭。
陽当たりが良く、花が見渡せる場所に置かれたガーデンテーブルの上に置かれているのは、上質な紅茶と香ばしい焼き菓子。
社会人になってから久しく使わなくなっていた、勉学専用の脳をフル回転した反動で疲れきってしまった理子は、甘い紅茶の有り難さを噛み締めていた。
頭から湯気を出しそうなくらいヘロヘロになった理子のために、甘い菓子を用意してくれたエルザとルーアンの優しさに涙が出そう。
「うう、頭が限界だわ」
学生時代の自分は、どうやって勉強をしていたのだろうか。
以前は、机に向かって勉強するのに堪えられたのに、今は耐え切れないのは頭が固くなっているか異世界の知識は、理子にとって非現実すぎるからなのか。
初日からこれだけしか出来ないとは、あと五日間はどうしたら良いのか分からない。
それ以前に、休暇を楽しみに来たのに勉強とか絶対におかしいと思う。
頭を抱える理子を心配そうに見ていたエルザとルーアンは、何かに気付いて後ろへ下がった。
「ごきげんよう、寵姫様?」
背後からかけられた声に、理子は反射的に背筋を伸ばしてしまった。
振り向いた先に佇んでいたのは……水色をベースに青いフリルとリボンで飾られたドレスを着た、金色の髪と紫色の瞳の、吊り目なのがキツそうな印象を与えるが、とても綺麗な令嬢だった。
綺麗な容姿もそうだが、注視すべきは彼女の髪は完璧な縦ロールということ。
付き添う侍女へ下がっているように指示を出して、縦ロール嬢は優雅に微笑む。
「わたくしも、ご一緒して宜しいかしら?」
見事なまでの縦ロールを凝視していた理子は、ハッと我に返った。
「失礼ですが、どちら様でしょうか?」
午前中に学んだ貴族社会のルールとやらによると、縦ロール嬢の立場が分からない以上、自分から名乗れないという何とも面倒なルールがあるらしい。
「あら、これは失礼いたしましたわ。わたくしは、ベアトリクス・ロゼンゼッタと申します」
縦ロール嬢、ベアトリクスはスカートを持ちペコリと淑女らしいお辞儀をする。
「私は、リコ・ヤマダと申します」
椅子から立ち上がり、理子も頭を下げた。
淑女の礼は分からないから、社会人になってからマナー教室で叩き込まれた丁寧なお辞儀をする。
『背筋を伸ばし、足下に視線を落とし、上体を45~60度程度に傾けます!『1・2・3・』の呼吸はゆっくりと行い、2のところで呼吸を一旦止め、間を取ります!』
脳内でマナー教室の先生の声が響く。何度も練習させられたお辞儀は完璧に出来たと思う。
挨拶を済ませたタイミングで、ルーアンがガーデンチェアを運んで来る。
テーブルを挟んで理子と対面する位置に、ベアトリクスは優雅に腰掛けた。
(面接みたいだわ。これは、圧迫面接?)
向かい側に座るベアトリクスの華やかな雰囲気に圧倒されて、縦ロール嬢が面接官だったら吹き出して面接が終了するかなと、明後日な事を思ってしまう。
理子の思考を知らないベアトリクスは、ティーカップへ注がれた紅茶を一口飲む。
「寵姫様はリコ様とおっしゃるのですね」
「はい、出来たら寵姫様じゃなくて名前で呼んで欲しいのですが」
ベアトリクスにまで寵姫だと思われているのかと、私は眉尻を下げる。
「では、リコ様とお呼びしますわ。わたくしは、魔王様が寵姫を召されたという噂を聞いて城へ参りましたの。一応、魔王様の婚約者候補だった者ですから」
「婚約者候補、ですか」
午前中に学んだ魔国の歴史と主だった魔貴族の一覧表を思い起こす。
陽当たりが良く、花が見渡せる場所に置かれたガーデンテーブルの上に置かれているのは、上質な紅茶と香ばしい焼き菓子。
社会人になってから久しく使わなくなっていた、勉学専用の脳をフル回転した反動で疲れきってしまった理子は、甘い紅茶の有り難さを噛み締めていた。
頭から湯気を出しそうなくらいヘロヘロになった理子のために、甘い菓子を用意してくれたエルザとルーアンの優しさに涙が出そう。
「うう、頭が限界だわ」
学生時代の自分は、どうやって勉強をしていたのだろうか。
以前は、机に向かって勉強するのに堪えられたのに、今は耐え切れないのは頭が固くなっているか異世界の知識は、理子にとって非現実すぎるからなのか。
初日からこれだけしか出来ないとは、あと五日間はどうしたら良いのか分からない。
それ以前に、休暇を楽しみに来たのに勉強とか絶対におかしいと思う。
頭を抱える理子を心配そうに見ていたエルザとルーアンは、何かに気付いて後ろへ下がった。
「ごきげんよう、寵姫様?」
背後からかけられた声に、理子は反射的に背筋を伸ばしてしまった。
振り向いた先に佇んでいたのは……水色をベースに青いフリルとリボンで飾られたドレスを着た、金色の髪と紫色の瞳の、吊り目なのがキツそうな印象を与えるが、とても綺麗な令嬢だった。
綺麗な容姿もそうだが、注視すべきは彼女の髪は完璧な縦ロールということ。
付き添う侍女へ下がっているように指示を出して、縦ロール嬢は優雅に微笑む。
「わたくしも、ご一緒して宜しいかしら?」
見事なまでの縦ロールを凝視していた理子は、ハッと我に返った。
「失礼ですが、どちら様でしょうか?」
午前中に学んだ貴族社会のルールとやらによると、縦ロール嬢の立場が分からない以上、自分から名乗れないという何とも面倒なルールがあるらしい。
「あら、これは失礼いたしましたわ。わたくしは、ベアトリクス・ロゼンゼッタと申します」
縦ロール嬢、ベアトリクスはスカートを持ちペコリと淑女らしいお辞儀をする。
「私は、リコ・ヤマダと申します」
椅子から立ち上がり、理子も頭を下げた。
淑女の礼は分からないから、社会人になってからマナー教室で叩き込まれた丁寧なお辞儀をする。
『背筋を伸ばし、足下に視線を落とし、上体を45~60度程度に傾けます!『1・2・3・』の呼吸はゆっくりと行い、2のところで呼吸を一旦止め、間を取ります!』
脳内でマナー教室の先生の声が響く。何度も練習させられたお辞儀は完璧に出来たと思う。
挨拶を済ませたタイミングで、ルーアンがガーデンチェアを運んで来る。
テーブルを挟んで理子と対面する位置に、ベアトリクスは優雅に腰掛けた。
(面接みたいだわ。これは、圧迫面接?)
向かい側に座るベアトリクスの華やかな雰囲気に圧倒されて、縦ロール嬢が面接官だったら吹き出して面接が終了するかなと、明後日な事を思ってしまう。
理子の思考を知らないベアトリクスは、ティーカップへ注がれた紅茶を一口飲む。
「寵姫様はリコ様とおっしゃるのですね」
「はい、出来たら寵姫様じゃなくて名前で呼んで欲しいのですが」
ベアトリクスにまで寵姫だと思われているのかと、私は眉尻を下げる。
「では、リコ様とお呼びしますわ。わたくしは、魔王様が寵姫を召されたという噂を聞いて城へ参りましたの。一応、魔王様の婚約者候補だった者ですから」
「婚約者候補、ですか」
午前中に学んだ魔国の歴史と主だった魔貴族の一覧表を思い起こす。