くたびれOL、魔王様の抱き枕を拝命いたしました!?
「きゃあああ!?」
全身に風圧を感じて、理子は腰を抱え込む腕から逃れようと手足をばたばた動かした。
室内に居た筈なのに、目前に広がるのは一面の夜空と煌めく星。
下を向けば闇の中に浮かぶ城壁が見える。
「ちっ、暴れるな。落ちはしない」
「だって! これは無理ー!」
いくら魔法の力で空を飛んでいようが、事前説明も無くテラスから飛び降りられたら、誰だってパニックにもなるだろう。
半泣きで腰に回された腕にしがみつく理子の様子に、シルヴァリスは呆れたように笑う。理子の腰を支える腕はそのまま、空いた片腕を軽く振るった。
キィン……
空中に朱金の魔方陣が出現し、中心から一匹の白馬が出現する。
一見すると普通の馬に見える。
しかし、白馬の瞳は血のように赤く染まり、蹄は炎を纏って宙に浮かんでいる事から、この馬は魔獣なのだろう。
夜空に輝く鬣の、美しい白馬の背へ理子を横向きに座らせてシルヴァリスはひらりと後ろへ跨がった。
「ヒヒーン! ブルルルル」
白馬は召喚者の意思を理解しているのか、一声嘶くと城の上空から一気に城下へと駆けて行く。
「遅くなったが、今日は魔国を案内する約束だっただろう。飛ぶよりは平気か?」
やはり白馬を喚んだのはシルヴァリスなりの気遣いのようだ。
確かに今朝、執務が終わったら魔国を案内すると言われたが、今日は疲れたし寝たかったのだけど。とは、小心者の理子は言えない。
「う、ありがとうございます」
事前に説明してもらっていたら、ここまで怖がらなかったのだがあまり事前説明をしてくれないのは、彼が魔王様だからか。
白馬での移動はシルヴァリスが何かしたのか、風も当たらず揺れも少ないという快適なものだった。
眼下に広がる城下の街並みを見下ろしてみる。残念ながら夜間と距離があるため、街灯や建物の灯りが点いている場所しか見えない。出来れば、昼間に見てみたかった。
ふと、手綱を持つシルヴァリスの手に触れてみると、腰に回された腕に力がこもった。
「……ロゼンゼッタ家の娘が来たそうだな」
背後から耳元に寄せられた唇が動いて、吐息が耳にかかる。
くすぐったい上に恥ずかしくて、理子は顔を動かして耳に触れる唇から逃れた。
「ベアトリクス様ですか?」
「そんな名だったな。その娘は、リコに有益になりそうか否か、どちらだ?」
有益とはどういう意味だ。不利益なら、どうなるんだろうかと、私は首を傾げる。
それ以前に、婚約者候補だったベアトリクス嬢の名前も覚えてなかったとは。
「利益とかは分からないけど、可愛いしお話は楽しかったですよ。明日も来てくれるって言ってました」
「そうか。ならば良い」
直ぐ後ろで、シルヴァリスはフッと笑うものだから吐息が耳に当たり、くすぐったくて理子は顔二度動かして彼から逃れる。
わざとやっているのでないかと思い、理子は首を動かして後ろを振り返る。
「っ!」
至近距離から見下ろしていた赤い瞳と視線が重なってしまい、咄嗟に目線を逸らす。
麗しい魔王にくっついて白馬に乗っているだなんて、夜のデートだなんてムード満点じゃないか。
自覚すると理子の体温は上昇していく。
茹で蛸みたいに真っ赤になった顔を見られないように、理子は横を向いた。
全身に風圧を感じて、理子は腰を抱え込む腕から逃れようと手足をばたばた動かした。
室内に居た筈なのに、目前に広がるのは一面の夜空と煌めく星。
下を向けば闇の中に浮かぶ城壁が見える。
「ちっ、暴れるな。落ちはしない」
「だって! これは無理ー!」
いくら魔法の力で空を飛んでいようが、事前説明も無くテラスから飛び降りられたら、誰だってパニックにもなるだろう。
半泣きで腰に回された腕にしがみつく理子の様子に、シルヴァリスは呆れたように笑う。理子の腰を支える腕はそのまま、空いた片腕を軽く振るった。
キィン……
空中に朱金の魔方陣が出現し、中心から一匹の白馬が出現する。
一見すると普通の馬に見える。
しかし、白馬の瞳は血のように赤く染まり、蹄は炎を纏って宙に浮かんでいる事から、この馬は魔獣なのだろう。
夜空に輝く鬣の、美しい白馬の背へ理子を横向きに座らせてシルヴァリスはひらりと後ろへ跨がった。
「ヒヒーン! ブルルルル」
白馬は召喚者の意思を理解しているのか、一声嘶くと城の上空から一気に城下へと駆けて行く。
「遅くなったが、今日は魔国を案内する約束だっただろう。飛ぶよりは平気か?」
やはり白馬を喚んだのはシルヴァリスなりの気遣いのようだ。
確かに今朝、執務が終わったら魔国を案内すると言われたが、今日は疲れたし寝たかったのだけど。とは、小心者の理子は言えない。
「う、ありがとうございます」
事前に説明してもらっていたら、ここまで怖がらなかったのだがあまり事前説明をしてくれないのは、彼が魔王様だからか。
白馬での移動はシルヴァリスが何かしたのか、風も当たらず揺れも少ないという快適なものだった。
眼下に広がる城下の街並みを見下ろしてみる。残念ながら夜間と距離があるため、街灯や建物の灯りが点いている場所しか見えない。出来れば、昼間に見てみたかった。
ふと、手綱を持つシルヴァリスの手に触れてみると、腰に回された腕に力がこもった。
「……ロゼンゼッタ家の娘が来たそうだな」
背後から耳元に寄せられた唇が動いて、吐息が耳にかかる。
くすぐったい上に恥ずかしくて、理子は顔を動かして耳に触れる唇から逃れた。
「ベアトリクス様ですか?」
「そんな名だったな。その娘は、リコに有益になりそうか否か、どちらだ?」
有益とはどういう意味だ。不利益なら、どうなるんだろうかと、私は首を傾げる。
それ以前に、婚約者候補だったベアトリクス嬢の名前も覚えてなかったとは。
「利益とかは分からないけど、可愛いしお話は楽しかったですよ。明日も来てくれるって言ってました」
「そうか。ならば良い」
直ぐ後ろで、シルヴァリスはフッと笑うものだから吐息が耳に当たり、くすぐったくて理子は顔二度動かして彼から逃れる。
わざとやっているのでないかと思い、理子は首を動かして後ろを振り返る。
「っ!」
至近距離から見下ろしていた赤い瞳と視線が重なってしまい、咄嗟に目線を逸らす。
麗しい魔王にくっついて白馬に乗っているだなんて、夜のデートだなんてムード満点じゃないか。
自覚すると理子の体温は上昇していく。
茹で蛸みたいに真っ赤になった顔を見られないように、理子は横を向いた。