くたびれOL、魔王様の抱き枕を拝命いたしました!?
店内に残された理子は、渋面で見詰めてくる店主へと向き直った。
「すいません。買い取りはお願いできますか?」
尋ねながら、理子は着ているドレスの裾を摘まむ。
店主は戸惑いの表情のまま、理子の着ているドレスの品定めのため上から下へと眺めた。
「こんなに上質なドレスをですか? 貴女の大事な方からの贈り物でしょうに。いいのですか?」
遠慮がちに問う店主に、理子はコクリと頷く。
「この格好だとこの町では目立つので。買い取っていただいたら、代わりの服を買いたいのですが」
「分かりました。ご用意いたします」
店主は右手を胸に当て、恭しく頭を下げた。
試着室でドレスを脱いだ理子は、用意してもらった服に着替えた。
鏡に映る理子の姿は、膝丈のプリーツスカートのワンピースに袖が広がっている上着を羽織り、足元はニーハイ丈ソックスという、どこかのアイドルが着ていそうな体の線が出るような若い服装。
異世界では町娘よりも冒険者、といった風に見える。
「ファンタジーだなぁ」
腰に剣でも挿したら、ちょっとした冒険者の出来上がりだ。
元の世界では、恥ずかしくてニーハイソックスはちょっと履けないが、仕事上の知り合いも居ないこの世界ではあまり抵抗も無い。
服だけではなく店主は、ショートブーツと斜め掛けポシェット、ドレスを売ってから今の服を買った残金を入れたお財布を揃えてくれたのだ。
理子の脱いだドレスを手に取った店主からは「素晴らしい」と感嘆の呟きが漏れ、何度も売却確認をされたのは驚きだった。
「此処は港町ですから、多くの旅行者が行き交います。自警団が目を光らせてるとはいえ中には柄の悪い者もおりますから、裏路地には入らないようにしてくださいね」
店主は周辺の地図を広げて危険なエリアを赤く囲み注意を促す。
話を聞きながら、理子はこの店までの道すがら船乗り達から教えてもらった町の情報を頭の中で整理する。
商業国家トランギアナの交易港の一つであるこの町は、豊かな海産物と他国からの輸入品目当ての旅人が多く、大通りを外れると治安はあまり良くないらしい。
治安が悪いのは怖いが、町の名産品は海産物と織物で町外れには古代の遺跡があると知り、私は観光への期待で胸が踊っていた。
店主から手渡された名産品リストの紙を、私はポシェットの中へと仕舞う。
「お嬢さんからは強い魔力の守護を感じます。ですが、若い娘さんの一人歩きは危険です。くれぐれもお気をつけてくださいね」
何度も繰り返す店主の言葉から、彼は理子の身を本当に案じてくれているのが分かる。
「ありがとうございました」
店頭で見送る店主に頭を下げて、理子は意気揚々と町へと歩き出した。
鼻歌混じりで歩いて行った理子の後ろ姿が人の波に消えるまで、店主は窓から外の大通りを眺めていた。
「高位魔族の寵愛を受けたお嬢さんか。何も無ければいいが」
人族と魔族が争っていた時代、魔族によって一度壊滅した歴史を持つこの国では、高位魔族がかかわる事案は教会へと伝える義務がある。
しかし、魔術師として若かりし頃活躍していた店主は、理子に関しては余計な真似をしない方がいい、と第六感で感じとったのだ。
本人が気が付いていないまま、与えられている強力な守護の力。
その力を察知出来ない愚かな者が、彼女に何かをやらかして、高位魔族の不興を買う事態にならない事を店主は祈るのみ、あった。
「すいません。買い取りはお願いできますか?」
尋ねながら、理子は着ているドレスの裾を摘まむ。
店主は戸惑いの表情のまま、理子の着ているドレスの品定めのため上から下へと眺めた。
「こんなに上質なドレスをですか? 貴女の大事な方からの贈り物でしょうに。いいのですか?」
遠慮がちに問う店主に、理子はコクリと頷く。
「この格好だとこの町では目立つので。買い取っていただいたら、代わりの服を買いたいのですが」
「分かりました。ご用意いたします」
店主は右手を胸に当て、恭しく頭を下げた。
試着室でドレスを脱いだ理子は、用意してもらった服に着替えた。
鏡に映る理子の姿は、膝丈のプリーツスカートのワンピースに袖が広がっている上着を羽織り、足元はニーハイ丈ソックスという、どこかのアイドルが着ていそうな体の線が出るような若い服装。
異世界では町娘よりも冒険者、といった風に見える。
「ファンタジーだなぁ」
腰に剣でも挿したら、ちょっとした冒険者の出来上がりだ。
元の世界では、恥ずかしくてニーハイソックスはちょっと履けないが、仕事上の知り合いも居ないこの世界ではあまり抵抗も無い。
服だけではなく店主は、ショートブーツと斜め掛けポシェット、ドレスを売ってから今の服を買った残金を入れたお財布を揃えてくれたのだ。
理子の脱いだドレスを手に取った店主からは「素晴らしい」と感嘆の呟きが漏れ、何度も売却確認をされたのは驚きだった。
「此処は港町ですから、多くの旅行者が行き交います。自警団が目を光らせてるとはいえ中には柄の悪い者もおりますから、裏路地には入らないようにしてくださいね」
店主は周辺の地図を広げて危険なエリアを赤く囲み注意を促す。
話を聞きながら、理子はこの店までの道すがら船乗り達から教えてもらった町の情報を頭の中で整理する。
商業国家トランギアナの交易港の一つであるこの町は、豊かな海産物と他国からの輸入品目当ての旅人が多く、大通りを外れると治安はあまり良くないらしい。
治安が悪いのは怖いが、町の名産品は海産物と織物で町外れには古代の遺跡があると知り、私は観光への期待で胸が踊っていた。
店主から手渡された名産品リストの紙を、私はポシェットの中へと仕舞う。
「お嬢さんからは強い魔力の守護を感じます。ですが、若い娘さんの一人歩きは危険です。くれぐれもお気をつけてくださいね」
何度も繰り返す店主の言葉から、彼は理子の身を本当に案じてくれているのが分かる。
「ありがとうございました」
店頭で見送る店主に頭を下げて、理子は意気揚々と町へと歩き出した。
鼻歌混じりで歩いて行った理子の後ろ姿が人の波に消えるまで、店主は窓から外の大通りを眺めていた。
「高位魔族の寵愛を受けたお嬢さんか。何も無ければいいが」
人族と魔族が争っていた時代、魔族によって一度壊滅した歴史を持つこの国では、高位魔族がかかわる事案は教会へと伝える義務がある。
しかし、魔術師として若かりし頃活躍していた店主は、理子に関しては余計な真似をしない方がいい、と第六感で感じとったのだ。
本人が気が付いていないまま、与えられている強力な守護の力。
その力を察知出来ない愚かな者が、彼女に何かをやらかして、高位魔族の不興を買う事態にならない事を店主は祈るのみ、あった。