くたびれOL、魔王様の抱き枕を拝命いたしました!?
「確かに、魔族が来たら面倒だな。ただ、あの娘から感じた魔力……どこかで……?」
高位魔族の所有印を刻まれた、リコという女が内包する惹き込まれるような魔力。
以前、何処かで感じた事がある。
だがそれは、もっと強烈で畏怖する相手だったと思う。
その魔力のせいで、ウォルトとエミリアがリコに惹かれてしまっているとしたら……とても恐ろしくて厄介だ。
思考の淵にいたテオドールは、ハッと顔を上げた。
「二人とも! 魔族の前に、片付けるのがあるわよ」
魔法を展開しようとエミリアが杖を構える。
「ああ、分かってるよ」
剣の柄を握って、鞘から引き抜いたテオドールも剣を構えた。
「はっ! 団体様かよ」
大剣を構えるウォルトがニヤリと不敵に笑った。
ザッザッ、と聞こえてきた足音の方向をエミリアの放った魔法の明かりが照らす。
其処に居たのは、朽ちかけた鎧を身に付け刃こぼれした剣や槍を持った骸骨兵達だった。
ガッシャンッ!
背後から襲いかかってきた骸骨兵をウォルトは力任せに大剣で凪ぎ払う。
そのま返す刃で体の半分が腐り落ちたゾンビ兵を袈裟懸けに切り伏せた。
「ちっ、次から次へと埒があかないな」
涌き出るように襲いかかってくるアンデット系の魔物を倒し続け、体力がある筈のウォルトの顔にも疲労の色が見えてくる。
地下ダンジョンでは下手に撃てば自分達も巻き添えを食らうため、エミリアの広範囲攻撃魔法が使えないのも苦戦を強いられている原因でもあった。
魔力を込めた剣で戦っていたテオドールも、流れ落ちる汗を手で拭う。
「アンデットが自然発生するなど有り得ない。何かきっかけがあった筈だ」
大体の場合、一度死を迎えている者をアンデットを動かすのは術者がいる。
術者が事切れている場合でも残った魔力により動かされる事もあるが、余程強大な魔力を持つ魔術師じゃなければこの数のアンデットは使役出来ない。
ゴオオ!
狼系のゾンビが炎に閉じ込められて、じたばた苦しそうに悶えて絶命する。
燃え盛るゾンビの体が当たった石の壁は、黒い焦げあとが付いた。
魔法を放ったエミリアも大きく息を吐き出した。
「確かに。このダンジョン内に操っている術者がいるのかも。それか、この遺跡は暗黒時代の物だし、古の魔王に対抗するための力が残っているのかもしれないわ。それを誰かが利用した、とか?」
倒れたアンデットの体を目をよく凝らして見れば、何者かの魔力の残滓が残っているのが分かる。ちっとエミリアは舌打ちをした。
強い魔力の残滓は、明らかに使役の術だ。
アンデット達に使われたと思われる、使役の魔法を使える者は限られている。
「暗黒時代、人と魔族が争っていたのは500年以上も昔だろ? そんな長い間、アンデットが使役されていたのかよ? 遺跡地下に魔物が出るって話は最近じゃなかったか?」
両腕を無くしても向かってくるゾンビの首を切り落とし、ウォルトはバランスを崩してふらつく体を蹴り飛ばした。
死体を使役する魔術はあるにはある。
だが、これだけの数を動かすには大量の魔力が必要だ。
それを補うために必要となるのは、術者と魔力に満ちた場所、そして……
ある答え行き着いたエミリアは、テオドールとウォルトに指示を出して走り出す。
「何人かの生け贄を使った術を、禁術を使ったのよ」
出会した骸骨兵を氷付けにしたエミリアは、ギリッときつく下唇を噛んだ。
口内に広がる血の、鉄錆びの味に僅かに眉を顰める。
「此処に封じられていたモノを甦らすように」
走り抜けていく通路は、奥に進むにつれて石の壁から洞穴のような剥き出しの土壁へ変わる。
アンデット達を屠りながら長い通路を抜け、一行は広い空洞のような場所へ出た。
急に開けた空間に出て、ウォルトとテオドールは警戒を解かずに周囲を見渡す。
「此処は何だ? あれは?」
空間の中央、黒く焼け焦げた塊に気付いたウォルトは“ソレ”に近付いていった。
高位魔族の所有印を刻まれた、リコという女が内包する惹き込まれるような魔力。
以前、何処かで感じた事がある。
だがそれは、もっと強烈で畏怖する相手だったと思う。
その魔力のせいで、ウォルトとエミリアがリコに惹かれてしまっているとしたら……とても恐ろしくて厄介だ。
思考の淵にいたテオドールは、ハッと顔を上げた。
「二人とも! 魔族の前に、片付けるのがあるわよ」
魔法を展開しようとエミリアが杖を構える。
「ああ、分かってるよ」
剣の柄を握って、鞘から引き抜いたテオドールも剣を構えた。
「はっ! 団体様かよ」
大剣を構えるウォルトがニヤリと不敵に笑った。
ザッザッ、と聞こえてきた足音の方向をエミリアの放った魔法の明かりが照らす。
其処に居たのは、朽ちかけた鎧を身に付け刃こぼれした剣や槍を持った骸骨兵達だった。
ガッシャンッ!
背後から襲いかかってきた骸骨兵をウォルトは力任せに大剣で凪ぎ払う。
そのま返す刃で体の半分が腐り落ちたゾンビ兵を袈裟懸けに切り伏せた。
「ちっ、次から次へと埒があかないな」
涌き出るように襲いかかってくるアンデット系の魔物を倒し続け、体力がある筈のウォルトの顔にも疲労の色が見えてくる。
地下ダンジョンでは下手に撃てば自分達も巻き添えを食らうため、エミリアの広範囲攻撃魔法が使えないのも苦戦を強いられている原因でもあった。
魔力を込めた剣で戦っていたテオドールも、流れ落ちる汗を手で拭う。
「アンデットが自然発生するなど有り得ない。何かきっかけがあった筈だ」
大体の場合、一度死を迎えている者をアンデットを動かすのは術者がいる。
術者が事切れている場合でも残った魔力により動かされる事もあるが、余程強大な魔力を持つ魔術師じゃなければこの数のアンデットは使役出来ない。
ゴオオ!
狼系のゾンビが炎に閉じ込められて、じたばた苦しそうに悶えて絶命する。
燃え盛るゾンビの体が当たった石の壁は、黒い焦げあとが付いた。
魔法を放ったエミリアも大きく息を吐き出した。
「確かに。このダンジョン内に操っている術者がいるのかも。それか、この遺跡は暗黒時代の物だし、古の魔王に対抗するための力が残っているのかもしれないわ。それを誰かが利用した、とか?」
倒れたアンデットの体を目をよく凝らして見れば、何者かの魔力の残滓が残っているのが分かる。ちっとエミリアは舌打ちをした。
強い魔力の残滓は、明らかに使役の術だ。
アンデット達に使われたと思われる、使役の魔法を使える者は限られている。
「暗黒時代、人と魔族が争っていたのは500年以上も昔だろ? そんな長い間、アンデットが使役されていたのかよ? 遺跡地下に魔物が出るって話は最近じゃなかったか?」
両腕を無くしても向かってくるゾンビの首を切り落とし、ウォルトはバランスを崩してふらつく体を蹴り飛ばした。
死体を使役する魔術はあるにはある。
だが、これだけの数を動かすには大量の魔力が必要だ。
それを補うために必要となるのは、術者と魔力に満ちた場所、そして……
ある答え行き着いたエミリアは、テオドールとウォルトに指示を出して走り出す。
「何人かの生け贄を使った術を、禁術を使ったのよ」
出会した骸骨兵を氷付けにしたエミリアは、ギリッときつく下唇を噛んだ。
口内に広がる血の、鉄錆びの味に僅かに眉を顰める。
「此処に封じられていたモノを甦らすように」
走り抜けていく通路は、奥に進むにつれて石の壁から洞穴のような剥き出しの土壁へ変わる。
アンデット達を屠りながら長い通路を抜け、一行は広い空洞のような場所へ出た。
急に開けた空間に出て、ウォルトとテオドールは警戒を解かずに周囲を見渡す。
「此処は何だ? あれは?」
空間の中央、黒く焼け焦げた塊に気付いたウォルトは“ソレ”に近付いていった。