くたびれOL、魔王様の抱き枕を拝命いたしました!?
―マリョク、ヲ、ササゲ、ヨ―
地の底から響くようなくぐもった声が聞こえて、理子の足元の床が一気に崩れ落ちた。
「きゃあああ!?」
ガラガラと石造りの床が崩れ落ちる音と、理子の叫び声が神殿内に響き渡る。
ドシンッ!
「いたぁっ」
ほんの数秒だけ落ちる感覚がして、理子は硬い土の上へと転がり落ちた。
尻から落ちたせいで、強打した尻と落下の衝撃で捻ってしまった右足首が痛くて、理子は動くことが出来ずに呻いた。
「「リコ!?」」
男性の声と若い女性の驚いた声が聞こえ、瞑っていた目蓋を恐る恐る開く。
「ええ!?」
転がり落ちた先、所謂洞穴といった空間にいたのは、全身切り傷と火傷だらけで満身創痍のウォルトとエミリアだった。
状況が理解できずに、目を瞬かせる理子の目前が真っ赤に染まる。
肌がチリチリ焼ける程の熱を感じて、咄嗟に両手で顔を防御した。
ブンッ!
何かが空を斬る音がして、理子を襲おうとした熱は霧散する。
「君はっ! どうして此処にっ!?」
理子を“ソレ”から庇うように、剣を手にした金髪の青年が前に立つ。
首だけ動かして振り向いたのは、額から血を流し綺麗な顔を苦痛に歪めたテオドールだった。
「ええ? テオドールさん? どうしたんですか?」
彼等は遺跡の地下を調査する、と言っていた。ということは、先ほどの地震で神殿の床が崩れ落ちて地下に落ちたのか。
グオオオ!!
間近で怪獣のような咆哮が聞こえ、もしや魔物と交戦中なのかと首を巡らした。
「……え?」
“ソレ”を見付けてしまい、理子は絶句した。
紫色の妖しい靄を纏った双頭の竜、ドラゴン。
否、一つ目の首は赤い鱗、二つ目の首は青い鱗、体は黒い鱗という三種類の鱗に覆われた首を持つドラゴンが睨み付けていたのだ。
それも、“ソレ”はただのドラゴンではなく。
双頭にしては不自然で、まるで一体のドラゴンの体に、もうひとつ首を無理やりくっつけたような不自然さがあった。
ーマリョク、ワレ二、ササゲ、ヨー
二つの首が同時に喋るため、くぐもった声は二重に聞こえた。
口を動かす度に、口の端からボタリボタリと粘液なのか涎なのか判別出来ないものがドラゴンの口から垂れる。
魔法の明かりに照らされたドラゴンの体を見て、理子は血の気が引いた。
(腐ってるー!?)
紫色の靄だと思っていたものは、ドラゴン、いやドラゴンゾンビが動く度に体から立ち昇る体液だった。
「はぁ!」
理子の方を向いた隙を狙って、ウォルトがドラゴンゾンビを斬りつける。
大剣の切っ先によって体の一部が削げ落ちた。
肉が削げ落ちた部位からは骨が覗き、理子は全身に鳥肌が立った。
「下がれっ!」
固まる理子の腕をテオドールが引いたため、明後日の方向へ飛んで行きかけた意識が戻る。
「ぐあっ!」
「テオドールさん!!」
青い鱗が生えた首が鞭のように撓り、テオドールの体を凪ぎ払った。
ーチカラ、ヨコセッ!!ー
双頭の血走った瞳に睨まれて、理子は一瞬失神しかけた。
双頭の、赤、青の鱗の一部は剥がれ落ちて、赤黒い皮膚はぐじゅぐじゅに腐り糸を引く液体が垂れている。
赤い鱗の頭の方は、片目の目玉は零れ落ちそうになっていた。
「いやあああ! 無理無理!!」
昔からスプラッタ系や、ゾンビやアンデット系の映像は昔から生理的に受け付けないのだ。
恐怖と嫌悪感から背筋が寒くなる。逃げたいのに、足首が痛くて立ち上がれない。
怯える理子を見て、愉快そうに目を細めた双頭の首が、向かって大きく口を開けた。
「いやぁああ!!」
今から、この気持ちが悪いドラゴンゾンビの鋭い歯に噛み砕かれて食べられるのかと、理子は喉が張り裂けんばかりに悲鳴を上げた。
地の底から響くようなくぐもった声が聞こえて、理子の足元の床が一気に崩れ落ちた。
「きゃあああ!?」
ガラガラと石造りの床が崩れ落ちる音と、理子の叫び声が神殿内に響き渡る。
ドシンッ!
「いたぁっ」
ほんの数秒だけ落ちる感覚がして、理子は硬い土の上へと転がり落ちた。
尻から落ちたせいで、強打した尻と落下の衝撃で捻ってしまった右足首が痛くて、理子は動くことが出来ずに呻いた。
「「リコ!?」」
男性の声と若い女性の驚いた声が聞こえ、瞑っていた目蓋を恐る恐る開く。
「ええ!?」
転がり落ちた先、所謂洞穴といった空間にいたのは、全身切り傷と火傷だらけで満身創痍のウォルトとエミリアだった。
状況が理解できずに、目を瞬かせる理子の目前が真っ赤に染まる。
肌がチリチリ焼ける程の熱を感じて、咄嗟に両手で顔を防御した。
ブンッ!
何かが空を斬る音がして、理子を襲おうとした熱は霧散する。
「君はっ! どうして此処にっ!?」
理子を“ソレ”から庇うように、剣を手にした金髪の青年が前に立つ。
首だけ動かして振り向いたのは、額から血を流し綺麗な顔を苦痛に歪めたテオドールだった。
「ええ? テオドールさん? どうしたんですか?」
彼等は遺跡の地下を調査する、と言っていた。ということは、先ほどの地震で神殿の床が崩れ落ちて地下に落ちたのか。
グオオオ!!
間近で怪獣のような咆哮が聞こえ、もしや魔物と交戦中なのかと首を巡らした。
「……え?」
“ソレ”を見付けてしまい、理子は絶句した。
紫色の妖しい靄を纏った双頭の竜、ドラゴン。
否、一つ目の首は赤い鱗、二つ目の首は青い鱗、体は黒い鱗という三種類の鱗に覆われた首を持つドラゴンが睨み付けていたのだ。
それも、“ソレ”はただのドラゴンではなく。
双頭にしては不自然で、まるで一体のドラゴンの体に、もうひとつ首を無理やりくっつけたような不自然さがあった。
ーマリョク、ワレ二、ササゲ、ヨー
二つの首が同時に喋るため、くぐもった声は二重に聞こえた。
口を動かす度に、口の端からボタリボタリと粘液なのか涎なのか判別出来ないものがドラゴンの口から垂れる。
魔法の明かりに照らされたドラゴンの体を見て、理子は血の気が引いた。
(腐ってるー!?)
紫色の靄だと思っていたものは、ドラゴン、いやドラゴンゾンビが動く度に体から立ち昇る体液だった。
「はぁ!」
理子の方を向いた隙を狙って、ウォルトがドラゴンゾンビを斬りつける。
大剣の切っ先によって体の一部が削げ落ちた。
肉が削げ落ちた部位からは骨が覗き、理子は全身に鳥肌が立った。
「下がれっ!」
固まる理子の腕をテオドールが引いたため、明後日の方向へ飛んで行きかけた意識が戻る。
「ぐあっ!」
「テオドールさん!!」
青い鱗が生えた首が鞭のように撓り、テオドールの体を凪ぎ払った。
ーチカラ、ヨコセッ!!ー
双頭の血走った瞳に睨まれて、理子は一瞬失神しかけた。
双頭の、赤、青の鱗の一部は剥がれ落ちて、赤黒い皮膚はぐじゅぐじゅに腐り糸を引く液体が垂れている。
赤い鱗の頭の方は、片目の目玉は零れ落ちそうになっていた。
「いやあああ! 無理無理!!」
昔からスプラッタ系や、ゾンビやアンデット系の映像は昔から生理的に受け付けないのだ。
恐怖と嫌悪感から背筋が寒くなる。逃げたいのに、足首が痛くて立ち上がれない。
怯える理子を見て、愉快そうに目を細めた双頭の首が、向かって大きく口を開けた。
「いやぁああ!!」
今から、この気持ちが悪いドラゴンゾンビの鋭い歯に噛み砕かれて食べられるのかと、理子は喉が張り裂けんばかりに悲鳴を上げた。