くたびれOL、魔王様の抱き枕を拝命いたしました!?
タイル張りのバスルームには、魔石が動力になっているシャワーとバスタブが設置されていた。
タイル張りの床が濡れているのが、ひどく生々しくて理子は赤面する。
この街に来てからおかしい。ずっと、シルヴァリスを意識しているのだから。
今まで以上に、彼の視線を手を指を、息遣いですら、身体中で意識していた。
困った事に、魔王じゃなくてシルヴァリスを男として意識しているのだ。
スッキリしな気分で入浴を済ませた理子は、コテージに用意されていたガウンを羽織る。
「あ、」
ガウンを羽織ってから気付いた。
(うそ……下着が無い)
明日は履いていた下着を洗えばいいが、今はどうしたらいいのか。
(同じ下着を続けて履くのも、まさか裏返しに履くわけにはいかないし、シルヴァリス様はどうしたのかな。ま、まさか、ノーパ……)
それ以上のことを考えるのは放棄した。
下着無しは恥ずかしいが、パイル生地のガウンだから下着無しでも分からないだろう。多分。
「来い」
下着無しのせいか、若干風通しのよくなった気分で戻ってきた理子をシルヴァリスは手招きする。
ふわりっ
やわらかな風が理子を包み込んで、濡れた髪を乾かしていく。
仄かに髪から香るのは、ジャスミンの、軽く陶酔させるような甘くエキゾチックな花の香り。
さらさらと髪を鋤くシルヴァリスの指先が、時折頬を撫でるのがくすぐったい。
「あの、シルヴァリス様はずっとこのままでいるの?」
アッシュグレーの髪からも私と同じジャスミンの香りがして、何時もと違う橙色の瞳に見詰められて凄い恥ずかしい。
「フッ、この姿の方がお前の反応が面白いからな」
「もー!」
息遣いが感じられるくらい、近付かれて理子は焦る。
ガウンの下に下着を着けてないのを知られたら、状況的にも精神的にもマズイ。
離れたいのに、シルヴァリスは理子の腰を抱き寄せて長椅子へ座った。
腰に回された腕のせいで、互いの肩と肩が密着する。
髪を鋤く指先が頬を滑り顎を掴むと、理子の視界は上向きに固定されてしまった。
「初めてお前の姿を目にした時は、草臥れたボロ雑巾のような女だと思った。草臥れた女がどう変化するか、最初は半ば戯れで試していたのだが……漸く……これならば壊れはしないな」
何かを確認するように、理子の瞳の奥を見るシルヴァリスの台詞は前半は失礼で後半部分は、意味が分からない。
知らない間に、魔王が何かしていたのかと理子は体の変化を思い起こしてみても、何も浮かばなかった。
ただ、上から見下ろすシルヴァリスの視線はひどく甘ったるく、これは危険だと頭の片隅で警報は鳴っていた。それなのに、橙色の瞳を見ていると彼に逆らえなくなる。
「貴方は狡い」
つい、口から言葉が漏れ出ていた。
「私を目一杯甘やかすくせに、逃がしてはくれないもの」
そう、彼は狡いのだ。
例え謀られて利用されたとしても、こんなにどろどろに甘やかされてしまったら、許してしまうじゃないか。
選択肢は与えると言いつつ、逃げ場など与えてくれ無い。
解放されたと少しの間自由を楽しんだとしても、結局は魔王の手のひらの上で転がされていて、すぐに捕らえられてしまった。
今なら分かる。
理子を甘やかすのは、親愛とか愛情よりも強い、独占欲からだと。
依存する心地好さを覚えさせて、魔王から離れられないようにするためだと。
今だって、腕の中へと閉じ込めて逃がしてはくれないのだから。
「俺が、逃がすと思っているのか」
色彩を変化させて、人臭くなったと感じていた橙色の瞳に鋭い光が宿り、すうっと細められる。
色彩を変えて人臭くなったとは、訂正しなければならないと理子の背中が寒くなった。
たった一日半傍を離れていただけで、こんな飢えた肉食獣みたいな目で見詰められて、どうしたら良いのか分からない。
下手な事を答えたら監禁されかねないと、理子は顔をひきつらせて「ううん」と僅かに首を振るのがやっとだった。
タイル張りの床が濡れているのが、ひどく生々しくて理子は赤面する。
この街に来てからおかしい。ずっと、シルヴァリスを意識しているのだから。
今まで以上に、彼の視線を手を指を、息遣いですら、身体中で意識していた。
困った事に、魔王じゃなくてシルヴァリスを男として意識しているのだ。
スッキリしな気分で入浴を済ませた理子は、コテージに用意されていたガウンを羽織る。
「あ、」
ガウンを羽織ってから気付いた。
(うそ……下着が無い)
明日は履いていた下着を洗えばいいが、今はどうしたらいいのか。
(同じ下着を続けて履くのも、まさか裏返しに履くわけにはいかないし、シルヴァリス様はどうしたのかな。ま、まさか、ノーパ……)
それ以上のことを考えるのは放棄した。
下着無しは恥ずかしいが、パイル生地のガウンだから下着無しでも分からないだろう。多分。
「来い」
下着無しのせいか、若干風通しのよくなった気分で戻ってきた理子をシルヴァリスは手招きする。
ふわりっ
やわらかな風が理子を包み込んで、濡れた髪を乾かしていく。
仄かに髪から香るのは、ジャスミンの、軽く陶酔させるような甘くエキゾチックな花の香り。
さらさらと髪を鋤くシルヴァリスの指先が、時折頬を撫でるのがくすぐったい。
「あの、シルヴァリス様はずっとこのままでいるの?」
アッシュグレーの髪からも私と同じジャスミンの香りがして、何時もと違う橙色の瞳に見詰められて凄い恥ずかしい。
「フッ、この姿の方がお前の反応が面白いからな」
「もー!」
息遣いが感じられるくらい、近付かれて理子は焦る。
ガウンの下に下着を着けてないのを知られたら、状況的にも精神的にもマズイ。
離れたいのに、シルヴァリスは理子の腰を抱き寄せて長椅子へ座った。
腰に回された腕のせいで、互いの肩と肩が密着する。
髪を鋤く指先が頬を滑り顎を掴むと、理子の視界は上向きに固定されてしまった。
「初めてお前の姿を目にした時は、草臥れたボロ雑巾のような女だと思った。草臥れた女がどう変化するか、最初は半ば戯れで試していたのだが……漸く……これならば壊れはしないな」
何かを確認するように、理子の瞳の奥を見るシルヴァリスの台詞は前半は失礼で後半部分は、意味が分からない。
知らない間に、魔王が何かしていたのかと理子は体の変化を思い起こしてみても、何も浮かばなかった。
ただ、上から見下ろすシルヴァリスの視線はひどく甘ったるく、これは危険だと頭の片隅で警報は鳴っていた。それなのに、橙色の瞳を見ていると彼に逆らえなくなる。
「貴方は狡い」
つい、口から言葉が漏れ出ていた。
「私を目一杯甘やかすくせに、逃がしてはくれないもの」
そう、彼は狡いのだ。
例え謀られて利用されたとしても、こんなにどろどろに甘やかされてしまったら、許してしまうじゃないか。
選択肢は与えると言いつつ、逃げ場など与えてくれ無い。
解放されたと少しの間自由を楽しんだとしても、結局は魔王の手のひらの上で転がされていて、すぐに捕らえられてしまった。
今なら分かる。
理子を甘やかすのは、親愛とか愛情よりも強い、独占欲からだと。
依存する心地好さを覚えさせて、魔王から離れられないようにするためだと。
今だって、腕の中へと閉じ込めて逃がしてはくれないのだから。
「俺が、逃がすと思っているのか」
色彩を変化させて、人臭くなったと感じていた橙色の瞳に鋭い光が宿り、すうっと細められる。
色彩を変えて人臭くなったとは、訂正しなければならないと理子の背中が寒くなった。
たった一日半傍を離れていただけで、こんな飢えた肉食獣みたいな目で見詰められて、どうしたら良いのか分からない。
下手な事を答えたら監禁されかねないと、理子は顔をひきつらせて「ううん」と僅かに首を振るのがやっとだった。