くたびれOL、魔王様の抱き枕を拝命いたしました!?
首輪か鎖でも付けられそうなくらいの独占欲から逃げたいのに、背中に回された腕の力は強くて、逃がしてはくれない。
「好いた女を独占して何が悪いのだ」
慌てる理子に、シルヴァリスはハァと息を吐く。
一変して圧力は霧散し、シルヴァリスの橙色の瞳が寂しそうに揺れる。
「好いた……」
魔王の冷徹な顔、自信満々で偉そうな表情はよく見ているのに、寂しそうな子犬みたいな表情を見るのは初めてで。彼を傷付けてしまったのかと、理子の胸はきゅうっと締め付けられた。
「俺は、リコを、山田理子という女を好いている。狂おしい程……愛してる。逃げられるなら、鎖に繋いで閉じ込めてしまいたい。俺を拒むならば、体も魂もを引き裂いて喰ってしまいたいくらいに」
……傷付けた訳では無かった。
寂しそうに揺れてたのでは無く、彼は自分の想いを確認していただけだった。
リコではなく「山田理子」として、「愛して」くれている事に理子の心臓の鼓動は速まり、身体中が熱を持つ。
しかし、続く拉致監禁、カニバリズムというとんでもなく恐い発言に、理子の顔色は赤から青へ、横断歩道の信号機のように変化する。
倒錯した愛が重い。
魔王の愛を受け入れたら、色んな意味で駄目にされそうで恐い。……恐すぎる。
「私、私は……」
こんなに恐い魔王、たとえ逃げられなくてもテオドール達にくっついて旅に出るとか、魔王に太刀打ち出来そうな宰相殿やベアトリクス嬢に泣きついて、何とか逃がしてもらうべきだと思う。
ヤバイと分かっていて逃げなかったのは、とっくに捕らわれていたから。
「私は、ずっと貴方に助けてもらっていた」
新年度早々から始まった貴方との壁越しの会話に、理子の心はどれだけ救われていただろうか。
たとえ、不可抗力で流されるまま異世界へ喚ばれていたとしても、理子が本気で嫌がれば魔王は抱き枕の扱いをしなかったと思う。
気心が知れた飲み友達、あたりで止まれたかもしれない。
今なら、抱き枕の扱いを拒まなかった自分の、抱いていたふんわりとした感情が分かる。
貴方が人外の魔王だろうと、鱗を生やしたトカゲは触り心地が悪そうでちょっと考えてしまうが、角や羽根が生えた外見だったとしても、貴方の事がずっと……
「私は、私も、貴方が、シルヴァリス様が好き、です」
真っ赤に茹で上がってしまった顔が熱い。
告白相手の膝に座っての愛の告白とは、シチュエーションとしてはどうなんだろうかと、理子は沸騰した頭のどこかで考えていた。
目を見開いて固まったシルヴァリスは、手のひらで自分の顔を覆った。
「ふ、クククッ」
手のひらで顔を覆ったまま、シルヴァリスは肩を揺らして笑う。
「愛など下らぬ、魔王に情など必要無いとずっと思っていたが」
手のひらを外したシルヴァリスを見て、理子は息を飲む。
何時も冷静沈着な彼が、頬をほんのり紅潮させていたのだ。
「好いた相手から、想いを告げられるのは……これほど美味な、甘美な感情だったのだな」
頬を紅潮させて、口元まで緩ませる魔王を、理子は唖然と見上げた。
自分からの告白によって、冷酷非情な魔王がまさかこんなに可愛らしい表情をするとは、信じられない。
どうしてスマートフォンかカメラを持ってこなかったんだと、心底後悔した。
「好いた女を独占して何が悪いのだ」
慌てる理子に、シルヴァリスはハァと息を吐く。
一変して圧力は霧散し、シルヴァリスの橙色の瞳が寂しそうに揺れる。
「好いた……」
魔王の冷徹な顔、自信満々で偉そうな表情はよく見ているのに、寂しそうな子犬みたいな表情を見るのは初めてで。彼を傷付けてしまったのかと、理子の胸はきゅうっと締め付けられた。
「俺は、リコを、山田理子という女を好いている。狂おしい程……愛してる。逃げられるなら、鎖に繋いで閉じ込めてしまいたい。俺を拒むならば、体も魂もを引き裂いて喰ってしまいたいくらいに」
……傷付けた訳では無かった。
寂しそうに揺れてたのでは無く、彼は自分の想いを確認していただけだった。
リコではなく「山田理子」として、「愛して」くれている事に理子の心臓の鼓動は速まり、身体中が熱を持つ。
しかし、続く拉致監禁、カニバリズムというとんでもなく恐い発言に、理子の顔色は赤から青へ、横断歩道の信号機のように変化する。
倒錯した愛が重い。
魔王の愛を受け入れたら、色んな意味で駄目にされそうで恐い。……恐すぎる。
「私、私は……」
こんなに恐い魔王、たとえ逃げられなくてもテオドール達にくっついて旅に出るとか、魔王に太刀打ち出来そうな宰相殿やベアトリクス嬢に泣きついて、何とか逃がしてもらうべきだと思う。
ヤバイと分かっていて逃げなかったのは、とっくに捕らわれていたから。
「私は、ずっと貴方に助けてもらっていた」
新年度早々から始まった貴方との壁越しの会話に、理子の心はどれだけ救われていただろうか。
たとえ、不可抗力で流されるまま異世界へ喚ばれていたとしても、理子が本気で嫌がれば魔王は抱き枕の扱いをしなかったと思う。
気心が知れた飲み友達、あたりで止まれたかもしれない。
今なら、抱き枕の扱いを拒まなかった自分の、抱いていたふんわりとした感情が分かる。
貴方が人外の魔王だろうと、鱗を生やしたトカゲは触り心地が悪そうでちょっと考えてしまうが、角や羽根が生えた外見だったとしても、貴方の事がずっと……
「私は、私も、貴方が、シルヴァリス様が好き、です」
真っ赤に茹で上がってしまった顔が熱い。
告白相手の膝に座っての愛の告白とは、シチュエーションとしてはどうなんだろうかと、理子は沸騰した頭のどこかで考えていた。
目を見開いて固まったシルヴァリスは、手のひらで自分の顔を覆った。
「ふ、クククッ」
手のひらで顔を覆ったまま、シルヴァリスは肩を揺らして笑う。
「愛など下らぬ、魔王に情など必要無いとずっと思っていたが」
手のひらを外したシルヴァリスを見て、理子は息を飲む。
何時も冷静沈着な彼が、頬をほんのり紅潮させていたのだ。
「好いた相手から、想いを告げられるのは……これほど美味な、甘美な感情だったのだな」
頬を紅潮させて、口元まで緩ませる魔王を、理子は唖然と見上げた。
自分からの告白によって、冷酷非情な魔王がまさかこんなに可愛らしい表情をするとは、信じられない。
どうしてスマートフォンかカメラを持ってこなかったんだと、心底後悔した。