n回目の告白【短編】
「先生の絵が好きなのよ。先生がやってる個展に行ったことがあって。その時が描かれた母の寝顔っていう作品を見て、とても家族を大切にしてるんだって思って」
彼女は写真を選んでいるけど、その目は懐かしさに浸っていてそれはその写真のものでなかった。
「先生に聞いた生徒の人間像はとても的確で愛が溢れていた。森くんは不器用だけど、そのひたむきさがなにかを成し遂げそうで成長が楽しみっていってた。実は部活動の時に先生生徒を模写して、みんなで埋めたタイムカプセルに一人ずつの似顔絵をいれたんだって」
その話を聞いて、少しばかり失望を覚えて。
「まだ、好きなんだ。先生のこと」
朱に照らされたのは、窓から差し込んだ夕陽のせいだろうか。口をワナワナさせて、浅く息を吐いている。
「そうなの。好きだし、まとわりついてる」
付き合ってはないのだろう。だけど、頻繁に会ってるというのだけはわかった。
そのことに胸がしめつけられるように痛くなる。
「中学の頃から?」
「何回も告白して、でも、こどもだから。大人になったら考えるって。連絡先も教えてくれなくて、アトリエで絵を描いている姿をひたすら眺めてる」