キミの愛情120%


『誰かを本気で好きになったこと、ないんだよね。そういう感情が欠落してる人間なのかも。俺』


前に聞いた言葉を思い出す。今、あのときと同じ顔をしている。


「え、えっと……そうだ! 映画って今何やってるんですかね? えっと、映画館のサイト……」

「……15時すぎくらいに、有名な監督のSF映画があるよ」

「じゃあ、それ見ましょう! 15時に駅前集合ですね」


リナの下手くそな話題の切り替えに何も言わず、先輩は優しい表情でクリスマスの話を続けてくれた。


先輩は他人の好きなものをよく知っていて、喜ばせることが上手で、そのための心配りも完璧で。

でも……どうやら、先輩自身の好きな人やものを見つけるのは、ちょっと苦手みたいだ。








ついにやってきた12月24日、土曜日。

今日は学校もないのに早起きしてフェイスパックして、1時間くらい鏡の前でファッションショーしたりして着ていく服を悩んで。


初デートでは必ず(わざと)遅刻していくリナが、ガラにもなく14時半とかに集合場所に着いちゃったりして。


カップルまみれの駅前で、そわそわしながら近くのショーウィンドウで前髪を確認しちゃう自分がなんだか自分じゃないみたいで可笑しかった。



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