キミの愛情120%
「ホントは先輩って、誰より愛情深い人なんです。だから……」
自分のことそんなに悪く言わないで。
言おうとして、言えなかった。
先輩の手が伸びてきて、リナの頭をぎゅっと強く抱きしめたからだ。
「……っ、せ、せんぱ……」
「里菜ちゃんって変な子だよね」
そう言った先輩の声が震えていたから、リナは何も言い返せなかった。
遠くで始業のチャイムの音が聞こえる。
耳元で先輩の湿った吐息が聞こえて、リナの世界はそれだけになった。
……先輩、泣いてるの?
「あはは。俺が愛情深いかあ。初めて言われたなあ」
「……先輩」
「俺が知らない俺のこと、見つけるのがすげー上手いよね。俺のファンだったりする?」
「……ばかじゃないの」
「ごめん。なんか、くだらないことしか言えない」
「いいよ。普段もくだらないことしか言ってないでしょ」
「あはは。ひでえ」
先輩が一層強くリナを抱きしめる。
それから数分間だけ、彼は何も言わずに私の肩で泣いていた。
彼の小さな泣き声を聞きながら、今日この人に、他の人より少しだけ多く幸福が訪れますようにと祈った。