キミの愛情120%


少し前に先輩が言っていたことを思い出した。


――『俺は特別好きって気持ちがわからないから、代わりにみんな好きなふりして、愛想と優しさ振りまいて。そうやって誰かを愛してるつもりになってるのかもね』


「目を見たらわかるんだよ。みんな俺を好きだって言いながら、俺自身じゃなくて『自分にとっての理想の男』を見てる。俺が、理想の男に近い振る舞いをするから好きになる。……里菜ちゃんも最初そうだったでしょ?」

「……否定は、しません」


確かに最初はそうだった。

リナの理想である、見た目がカッコよくて、明るくて、リードしてくれそうな年上。

そんな人とマルを通じて知り合えたから、彼氏になってほしいなーって。最初はその程度。リナにとってマルとチョコちゃん以外の人への好意なんて、正直ぜんぶそのくらいだ。


他の女の子も、そうだったのかな。先輩は相手がしてほしいこと、かけてほしい言葉を先回りしてできるから、好きになっちゃうのもわかる。

でもそれは、先輩にとって先輩自身への好意だと思えないんだ。

『愛してるふり』をする先輩に返ってくるのは、同じ『愛してるふり』の好意だけ。


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