キミの愛情120%


すると、前方の横断歩道で信号待ちしている松原先輩たちに気づいた。

リナと長谷部くんも同じ駅の方向だから、信号を待たなくてはならない。

あんまり近くに行きたくなくてなんとなく歩みをゆっくりにしながら、柔らかそうな茶髪と目立つ広い背中を眺める。


先輩だってクズだけど、人の心がないなんて、そんなことない。

だって、だってあの人はーー……。



「あ、長谷部〜!」


そのとき、松原先輩の近くで信号待ちをしている男子生徒たちが長谷部くんを呼んだ。


「おー」


呼ばれた長谷部くんが早足でそっちへ向かう。

えっ行くの?松原先輩いるのに!? さっきはあんなに気遣ってくれたのに!?


「えっお前、今朝言ってた彼女って岸本さん!?」


名指しで呼ばれてしまった。これは紹介される流れだ。ついていかざるを得ない。最悪!


ぶりっ子スマイルを武装し、長谷部くんの隣に並ぶ。



……その位置はちょうど、リナより30センチ高い先輩の背中が真横にくる場所だった。



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