リフレインが聴こえない
 わたしの意図がわかったらしく、彼は、小さなため息をついてから、わたしを引っ張って歩きだした。

 ああ、ため息をつかれた。
 蒼くんに、ため息をつかれてしまった!
 顔が見えないから、ちょっと勇気を出してみたけれど。
 蒼くんの気持ち、わたしは考えることができていなかったんだ。

 お化け屋敷を楽しみにしていたって、美来ちゃんが言っていた。
 だから、きっと蒼くんの楽しみを、わたしが邪魔をしてしまったからなんだね。

 悲しさが勝ったのか、お化け屋敷の恐怖をそれ以上感じることもなく、わたしは目をつむったまま、出口までたどり着いた。

 出る直前で、つないでいた指先は、外される。
 それが、わたしにはとてもショックで、寂しかった。
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