リフレインが聴こえない
「きゃっ!」

 驚いたわたしは、思わずかばんを抱きしめながら悲鳴をあげる。

 え?
 なに?
 誰?

 目を向けると、わたしの肩をつかんできたのは――大神くんだった。

「その曲、なに?」

 わたしが聞く前に、大神くんから問われた。

「え? 曲……?」

 わたしは、無意識に片手で口をふさぐ。

 ああ。
 蒼くんに人前で歌うなって言われていたのに、聞かれちゃった!

 大神くんの、その真剣な表情に、ただごとではないと感じた。
 そんな彼に、噓をついたりうまくごまかしたりできないと思ったわたしは、しぶしぶ口を開く。
< 149 / 227 >

この作品をシェア

pagetop