リフレインが聴こえない
 ホッとしたわたしに、大神くんは小さな声で続けた。

「約束だ。おれたちふたりだけの秘密な」
「え……?」

 なんとも意味深な言い方。
 ほほえむ大神くんの目から、わたしは視線がはずせない。

 それに、不思議……。
 蒼くんにもらった秘密のラブソングなのに。

 どうして、そのラブソングで、大神くんとふたりだけの秘密を持つことになってしまうのだろう……?


「あ。菜花ちゃーん!」

 そのとき、遠くから蒼くんの声がした。
 ハッとして、校舎のほうを見ると、蒼くんが駆けよってくる姿が見える。

 いつの間にか、すっと体をひいて自分の自転車を取りにいった大神くんの姿は、蒼くんに見られていなかっただろうか。

 なぜなのか、ドキドキしながら、わたしは駆け寄ってきた蒼くんに、うつむきながら近づいた。
 何とも表現しようもない微妙な感情が、顔に出ている気がしたから。
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