リフレインが聴こえない
 たとえ、わたしに好意を持っている、そんな奇特なひとが、このなかにいたとしても。
 蒼くんという彼氏の目の前で、名乗りでる度胸のあるひとなんて、いるわけがない。

 それじゃあ、わたしって、いつまでもゴールができないってこと?
 全校生徒、教職員、見にきた保護者の前で。
 なに? この、生き地獄!

 あまりの状況に、わたしの脳内はパニック。
 機能停止。

 どうしようもなくて、棒立ち状態。
 泣いても仕方がないのに、涙が浮かんでくる。

 蒼くんの腕をがっちりホールドした双葉は、わたしに勝ち誇った視線を向けたあと、そのままゆっくり走りだした。

 妥協案として、ゴールしたあと、わたしを助けにいこうと考えたのだろうか。
 困った表情のまま、蒼くんも双葉とゴールに向かう。
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