リフレインが聴こえない
 その光景を、ぼんやりと眺めていたら。
 突然、観客席の生徒のほうから、ワッと歓声が沸いた。

 声に驚いたわたしは、ハッと顔をあげて。

 生徒会席のほうから大神くんが駆けてくる姿を、見つけた。

「――どうして」
「ほら、走る!」

 わたしの手首をつかんだ大神くんは、ゴールに向かって走りだす。
 引っ張られながら、わたしも慌てて足を動かした。

 長いような短いような、時間。

 わたしの手をひく彼の姿が、涙で(にじ)んで見える。
 周囲の(はや)す声は、もう耳に入らない。
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