リフレインが聴こえない
 わたしは、もらった猫のキーホルダーを、両手で大切に包みこんで、うなずいた。
 なんだか、わたしも切ない。
 泣きだしてしまいそうな悲しみが、胸の中にあふれてくる。

「――うん」

 あの日、わたしは蒼くんの告白に応えたんだ。
 すべて、わたしの責任だ。

 胸がチクチクと痛いけれど。
 考えずに流されて、ものごとを決めてしまう、わたしのせい。

 このキーホルダーは、宝物だ。
 誰にも見せられない、宝物。

 なんで、大神くんとのふたりの秘密が、どんどん増えていくんだろう?

「それじゃあ、またな。さっさと家に入れよ」

 そう言うと、大神くんは、自転車のペダルを思いきり踏みこむ。
 あっという間に、大神くんの姿は見えなくなった。
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