リフレインが聴こえない
「オレら、空手をやってんだよねー。彼氏、ぼっこぼこにしちゃうかもなー。血の雨が降るなー」
「おい、双葉から、彼氏のほうはケガさせるなって言われてたっしょ?」
「ああ? 関係ねーな」

 高校生の男の子たちが、内輪もめをはじめた。
 そのとき。

「あ! 美来と菜花ちゃん、発見!」

 そう言って、工事現場の幕を手でよけながら、野球帽をかぶった蒼くんが、顔をのぞかせた。
 ショコラブラウン色の瞳をきらめかして、蒼くんはそのまま、軽やかな足取りで工事現場に入ってくる。

「へえ、彼氏が助けに登場って感じー。彼女の前で、やられちゃう姿をみせちゃうよー」

 リーダーが、指を鳴らしながら、蒼くんへ向き直った。
 蒼くんに対して、背が高くて強そうな高校生5人。
 助けにきてくれても、これじゃあ、蒼くんがやられちゃう!
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