リフレインが聴こえない
 そうだ。
 あのときも、蒼くんは、そんなことを言っていた。

「以前に菜花ちゃんは聞いたよね。なんで告白の相手が自分なのかって」
「うん」
「きっときみは、本当に歌を作った彼に惹かれるって思ったんだ」
「え?」
「だから、あの歌に飛びついたきみを、試したくなった。自分で言うのもなんだけれど、ぼくは顔もいいし、やさしい性格だ。だから、歌を作ったのがぼくだと思いこんだら、きみは、ぼくを見てくれるようになるだろうか」
「それは……。あの歌を作ったのは、蒼くんじゃ、ない?」
「うん。歌に惹かれるきみを、彼に渡したくなかったんだよ。ぼくが作ったって嘘をついて、ずっと一緒にいたら、一緒にいるぼくのことを好きになってくれるんじゃないかって」

 蒼くんは、小さく息をついた。
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