リフレインが聴こえない
「この本の貸し出しを、お願いします」

 声をかけられて、我に返ったわたしは、慌ててカードに手を伸ばして作業をする。

 ぼんやりしていたら、ダメだよね。

 この図書室の、本の匂い。
 静かな空間。
 流れる、放送室からのボリュームを絞った音楽。

 ――今日は、彼の担当の日だ。

 選曲が、彼っぽい。
 わたしの好みの、音楽だ。
 どことなく、あの歌に雰囲気が似ている曲たち。

「――あ、フライミートゥーザムーン……」

 以前にも、お昼の放送でかかった曲が、流れてきた。
 もう一度聴きたいと思っていたから、わたしはとても嬉しい。
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