リフレインが聴こえない
 ラストナンバーということは、最後の曲。
 その一曲を聴いて、図書室も閉める準備をしよう。

 わたしがそう考えたとき、彼の言葉が続けられた。


『最後の曲は――タイトルは、まだつけていない、自作の曲です。どうか、彼女に届きますように』


 その瞬間、わたしの全身に鳥肌が立つ。


 アカペラで流れてくる、聞き覚えのある彼の歌。
 思わずわたしは、口もとを両手でおおった。


 大神くん。

 やっぱり、あの日の歌は、大神くんが歌っていたんだ。

 聴いているだけで、胸が苦しくなる、やさしい声。
 勝手にあふれる涙が、とまらない。

 忘れかけていたフレーズが、宝箱から飛びだして。
 わたしの周りで、嵐のようにこだまする。
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