リフレインが聴こえない
 たぶん真っ赤になっているであろうわたしがうなずいたことで、蒼くんは、とびっきりの笑顔になった。
 そのまま握手するように、両手を上下にブンブンと振る。

「オーケーしてくれて、ありがとう! 嬉しいな!」

 そろそろ手を放してほしい。
 恋愛初心者のわたしには、この手をつなぐこと自体、ハードルが高いのよ!

「あ、蒼くん……」
「そうそう。あと、お願いがあるんだ」
「え? お願い?」

 わたしは、手をつないだまま、聞き返す。
 蒼くんは、イケメンがしたら、より反則のような上目づかいになって続けた。

「さっきの歌は、ぼくのオリジナルだって言ったんだけれど。歌を作っていることをみんなに知られると、恥ずかしいんだよね……。ほら、なんだかキザったらしくてね。内緒にしてくれる?」
「え? 内緒にしちゃうの?」

 わたしは、思わず驚いたような声をあげてしまった。

 なんていうか、あの歌を隠すなんて、もったいない……。

 わたしの考えていることがわかったのか、蒼くんは、ステキな笑顔で言った。

「内緒にするってことは、きみだけに贈る、世界にただひとつの歌ってことだよ」

 わたしだけの、ラブソング!

 その一言で、わたしはうなずいていた。
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