リフレインが聴こえない
 もしかしたらわたし、恋に恋しているのかもしれない。

 だって、たしかに歌にひとめぼれをしたけれど。
 本音を言えば、まだ、あの蒼くんに恋をした実感がないもの。


 わたしはなかなか寝つけなくて、寝返りを何度も打つ。

 蒼くんが歌ってくれた歌詞で、そっと口ずさんでみようと思ったけれど。
 それも、うまく歌えなかった。

 ああ。聴くのはいいけれど、わたし、音痴なんだな、きっと。

 その代わり、最後のフレーズだけ、鼻歌で歌ってみる。
 すぐに照れくさくなったわたしは、かけ布団のなかにスポッと潜りこんだ。

 わたしは、カッコイイ男の子から告白されたという大事件で、やっぱり気持ちが舞いあがっていたんだと思う……。

 だから。

 ――このときに覚えたかすかな違和感に、ぜんぜん気づかなかったの。
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