リフレインが聴こえない
「ん? 菜花ちゃん、なにかあった?」

 わたしの顔をじっと見た秋ちゃんは、ちょっと首をかしげて眉根を寄せた。

「なにかあった? もしかして、まだ教室に慣れていないのかな?」
「え? あ、大丈夫! なんでもないよ」

 両手を顔の前で振りながら、わたしは秋ちゃんに笑みを向ける。

 びっくりした!
 意外と秋ちゃんって、けっこうするどい?
 顔色だけで、なんか気づいてる?
 ひょっとして、美術部の秋ちゃんは、細かく観察する能力に長けているのだろうか。

 でも……。
 秋ちゃんに交際のことを伝えるのは、話題にあがったときでいいかな?
 だって、彼女になった、なんて言っても、昨日と今日、とくに変化があるわけでもなさそうだもの。

 ――なんて思っていたら。

 甘かった!
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