リフレインが聴こえない
「あ、紫月くんだ」

 秋ちゃんが声をあげた。
 名前を呼ぶその声に、わたしの胸がどきんとする。

「あの彼のこと、菜花ちゃんは、まだ知らないよね? うちの学校の生徒会長で」

 秋ちゃんが気をきかせて、わたしに顔を寄せ、小声で説明をしてくれる。
 でも、秋ちゃんが教えてくれるほど、どんどんわたしの鼓動も大きくなってきた。冷や汗も、たら~っと背中に流れてくる。

「あのアイドルみたいな見た目でしょ? ものすごく女子のファンが多いのよ」

 うん、知ってる。
 ものすごく、知ってる!


 教室の中をのぞいて、視線をさまよわせていた蒼くん。
 やがて、呆然と見つめるわたしの姿をとらえると、彼はパッと顔を輝かせた。

「あ、菜花ちゃん!」
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