リフレインが聴こえない
 縦ロール一花が、厳しい口調でわたしに言った。

「蒼くんは、みんなの蒼くんなの。生徒会長になって、ますますステキになった蒼くんに、なに勝手にひとりで抜け駆けしようとしているのかしら?」

 上級生だけあって、縦ロール一花の睨みは、凄みがある。
 気圧されるように、わたしはさらに一歩さがろうとして、足がもつれた。
 バランスを崩して尻もちをつく。

 そんなわたしに、三姉妹率いるファンクラブの女の子たちは、四方向からにじり寄ってくる。

「さあ、蒼くんの彼女だって言葉、撤回しなさいよ。迷惑をかけましたと謝罪して、ファンクラブに土下座しなさい!」

 とっても怖くて、わたしは、返事をしたくても声が出ない。
 そして、ポニーテール双葉が、いまにもわたしにつかみかかろうとした瞬間。


「なにをしているんだ」

 低いながらも、凛と響いた声に、女の子たちはハッと振り返る。

 渡り廊下のほうから、ひとりの男子がゆっくりと姿を現した。
 あれは――大神くんだ。
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